2023.02.28 掲載
養蜂業
タモさん
阿賀町
スロバキア出身。旅行ガイドの仕事をしていた2008年に初来日し、日本に好印象を抱く。2015年に旅行先で恵美子さんと出会い、2017年にはガイド業の拠点を日本に移す。その後2019年に結婚、長男の誕生をきっかけに2020年に阿賀町に移住し、現在は自然に根差した養蜂業を営む。3人家族。
【Q.阿賀町に移住した経緯を教えてください。】
初めて日本に来たのは2008年です。旅行ガイドとしてヨーロッパからお客様を連れてきて、日本人ガイドの説明を通訳しながら、奈良や京都を回りました。その後、旅行で訪れていたタイ王国のチェンマイで妻と知り合い、2017年には彼女に会うために来日しました。これからは日本を拠点にして仕事をしようと決めて、海外の旅行客を受け入れたり、日本から海外に出張したりして旅行業を続けていました。
長男が生まれる頃、ちょうどコロナ禍で海外旅行が低調になったこともあり、旅行業を辞め、妻の実家のある阿賀町に移住することを決めました。それまでにも何度も訪れていましたし、もともと山も川も森もあるような自然豊かなところが大好きなので、特に不安はなかったです。妻のお父さんは初め心配していたようですが、私たちがDIYで家を直し、養蜂を行ううちに理解してくれ、今は暮らしや子育てを支えてくれています。お母さんは畑の野菜や料理を差し入れてくれたり、町の知り合いを紹介してくれたりと、いろいろな面で力になってくれています。
【Q.養蜂を始めたのはなぜですか?】
故郷のスロバキアは山岳地帯の多い国なのですが、私の祖母は森の中でbee-keeper、養蜂家として働いていました。子どもの頃からその手伝いをして養蜂に親しんでいたので、いつか私もやってみたいと思っていました。阿賀町は自然豊かで花の種類も多いので、養蜂をするのにピッタリの環境だと思ったのです。
私が行き着いた養蜂のスタイルは、祖母の教えをもとにしつつも、よりミツバチの状況を観察し、私たち人間の都合ではなく、ミツバチを中心に考えた飼育法です。手作りした巣箱を、「この森ならハチはこういうところに巣を作るな」と思う木の上や組まれた足場などに置いて、なるべく自然の環境そのままでハチが活動できるようにしています。
【Q.養蜂の仕事はご夫婦でしているのですか?】
巣箱の設置やハチミツの採集は私たち夫婦でしています。ただ、養蜂業は地域のみなさんの協力がないとできません。養蜂の説明をして理解してもらい、巣箱を置かせてもらうことが必要だからです。阿賀町の人たちはみんな優しくて、「空いている土地だからいいよ」「自分の土地だと思って使って」と快く受け入れてくれました。去年の夏に巣箱を20箱設置して、セイヨウミツバチと二ホンミツバチの両方を飼育しています。
養蜂以外では、自分たちで食べる野菜や果物を畑で育てているのですが、仲良くなった農家の方が耕すのを手伝ってくれたり、一緒に草刈りをしてくれたりします。その人と野生の二ホンミツバチの群れを捕まえたときは、2人で大喜びしました。他にも、野菜を持ってきてくれたり、巣箱の材料となる木材を届けてくれたりする人もいて、中には、「外国の人と関わるのは初めて」と僕と話すのを楽しんでくれる人もいます。阿賀町の人たちは、心が広くて愛情深いなとしみじみ感じています。
【Q.阿賀町での暮らしはいかがですか?スロバキアとは何が違いますか?】
違うことばかりですよ!スロバキアも寒いところですが雪は少ないので、阿賀町での最初の冬は雪の多さに驚きました。地理的にはヨーロッパの真ん中で海に面していないので、海産物はあまり食べません。私も日本に来たばかりの頃はなかなか食べられず、魚や昆布を食べるのは僕にとっては大きなチャレンジ。最近になってだんだん慣れてきたところです。それでも、十割そばは大好きですし、餅や味噌汁、漬物も好き。妻が米粉で作ってくれるパンにバターと自家製のハチミツを塗って食べるのも気に入っています。
自然が豊かなところは似ていますね。阿賀町では、川も山も近いからいつでも遊びに行ってリフレッシュできます。もうすぐ3歳になる息子も外で遊ぶのが大好きで、どこに行くにも着いてきます。阿賀町に来てからは、巣箱のチェックや畑作業といった仕事のときも、外に出かけて遊ぶときも、いつだって家族と一緒。こういう暮らしをずっと続けていきたいです。
【Q.今、何か計画していることはありますか?】
阿賀町を花でいっぱいにして、美しく、ハチに優しい町にしたいと思っています。これまで巣箱の近くの畑にクローバー、ひまわり、アンジェリア、ヘアリーベッチなどの花を植えてきましたが、去年、長く放置されていた田んぼや畑を手に入れたので、これからそこにアカシア、キハダ、トチノキなどを植える予定です。
ハチは色で花の種類を識別していて、白やピンク色の花を好み、赤い花は好まないという特性があります。だから、そういったハチが好みそうな色の花を多種類育てて、ハチが自由に好きなところに飛んでいけるようにしたいと思っています。
現在私たちのハチミツは町内の直売所や観光施設で販売していますが、WEBサイトを作ってそこでの販売もしていきたいですね。また、日本でも天然に近いスタイルの養蜂が注目され始めていて、最近では養蜂に関心のある人たちが話を聞きに来ることもあります。そういう人たちにアドバイスしたり、力になったりできるように頑張っていきたいです。
このページをSNSで共有する