2021.10.15 掲載
尾畑酒造 蔵人
瀬下 要さん
佐渡市
\尾畑酒造 瀬下さんってこんなひと/
◎出身など:新潟県魚沼市
◎移住時期:2018年3月
◎経歴: 2度にわたる1か月以上の長期の海外への旅→旅で訪れたスペインをきっかけにレストランで勤務(東京)→東日本大震災を機に地方移住を考える→結婚し、奥様と3度目となるスペイン訪問→料理人の先輩の新規店舗立ち上げに携わる(沖縄)→移住先の佐渡で尾畑酒造に入社。
佐渡で、海外の人々、料理人たちと交流し、人とのご縁の中から現在は自身のスペイン料理店もオープン。蔵人とお店のオーナーという二足のワラジで日々研鑽中。
◎暮らし 奥様と二人暮らし
◎にいがた暮らしのおすすめポイント
県外、海外の人に誇れるものがある場所に住んでいることがうれしいです。
大学進学を機に上京した瀬下さん。
「新聞配達の奨学金制度を利用しながら、大学に通いました。しかし、あまりにも新聞配達が忙しくて、このまま就職しては自分の時間を持たずに大人になってしまう。そういう思いから、就職はせず、バイトをしながらスペインに行くことに。スペインを旅の目的地に決めたのは、子どものころに見た社会科の資料集でオリーブ畑からのぞく地平線が素敵だと思ったから」。
約1か月のスペインへの旅。自信がついたのと同時にスペイン熱が強まったと瀬下さん。
「帰国後、東京・上野にあるスポーツ用品店に就職したのですが、もうすでに次の旅を計画していて。27歳のときに再びスペインに行くことを決め、スペイン語の勉強や貯金を始めました」。
約4カ月にわたるスペインを始めとしたヨーロッパを巡る旅。続けて約1カ月間キューバとカナダへも旅をしたそうです。
「行ったことがないところで人に出会う。それが楽しい。食やコミュニケーション、空気感。そういったものを肌で感じられたのは自分にとって大きな財産です」。
「帰国後、当時住んでいた中目黒の家の近くに、雰囲気のいいお店を見つけました。スペイン料理屋で求人募集も出ていなかったんですが、自分からお店に電話しました。求人ないですか?と。スペインに関わった仕事がしたかったですし、ご縁がありそのお店で働くことになりました」。
料理人としての修業時代、30歳のときに奥様と結婚。生活の安定も考え、食品会社に再就職し、営業職に就いたそうです。
「このときに、35歳までにもう一度スペインに行こうって決めていました。そして、帰ってきたら地方に移住を考えました。もともと僕も妻も旅行が好きでいろいろな場所を訪れていました。だから、住む場所は東京じゃなくてもいい。そう思っていました。そこにきて、東日本大震災を体験して、今後何かあったときに、ライフラインの面や諸々を考えると、東京はより厳しくなるんじゃないかと思うようになったのが、地方移住という選択肢が生まれたきっかけです」。
34歳のとき、1カ月半にわたり奥様と2人でスペインを旅した瀬下さん。
「スペイン料理屋で働いていたころの先輩から、『沖縄で新規店舗を立ち上げたから一緒に働かないか?』と連絡があったので、帰国後すぐに沖縄へ。3カ月間ほど立ち上げに携わらせていただき、非常に濃い、有意義な時間を過ごさせていただきました。この3カ月間がなかったら、(お店を持つような)今の自分はいなかったと思います」。
沖縄経由で佐渡へ移住。尾畑酒造に入社したのが2018年4月のこと。いよいよ佐渡での生活が始まることになりました。
「せっかく地方に来たんだから、そこにしかない仕事ができたらいいなと思っていたんです。そんな考えのもと、いろいろと職を探していたら、ご縁があってこちらで働けることになりました」。
瀬下さんの働く尾畑酒造には、廃校を利用した学校蔵プロジェクトという取り組みがあります。2014年からスタートし、「お酒造り」を中心に「学び」「交流」「環境」の4本の事業を展開。国内外の方が実際に酒造りを体験できる取り組みです。
「僕は夏場、学校蔵にいることが多いのですが、僕が担当した最初のプログラム体験者がスペインの方だったんです。ご縁を感じました。また職種でいうと、料理人の方も多くて、このあたりも非常に面白いですね。英語やスペイン語、料理と、これまで自分が培ってきたものが共通言語として今活きているのは非常にうれしいです。また、弊社のお酒は海外への輸出も多いので、あぁこの酒を海外の人も飲んでるのか、なんて考えるとより造り甲斐もあって楽しいですよ」。
尾畑酒造で働く瀬下さんですが、週末は別の顔を持っています。2021年7月31日にご自分のスペイン料理店をオープンしました。
「土日の営業日に向けて、仕込みを行うのは木曜と金曜。蔵から帰ってきてやっています。体力的にしんどいところも正直ありますが、やっぱり自分の好きなことをやっているというのはうれしいですよ。きっと佐渡でなければお店は開けなかったと思います。それくらいここでは多くのいい出会いに恵まれました。また、佐渡は食材もスペインと近いんですよ。タコ、タラ、神楽南蛮、それに豚肉も。住んでから分かったことですが、ここは無理せずスペインを表現できる場所でした。お店を大きくしたいとかじゃなくて、地域に根ざしたお店に、という気持ちが強いです。お世話になった方々に、胸をはってちゃんとやってますと見せられるお店になることが目標です」。
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