2020.06.19 掲載
パンとおやつ 奥阿賀コンビリー
小山 萌さん
阿賀町
\小山さんってこんなひと/
◎出身など 岡山県出身、阿賀町にIターン
◎移住年月 2020年4月
◎経歴 大学在学中の2019年、総務省「ふるさとワーキングホリデー」を利用して阿賀町のパン屋「奥阿賀コンビリー」で就業体験。その後社員として就職。
◎にいがた暮らしのおすすめポイント
地域の人とのあたたかい関係性です。田園風景がきれいだなと思って写真を撮っていたら、農家さんに声をかけられて、お友だちになり今年の稲刈りを手伝うことになりました(笑)
小山さんは高校生のころから「将来は自分でカフェを開きたい」と考えていました。「友だちも先生も好きなのに、学校という空間が苦手で…。でも親は学校に行ってほしいと思っていたので、なんとなく家でも居場所がない。そんな時でも好きなカフェだけは落ち着ける空間だったので、いつか自分で居心地の良いカフェを作れたらと漠然と考えていました」。
高校卒業後は親や先生に言われるがまま地元・岡山県にある大学に進学しましたが、学校や就職活動といった大人に決められたレールの上を歩くことに対するモヤモヤは消えませんでした。そんな時に、将来に不安を抱える若者と地域の大人とをつなげるNPO法人に、ボランティアとして関わるようになりました。
「地域でいきいきと働き、仕事や暮らしを楽しんでいる大人をたくさん知ることができました。多様な価値観を持った人たちと出会って『こんな風に好きなことを仕事にしていいんだ!』と驚きました」。
周りが就職活動をスタートする中、自分の将来についてちゃんと考えてみようと、大学を休学してそのNPOにインターンとして働くことにしました。楽しそうに働く大人と関わりながら毎日を過ごす中で、元々思い描いていた「自分と誰かの居場所になるようなカフェをつくりたい」という夢への想いが高まっていきました。
将来カフェを開くにあたって、看板商品が必要と考えた小山さんは、卸売やネット販売、カフェ営業もできるパンに目をつけ、休学中にパンの修行をすることに。
「せっかくなら行ったことのない東日本がいいなと、ネットで検索していた時に、たまたま見つけたのが阿賀町にある奥阿賀コンビリーでした」。
奥阿賀コンビリーは、2016年5月に地域おこし協力隊として東京から阿賀町にやってきた柳沼陽介さんと妻の沙織さんが立ち上げたパンとおやつのお店。商店街にあり、地元食材や地域の特産品なども取り入れた商品を扱っています。総務省による、地域の仕事をしながらリアルに地域の暮らしを体験できる「ふるさとワーキングホリデー」の受け入れ先となっていたので、この制度を利用して、まずは2019年10月に2週間滞在してみることにしました。
初めて来た新潟の地でしたが、ふと入ったお店でおばあちゃんとお話ししたり、地域のお祭りに参加させてもらったり、阿賀町の自然に心の豊かさを取り戻したりと、「来て良かったな」と思える場所でした。そして何より嬉しかったのが、奥阿賀コンビリーが「私がつくりたい場そのものだ」と思えたことでした。
「パンの販売だけでなくカフェスペースも開設準備中で、私が目指しているお店の形態と近かったんです。それだけでなく、何よりも心を掴まれたのは、近くに住む人がおしゃべりに来たり、野菜を持って来てくれたりと、地域の人たちが自然と立ち寄り、集まる場になっていることでした」。
実は小山さんの地元は、2018年7月の西日本豪雨で被災。その時に、日頃からの住民同士のつながりの大切さを実感したといいます。地元に比べて、阿賀町では人々のつながりが強く、そして奥阿賀コンビリーがその中心になっていることに心を打たれました。
わずか2週間の滞在でしたが、この出会いが小山さんの夢を今まで以上にはっきりさせることになりました。そこでオーナーの柳沼さんに、自分と誰かの居場所になるようなカフェをつくりたいという夢や、そんな夢がありながらも就職活動で仕事を「選ぶ」ことに対する違和感を伝えたところ、「そんなに悩んでいるなら、うちで正社員募集しているけど働く?」と声をかけてもらったのです。
小山さんは、大学を中退し、奥阿賀コンビリーで働くことを決意。その2ヶ月後には再びワーキングホリデーで阿賀町を訪れました。
ただ、当時学生だった小山さんにとって最大の関門は両親を説得することでした。そこで、自分の夢やキャリアプランを中心に、今後必要なお金とそれを稼ぐ手段などを企画書にまとめ、両親に向けてプレゼン。さらに柳沼さんも岡山へ足を運び、家族に説明してくれました。小山さんの熱意が伝わり、最終的には両親もその決断を認めてくれました。
その後、町の移住担当者と相談しながら、移住準備を進めました。職場にはオーナー夫婦以外にも先輩移住者が多かったので、移住の手続きや、暮らしに関するアドバイスももらえたそう。「区長さんに挨拶に行ったほうがよいと言われ、岡山名物のきびだんごを持って行きましたよ(笑)」。
初めての土地での初めてのひとり暮らし。不安もたくさんありましたが、周りのサポートもあり阿賀町での生活をスムーズに始めることができました。
2020年3月から本格的に働き始めてまだ2ヶ月ちょっと。早朝に出勤し、開店時間の10時までに様々な種類のパンを作っています。
「予想していた通り、めちゃくちゃ体力勝負の仕事でした(笑)。趣味のパン作りは単純に美味しいパンを追求すれば良いですが、お店では作る種類も多いですし、開店に間に合うよう作業の段取りや、時間管理を覚えることも大切です」。
最初の1年間はパンの作り方を学ぶ年。まずは一人でパンを作れるように流れを掴むことが今の目標です。最近は柳沼さんと一緒に新商品の開発にも携わるようになりました。お客様にどう価値を伝えればより魅力を伝えられるか、コンセプトづくりから話し合い、デザイナーさんをはじめとした様々な業者とのやりとり、食品表示についてなども経験させてもらっています。
また、奥阿賀コンビリーではパンやおやつの材料として、阿賀町特産の「おにぐるみ」や、野菜、果物など地元食材をたくさん使っているので、これからはそれらの生産現場にも顔を出していきたいと考えています。
夢は、地域の人たちが集まる「“わたし”と“誰か”の居場所」になるお店を開くこと。「パン作りは奥が深く、覚えることもたくさんありますが、夢に向かって歩き出していることを実感できるので、毎日が充実しています!」ときらきらと輝く笑顔を見せてくれました。
このページをSNSで共有する