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ニイガタビト

新潟の工芸品
- 伝統技術を引き継ぐ女性 -

2014.05.21 掲載

越後与板打刃物「河政刃物」 職人

岸本 槙子さん

株式会社イシモク 桐製品職人

田村 ゆか さん

 新潟県には、地域の特色を生かした様々な工芸品が発達しています。なかでも、経済産業大臣指定の伝統的工芸品が、現在13産地、16品目あり、これは京都に次いで、全国で2番目の多さです。
 今回は、男性が多いと思われている職人の世界で、熱心に工芸品を製作されている、若手職人の女性お二人【岸本槙子さん】、【田村ゆかさん】に、仕事の魅力や今後の目標について伺いました。

【 岸本 槙子 さん 】 きっかけは道具づくり

 東京都出身の岸本槙子さんは、東京の大学で金属工芸を専攻。より専門的なことを学ぶため、長岡造形大学・大学院へ進学。大学院在学中に与板地域のことを知る。
長岡造形大学・大学院を修了後、栃木県で飾り金具を作る仕事に2年間携わった後、昨年、再び長岡へ。今年4月、長岡市与板地域で伝統的工芸品の“越後与板打刃物”を製作している『河政刃物』に弟子入り。
 「大学生の時に金属工芸を始めましたが、最初は特に明確な目標を持っていたわけではありませんでした。大学で『しぼり』という技法を学んでいて、さらに技術を深めたいと思い、進学先を探しました。
 探しているなかで、長岡造形大学・大学院を見つけ、ここなら専門的なことを学べると思い、進学を決めました。加えて、燕市の鎚起銅器など新潟県は金属工芸が盛んだということもきっかけとなりました。
 職人になりたいと思い始めたのは、大学4年生の頃からです。購入した道具にも、使いやすいものと使いにくいものがあり、使いにくい場合は、使いやすく加工していたので、工芸を学びながら基本的に道具は自分で作るという感覚も身に付きました。
 こうして色々と道具について考えているうちに、自分の作品製作よりも、作っている人の役に立つ仕事がしたいと思うようになりました。
 大学院を修了後は、一旦、栃木県で飾り金具を作る仕事に就きました。仕事にはおもしろさを感じていましたが、『金具を作るよりも、作り手の役に立つ道具を作りたい』という思いが強くなり、昨年、仕事について考え直してみようと、長岡に戻って来ました。
 そして、『河政刃物』が以前、若い職人を受け入れていたが、現在はいないという話を聞き、自ら申し出て今年4月に弟子入りすることになりました。」

道具づくりを極めるために

 「今は、始めたばかりで簡単な行程しか担当していないのですが、きれいに店に並んでいる製品づくりのお手伝いを出来ることが嬉しいです。
 『河政刃物』は、のみや彫刻刀が専門ですが、オーダーメイドも受け付けていて、注文品は何でも作る『変わり鍛冶』もしています。『変わり鍛冶』は、道具を自分なりに工夫して作ってきたことと感覚的に近いものがあり、何でも作れるようになりたいと思う私には、とても魅力を感じました。
 周りからは、手も汚れ、痛い、きつい、大変そう・・・などと言われますが、それが当たり前になっていますし、もともと、私自身、黙々と仕事をするのが好きなので、特に苦ではありません。金銭的な面での不安は少しありますが、その他の不安や不満は感じていません。
 男性の職人が多く、女性は珍しいと思われていますが、今は機械が入っているので、体力的にきついとか作業過程で女性だから不利だということは全くありません。」

金属工芸が盛んな新潟

 「新潟県では、金属工芸について県全体で盛り上がっている印象を受けます。休日は、燕・三条地域で行われている金属工芸のイベントへ作品を見に行ったりしていますし、クラフトフェアなど他の工芸分野のイベントも多くあり、楽しいです。
 県内は、車で出かけるとすぐにきれいで広い公園があり、緑が多くて、山や海も近くてどちらも行けるところが、とても良いところです。ただ、冬の雪の多さには驚きました。
 また、今の地域は全然知らない人でも挨拶をしてくれますし、地域ぐるみで受け入れていただいていると感じます。心の温かい方たちばかりで嬉しく思っています。」

与板を盛り上げたい

 「大学からものづくりを学んできたので、ここで学んでいる技術を生かしながら、刃物や道具などの他にも、自分なりに様々な製品も作っていきたいと思っています。
 2、3年後には、ここでの仕事をきっちり覚えて、道具を一通り作れるようになりたいです。そして、プロが使うような道具を作れるまで技術を磨きたいと思っています。与板に残ることができるなら、ずっとここで仕事をしていきたいです。
 親方たちも、打刃物を残したいという気持ちがすごく強く、『匠会』などの組合を立ち上げてPR活動に力を入れています。しかし、県内の人にも与板打刃物のことが、あまり知られていないようなので、残念に思います。
 今後は、与板地域のことをもっと盛り上げるためにも、若者の視点でインターネットなどを活用したPR活動のお手伝いができればと考えています。一人では大変かもしれませんが、時間をかけて活動の幅を広げていきたいと思っています。そして、与板に職人を志す人が来てくれることを楽しみにしています。」

 

『越後与板打刃物 匠会』へのリンク

【 田村 ゆか さん 】 ものづくりを仕事に

 加茂市にある『株式会社イシモク』は、「桐」の特徴を生かしたオリジナルブランド「桐子モダン」を手がけている会社です。そこで桐製品づくりの職人として活躍する田村ゆかさんにお話を伺いました。
 三条市出身の田村さんは、高校卒業後、都内の美術大学へ進学。大学では木工について学びました。大学卒業後は埼玉県の会社に就職し、約7年間にわたり家具づくりを担当。平成20年11月にUターン。
 「高校生の頃から、ものづくりには興味を持っていたので、進学先も美術大学を選びました。大学では、初めから木工を学ぼうと決めていたわけではなかったのですが、もともと実際の生活で使うものを作りたいという思いがあり、大学で様々なコースを経験したうえで木工を学ぶコースを選びました。
 就職先は大学で取り組んだことが生かせる企業を探し、埼玉県にある材木店を見つけました。材木店であっても、木材の加工や家の建築など幅広く仕事をしていて、私は杉やヒノキなど様々な素材を使った家具づくりを担当しました。」

木工への思い

 「新潟に戻ってきたのは親の勧めもありましたが、ものづくりを続けようか迷っていたことが大きかったです。Uターンしてからは別の仕事に就こうという考えもあり、実際に職業訓練校に通って簿記の勉強もしました。
 しかし、それでも木工製品に携わっていたいという思いが強かったので、販売担当でもよいという気持ちから、5年前、現在の会社を知り、飛び込みで訪問しました。ちょうど、会社でも販売と製作の両方ができる人を探していたようで、タイミングがよく、採用してもらえることになりました。迷いながらもこの会社に入ったわけですが、自分の今までの経験を買ってくれたということで、ものづくりの仕事を続けていこうと思えるようになりました。入社当初はショールームでの販売と工場での製作の仕事が半分ずつだったのですが、今は完全に工場勤務になっています。」

やりがいのある仕事

 「私は『人が身のまわりで使うものを作りたい』と思っていたので、そのことが実現できてうれしいです。それと、今の仕事は作るだけでなく、自分たちで納品までするので、お客様の反応を直接見ることができる点にもやりがいを感じます。手がけている仕事は、桐を使った製品づくりのほか、家具のリメイクやオーダーメイドにも対応しています。仕掛けダンスなど大がかりなものを作りあげたときも達成感を感じることができます。
 埼玉県で仕事をしていたときに、一緒に女性の大工が働いていましたし、現在の職場でも女性のパート従業員の方が多くいますので、ものづくりの分野にも女性が受け入れられていると感じています。」

桐の魅力を伝えたい

 「桐は独特な素材です。柔らかいために傷がつきやすく、強度もないので扱いが難しいです。しかし、その柔らかさを生かした桐ならではの工夫ができ、おもしろさもあります。また、暖かさを感じさせてくれたり、夏は汗のべたつきを感じず、さらっとして肌触りが良いのも魅力です。復元力があり、床材などで使われた際は、ある程度の傷はお客様がご自分で直す事が出来るのも利点だと思います。
 これからは、もっと桐製品を気軽に使ってもらえるものにしたいと考えています。普段の生活のなかで使えるようなものを作ったり、また、値段の面でも安く提供できるように工夫していかなければならないと思っています。多くの人に桐のよさを知ってもらえればうれしいです。」

 

『株式会社 イシモク』へのリンク

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