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ニイガタビト

新潟市民の熱気と「お前ならできる」の一言

2016.07.27 掲載

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一般社団法人おらってにいがた市民エネルギー協議会 専務理事

木村義彦さん

28歳 新潟市在住

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Key word

 茨城県出身。福島大学・大学院卒。大学院では、農山村地域における活性化をテーマにグリーン・ツーリズム事業と都市農村交流事業の可能性を研究。卒業後、首都圏で市民の起業をサポートするNPO法人に勤務し、2013年新潟市に転勤。若者の就労支援を主として担当していた。その後退職し、2014年一般社団法人おらってにいがた市民エネルギー協議会を設立。新潟市を拠点に、市民による自然エネルギー事業の普及と環境教育活動に力を入れている。好きな花 :梅。

前回は、私がどんな場所で育ったか、またエネルギーづくりに関わろうと思った原点のお話をしました。
今回は、初めて新潟に来た時のことや、おらってにいがた市民エネルギー協議会を始めるときの話をしたいと思います。

米どころ新潟

 初めて新潟に来たのは2013年夏。就職した会社の新人研修を受け、初任地を告げられてから5日後のことです。新潟のことを調べる間もなく、新幹線を降りたことを今でも覚えています。思いつくのは「米どころ新潟」というイメージだけで、親戚も友達もいない本当に未知の土地にやってきたという感覚しかありませんでした。
 職場は首都圏で市民の起業をサポートするNPO法人で、子育て支援事業と就労支援事業、福祉事業と3つの事業を新潟市で展開していました。私は事務職での採用でしたが、新潟の現場を早く知るためすべての現場の会議や応援にまわる日々でした。
 しばらくして初めて担当した仕事は、福島・新潟の子どもたちの保養キャンプインストラクターでした。事務方の私の仕事とは少しジャンルは違いましたが、震災後も何かできることを続けたいという思いをずっと持っていた私は、会議でこの話が舞い込んできたとき、上司に担当にさせてほしいと願い出て担当にしてもらいました。
 「保養しに行った」という思い出ではなく、「この夏が一番楽しかった」と感じてもらいたくて「やり残しなく思いっきり楽しもう!」をルールに本当に思いっきり遊びました。虫取りや飯盒を使ったカレー作り、キャンプファイヤー、天体観測など子どもたちが思いついたことをやりつくしました。

楽しみになった情報収集

 新天地において一番困ったのが、地名や道が全くわからないことです。新潟はバイパスが複雑かつ分岐表記が短いため、行きたい方向と全く違うところに行ってしまったり、旧街道名や昔あった建物で案内をされたりと、理解するまでに相当な時間が掛かりました。
 移動にせよ、買い物にせよ、とにかく情報が乏しかったこともあり、地元ラジオ局の放送をよく聞くようになったり、休日には各区を探索しに出かけたりして少しずつ情報収集をしていました。最初は「知らないと不便だから」という理由で始めた情報収集が気づけば楽しみになっていました。
 外に出ればでるほど新潟の自然と文化の豊かさに気が付きます。新潟にきてから、スノーボードや釣り、登山、神社、グルメ、棚田巡りなど新しいことを始める機会がどんどん増えていきました。私にとって新潟は、外に出れば何でもできるし、誰かに出会える。何かが起こる環境に溢れている場所だったのです。
 新しい情報や日々の出来事を、同じように知らない土地で奮闘している同期メンバーと交換することもとても貴重な時間で、頻繁にLINEやメールでやり取りをしていました。情報交換することで、より親しみや第3の故郷のような感覚が芽生えていったように感じています。また、同じような環境下で頑張る仲間同士、張り合っているみたいで探求心や何かを取り組む活力をもらっていたように思います。

本気で市民エネルギーづくりに携わる

 平日は仕事、休日は新潟に馴染むため情報収集。楽しくもあり忙しい日々もなんとか乗り越えていましたが、やはり体は正直でした。仕事も多忙となり、もはや気力だけではカバーできずに、出張先で緊急搬送される事態になってしまったのです。その時から、自分の働き方について考え始めるようになりました。
 とはいえ、私自身明確にやりたいというものはありませんでした。ただ、ぼんやりと地域に必要な仕事、地元で暮らせる働き方、田舎に選択肢をつくりたいと思っていたんだよなあ...ということが心に引っかかっていました。
 そんな時、退職を本格的に考える分岐点となった出来事が、新潟市が企画したエネルギーの勉強会でした。
 その勉強会には、大学院時代に一緒に活動していた方がゲストで呼ばれており、その方から誘って頂いたのですが本当に恥ずかしい話、当日になるまでどのような勉強会なのかよくわからずに参加してしまいました。
 そんな私を突き動かしたのは新潟市民の熱気でした。「本当に豊かな生活ってどういうことなのか。」「大好きな新潟の自然や伝統を残していきたい。」「納得のできるエネルギーを利用したい。」と感じている方々や実践されている方々がたくさんいらっしゃる場でした。新潟の自然や文化を少しずつわかり始めてきた私にとっても、その誇りや希望は大事にしたいと思うものばかりでした。
 その後も勉強会に参加し、市民による自然エネルギー事業の広がりや太陽光事業、デンマークを中心とした欧州の事例、そして新潟県内での木質ペレットストーブの事例など、エネルギーについて学び、語り合う時間を多く過ごしました。そして、徐々に「本気でやってみようじゃないか!」という雰囲気が沸き上がっていきました。
 私の中にずっと燻っていた『田舎で暮らす選択肢をどうやって増やしていくのか』という問い。そして同じようなことを考え本気で実現させたいと思っている市民との出会いに、何か突き動かされるものがありました。その日から新潟での初めての仕事からいままでのことがぐるぐる思い返される夜が続きました。
 そして勉強会最終日。慕っているゲストの方を送迎している車中、気付くと「本気で市民エネルギーづくりに携わりたい」と相談していました。そしてその方の「お前ならできる」と言ってくださった一言が、私の人生を大きく変えることになりました。
 多様な刺激を与えてくれる環境と様々な方々とのご縁。また、昔からお世話になっている方や友達、職場の方々からも応援していただき、わたしはそれから約半年後、勉強会で出会ったメンバーとおらってにいがた市民エネルギー協議会を立ち上げたのでした。
 次回は、おらってでの仕事の様子や市民エネルギーについてお話します。

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