2016.01.12 掲載
vol4
佐渡市地域おこし協力隊
小川佳奈子さん
佐渡市在住
vol4
神奈川県横浜市出身。大学を卒業して、社会人を経験した後、英国に2年滞在。英国で無農薬野菜と出会い農業を仕事にと考えるように。そんな折、佐渡の地域おこし協力隊を知り応募。2013年10月から協力隊メンバーとして活動をスタート。新穂地区を担当。
私たち地域おこし協力隊には、最長3年という任期があります。協力隊をしていると、地元の方々からは「どうせ3年経ったら帰るんだろう」とか、「佐渡に嫁に来て!」など、私たちの動向に興味を持ってくれているからこそ投げかけられる言葉が多々あります。島の人々の関心は、その人間がその土地に居つくか居つかないか、に大きく寄せられているようにも感じます。
佐渡島に地域おこし協力隊として着任し、新穂に暮らして2年3ヶ月が経ちました。私の場合、今年9月で任期満了となるのですが、卒業を半年早め、今年3月末で協力隊を辞めることに決めました。その決め手となったのは、「結婚」という人生の転機も大きな要因のひとつですが、最後はやはり、自分が佐渡でどう生きていきたいのか、という人生の目標を掲げたとき、協力隊という立場から、次のステップへ移ろうと踏み出す決心がついたからです。
着任当初、私には3年後佐渡でこんなことがしたい!という明確な目標はありませんでしたし、協力隊の仕事に直結することを大学で勉強したわけでも、前職でやっていたわけでもなかったので、まず「自分ができること」から始めました。日々、自分の持っている引き出しをひっくり返しては、何か使えるものはないかと30年間の自分の経験を総動員して臨んでいました。高校生のとき少しかじった舞台音響やアナウンスの知識が、地元のイベントで役だったり、英語のちょっとした通訳を頼まれたり、横浜で子どもたちとやっていた田んぼ作業が、佐渡で環境教育のお手伝いに取り組む意欲に繋がったり。今振り返ると、私の人生、無駄なことはひとつもなかったと思わせてくれる最高の仕事でした。私のやりたいようにやらせてくれた周りの方々には、感謝の気持ちでいっぱいです。
そして何より、昔から大好きだった絵を描いたり、何かを作る作業が、イベントのチラシやポスター制作、祭りの小冊子作りなどで生かされたとき、大きな喜びを感じました。喜びと同時に、ここにチャンスがあるのでは?と考えるようになりました。そこに少しでもお金が発生すれば、協力隊を辞めてからも自分のお小遣い程度になるのでは、と。
協力隊を卒業して、自分がやりたいことは、それこそ新しい働き方なのかもしれません。結婚相手が自営業なので、その仕事を手伝いながら、協力隊として関わってきた農作業や、イラスト作成などを、小さな生業として続けて行けたらと思っています。上手いようにお金になるかは分かりませんし、私自身がそれぞれのバランスをコントロールできるかも分かりません。でも、協力隊として佐渡に来たからこそ、そして卒業する今だからこそ挑戦できる新しい働き方の実証を、自分自身でやってみたいと思っています。
実証が成功して初めて、私も自信をもって、佐渡の子どもたちに島に帰っておいでと言える気がしています。これまでの働き方に囚われなければ、佐渡には如何様にも生きていく術はあるし、将来への視野を決して狭めないで欲しいと伝えたい。むしろ新しい働き方を作っていこうと前向きに捉えてくれる若者が、佐渡にももっと増えたらいいなと願っています。
先日、東京で佐渡のお話をさせて頂く機会がありました。単なる講演会とは違って、私や他のゲストの方の話を踏まえて、参加者同士の対話を進めて行くという形式で、集まって頂いた方々も、単に佐渡に興味があるという方ではなく、様々なフィールドで活動されている方、普段とは違ったエネルギーに触れたいという方などが参加してくださいました。自分の拙い話から、皆さんが拾い上げるトピックスの違うこと違うこと。話のすそ野が広がっていくような、とても面白い感覚になりました。違った視点から見ることの大切さを思い出し、島外との行き来の大切さ、やりとりの刺激の大きさを感じました。
佐渡に定住が決まった頃から、外へ出て行くことを億劫に感じ始めていた私。自分はここ(島内)でできることを…。そんな風に、島の一住民的な考え方になっていたことに気づかされました。これからも、外にいた者だからこそのフットワークで、佐渡と都会を行き来できる身軽さを持ち続けたいと思います。そこから、新しい何かが生まれる日を信じて。私の力は地域をおこす程の力はありませんでした。それでも、「来てくれてありがとう」と言って下さる方たちがいます。そうであれば、佐渡に来た頃と同じように「自分にできること」をこれからも精一杯続けて、何か一つでも、佐渡に自分が来て良かったと思えるものを増やしていきたいと思います。
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