2014.09.19 掲載
「第6回とおかまちてづくり市」実行委員長
田中博史さん
秋になり、新潟県内各地で様々なイベントが開催されます。そのなかでも、地域と結びついた手作りのイベントも数多く見られます。企画する人たちや参加する人たちのこだわりが感じられるのも、手作りのイベントならではだと思います。今回は、そのようなイベントの一つ、10月5日に開催される「第6回とおかまちてづくり市」の実行委員長を務める田中博史さんにお話を伺いました。
十日町市出身。高校卒業後、東京都内の専門学校に進学し、服飾について学ぶ。その後、スタイリストのアシスタントを勤めるが、26歳のときに仕事を辞めて海外へ。2年間の海外生活の後、十日町市へUターン。家業を手伝う傍ら、洋服販売店「Omake(オマケ)」をオープンさせる。現在、店長は奥様に任せ、自身は洋服の製作などを担当している。
「十日町に帰ってくるきっかけとなったのは、海外での生活を経験したことでした。アジア各国やオーストラリア、アメリカなどを回りましたが、海外では、自分のペースで生活することができました。そこで感じたのが、「東京の生活はつまらない」ということです。時間の流れが速いなかで生活するよりも、ゆっくりとした流れのなかで自分のやりたいことをする方が楽しいのでは、と思うようになりました。そうなると、生活する場所として思い浮かんだのは「東京」ではなく、故郷の「十日町」でした。そのため帰国後は、迷わず十日町に戻ってくることにしました。」
「十日町に戻って感じたことは、「町に元気がなくなった」ということです。イベントを企画するようになったのは、何とかして多くの人に集まってもらい、町を活性化したいという思いからです。そして、せっかくならば「東京でなくてもできること」「田舎でなければ楽しめないこと」をやろうと考えてきました。
そこで、着目したのが毎年2月に開催されている十日町雪祭りの雪上カーニバル会場です。雪上カーニバルは土曜日の夜に開催されるのですが、翌日の日曜日はその会場は全く使われていませんでした。ここを有効活用できればと思い、始めたのが「豪雪JAM(ジャム)」(※1)でした。現在の運営は若手スタッフに譲っていますが、新潟県外から多くの方が訪れる、冬の十日町を代表するイベントの一つになったと思っています。」
※1豪雪JAM(ジャム)…十日町雪まつりの最終日に雪上カーニバル会場をそのまま利用して行われる野外音楽フェス。平成20年に始まり、今年2月16日に7回目が開催される予定だったが悪天候のため中止になった。
「若者が集まるイベントとして「豪雪JAM」を開催していましたが、一方で、幅広い年代の人たちが集まるイベントが企画できないかと考えるようになりました。そんなときに訪れたのが「クラフトフェアまつもと」(※2)でした。大勢の人が集まり、おしゃれで洗練されたイベントという印象を受け、このようなイベントを十日町で開催すれば多くの人が呼べるのではないかと思いました。出展者を集めることに苦労もしましたが、「Omake」を通じて知り合った作り手の方々から協力を得ながら、「とおかまちてづくり市」の開催につなげることができました。
「クラフトフェア」ではなく「てづくり市」としたのは、工芸に精通している人だけが集まるような堅いイメージを取り払い、敷居を低くしたいと思ったからです。出展者にとっても、訪れる人にとっても気構えをせずに参加して欲しいと考えています。そのため、工芸品だけではなく、米や野菜を作っている人たちも「作り手」として出展しています。また、「遊べる市」ということも意識し、会場の中央にはワークショップスペースを設けて子どもたちがものづくりを体験できるようにしています。作り手と子どもたちが触れ合う機会になればとも思っています。」
※2クラフトフェアまつもと…長野県松本市で開催されるクラフトフェア。各地で開催されるクラフトフェアの先駆けとも言われており、今年5月の開催で30周年を迎えた。
「当初は仲間うちで色々なイベントを始めたのですが、次第に若い世代の人たちともつながりができていきました。また、行政からも協力を得られるようになり、現在では、市の町づくりのミーティングに参加することもあります。
イベントを企画することには、十日町を全国に発信したいという思いもあります。開始当初、「豪雪JAM」は新潟県外の若者を呼び込もうという狙いもありました。
個人的には、現在は「東京が絶対」という時代ではなくなってきていると思います。自分のペースで生活ができるなか、自分たちが楽しめることを企画し、発信することで、生きがいのある生活をすることができています。そのことが周囲を楽しませることにもつながっているのではと思っています。海外から帰ってくる際に、迷わず十日町に戻ってくることを決めましたが、その判断に間違いはなかったと確信しています。」
「十日町に戻ってきて10年以上が経ったので、これまでよりはゆっくりしていこうと思っています。随分、やりたいことをやってきたという思いもあります。
ただ、「てづくり市」については、続けて欲しいという声がある限り続けていこうと考えています。開催するにあたっての苦労も多いのですが、出展する作り手や毎年の開催を楽しみにしている市民の方から期待されている声を聞くとやめられないと思っています。「てづくり市」を商店街の活性化につなげたり、「大地の芸術祭」と関連づけたりなどのアイデアはあります。ただ、これらにはクリアしなければならない課題が多いので、すぐに実現させるということはできないのですが、自分のペースで少しずつ進められればと思っています。」
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