2026.07.22 掲載
couture libre moca(クチュール リーブル モカ)
浅野 萌香さん
見附市出身。新潟県立長岡商業高等学校を卒業後、東京にある文化学園大学へ進学。卒業後は五泉市のニットメーカーで3年間勤務し、その後、東京のメンズデザイナーズブランドのアトリエへ転職。メンズパタンナーとしての経験も積んだ後、2025年5月に地元・見附市へUターン。NICO起業支援補助金を活用し、2026年に仕立て屋「couture libre moca(クチュール リーブル モカ)」をオープンした。
【Q.couture libre mocaはどのようなお店ですか?】
「couture libre moca」は、フルオーダーの服づくりを中心に、服のお直しやオリジナル雑貨の製作販売、オリジナルレンタル衣装の製作・貸し出しなどを行うお店です。
また、ものづくりを通じて地域を盛り上げたいという気持ちから、「見附今町・長岡中之島大凧合戦」をモチーフにしたオリジナル雑貨の企画・製作にも取り組んでいます。現在は大凧合戦協会と連携しながら、手刺繍やミシン刺繍の技術を活かしたオリジナル商品の開発を進めています。
まだ構想段階でが、将来的には道の駅などでの販売や、ふるさと納税の返礼品としての展開も視野に入れています。地元ならではの文化や魅力を形にしながら、多くの方に知っていただける商品を届けていきたいと考えています。
【Q.服づくりに興味を持ったきっかけを教えてください。】
服づくりに興味を持ったきっかけは、母方の祖母の存在でした。祖母はとても器用な人で、私が小さい頃から洋服を作ってくれていたんです。小学2〜3年生の頃には、祖母に教わりながら初めてミシンや編み物に挑戦しました。中学生になると、自分で好きな服を作るようになり、その頃から漠然と「いつか自分のお店を持ちたい」と考えるようになっていました。
将来の起業も見据え、高校は商業を学ぶために新潟県立長岡商業高等学校へ進学しました。その後、本格的に服づくりを学ぶため、文化学園大学へ進学。大学では、主にレディースファッションを学び、その中でもオートクチュール(一点物のオーダーメイド服)を専門とするコースを専攻し、より知識と技術を深めました。
卒業論文・衣装製作は4年間の集大成となるためテーマ選びに悩みましたが、そのきっかけになったのが大学3年生の時の文化祭でした。過去に卒論で学長賞を受賞された先輩の衣装が展示されていて、その中で東京・酉の市の熊手をモチーフにした作品に強く心を動かされたんです。「自分も地元の文化や伝統を研究テーマにした論文と衣装なら、小さい頃から慣れ親しんできた伝統行事だからこそ、衣装製作という新しい形で表現できるのではないか」と思い、見附今町・長岡中之島大凧をテーマに選びました。
完成した論文と衣装は学長賞をいただくことができましたが、それ以上に、故郷の文化や伝統を表現する面白さや新たな可能性を実感できた経験だったと思います。
【Q.大学卒業後のキャリアについて教えてください。】
大学卒業後は、五泉市のニットメーカーに就職しました。
本当は東京での生活がとても楽しかったので、そのまま東京で働きたいと思っていたんです。しかし、私が就職活動をしていたのは2020年。ちょうど新型コロナウイルス感染症の影響が大きかった時期で、希望していたパタンナー職の求人もほとんどありませんでした。そんな中、五泉市のニットメーカーでニットパタンナーの募集があり、新潟県へ戻る形で就職することになりました。
ただ、東京で働きたいという気持ちを完全に諦めたわけではありませんでした。3年間勤務した後、東京のメンズデザイナーズブランドへ転職し、念願だった東京でのパタンナーとしてのキャリアをスタートさせました。憧れていた東京での仕事でしたが、実際に働いてみると想像以上に大変でした。毎日遅い時間までの残業、毎週の休日出勤で仕事中心の生活になり、プライベートの時間はほとんど取れなくなってしまったんです。
もちろん学ぶこともとても多く、自分自身のキャリアアップには最適な環境でしたが、心身ともに体調を崩してしまったのをきっかけに、次第に「これなら東京に住んでいる意味がないかもしれない」、「東京は暮らす場所というより、時々遊びに行くくらいが自分には合っているのかもしれない」と感じるようになりました。
【Q.地元・見附市へUターンしたきっかけは何でしたか?】
もともと「30歳までには起業したい」という強い想いがありました。最初は東京で起業することも考えていましたが、ライバルも多く、その中で事業を続けていくことの難しさを感じるようになっていました。そんな時、地元・見附市で洋服のお直し店がなく、困っている人がいるという話を耳にしたんです。その話を聞いたとき、自分の技術を生かせるのではないかと思いました。そして、「それなら自分がやろう」と決意したんです。
お直しの仕事は地域に根差したサービスですし、実際に困っているという声があるということは、それだけニーズがあるということです。起業を考えていたタイミングとも重なり、見附市でお店を始めることを決意しました。
オーダーメイドの製作や商品の販売については、オンラインで打ち合わせや受注ができる時代です。都心から離れていることに不便さは感じませんでしたし、むしろ地元で暮らしながら、自分のやりたいことを実現できる環境に魅力を感じていました。そうしたこともあり、見附市へのUターンに大きな迷いはありませんでした。
【Q.どのように起業準備を進めていきましたか?】
起業にあたっては、NICOの起業支援補助金(U・Iターン創業応援事業)を活用しました。東京都からの移住支援金を申請する際に補助金の存在を知り、行政などの窓口に相談しながら準備を進めていきました。
採択のハードルは高いと聞いていたので不安もありましたが、その分「絶対に採択されたい」という気持ちが強くなりました。申請には事業計画の作成など準備が多く大変でしたが、自分の考えや事業構想を改めて整理する良い機会にもなりました。また、見附市の起業創業支援事業補助金も活用しています。
Uターン後、起業に向けて動く中でさまざまな支援機関や人を紹介していただきましたし、見附市からも事業主向けの交流会や地域の情報などを丁寧に教えていただきました。実際にそうした場へ参加したことで、多くのつながりをつくることができたと感じています。もちろん、自分で調べたり動いたりしなければならないこともたくさんありましたが、支援を受けられたことは本当に大きかったですね。
現在はオープンに向けた最終準備を進めており、6月11日にプレオープン、7月19日にグランドオープンを予定しています。(取材日:2026年6月9日)
【Q.Uターン後に気付いた新潟の魅力はありますか?】
地元に戻ってきて改めて感じたのは、空気のきれいさです。息苦しさを感じることがなく、とても過ごしやすいですね。また、自然が身近にある環境にも魅力があります。東京では常に時間に追われるような生活を送っていたので、せかせかせずに過ごせる今の暮らしはとても心地良いです。
私はスノーボードが好きなので、気軽に雪山へ行けるのも新潟ならではの魅力だと思います。昨年は起業準備でなかなか時間を取れませんでしたが、お店が落ち着いたら思いきり楽しみたいですね。
同じ業界で働き、同じ趣味や価値観を持つ大学時代の友人が近くに住んでいることも、とても心強く感じています。
最近は、休みの日にその友人と「モバ編み(※)」を楽しんでいます。お気に入りの場所は「パティオにいがた」のテラスです。目の前に広がる緑を眺めて編み物をしながらおしゃべりしたり、お惣菜を買ってそのままテラスで食べたり。そんな何気ないゆったりとした時間を過ごせるのも、新潟の魅力だと思います。
自然に囲まれながら、自分の好きなことをゆっくり楽しめる。そんな暮らしができることに、改めて新潟の良さを感じています。
※モバ編み:「モバイル編み物」を略した言葉で、外出先や移動中に編み物を楽しむスタイル
【Q.今後挑戦したいことを教えてください】
年内は、より多くの方に「couture libre moca」を知っていただきたいと思っています。そのうえで、安定してオーダーメイドのご依頼をいただける状態を目指したいですね。目標は月2件ほどです。さらに、ドレスやスーツなどの高単価なオーダーも少しずつ増えていったら嬉しいです。
単に「服を作ってくれる人」として選ばれるのではなく、「浅野さんにお願いしたい」と思っていただける存在になりたいと思っています。そのためにも、自分が服づくりに込めている想いや価値をしっかり発信し、共感してくださる方とのつながりを増やしていきたいですね。
また、自分自身のことを知っていただくために、Uターンした経緯や地元で起業した理由、新潟で暮らす魅力なども積極的に発信していきたいと考えています。ものづくりはもちろん、リール動画などのSNS発信にも力を入れていきたいです。
そして将来的には、都市部でのPOPUP出店や、地元のクリエイターや古着店などとのコラボレーションにも挑戦していきたいと考えています。
服づくりを通して人とのつながりを広げながら、新潟、そして見附をもっと盛り上げていけたら嬉しいですね。
【Q.Uターンや起業を考えている方にメッセージをお願いします】
「若いうちは都市部で働いた方が良い」「まずは3年働いた方が良い」などと言われることもありますが、私は年齢に関係なく、挑戦したいと思った時に挑戦するのが一番だと思っています。
私自身も最初の就職先では「まずは3年」という考えにとらわれて働いていましたが、今振り返ると、そこまでこだわる必要はなかったのかもしれません。若いうちだからこそ自由に動けることもありますし、固定観念に縛られすぎる必要はありません。
また、起業したいと考えている方には、ぜひ積極的にチャレンジしてほしいですね。お金の不安などもあるかもしれませんが、新潟では県や市などの行政による支援制度が充実していて、手厚いサポートを受けることができます。
おそらく一番大変なのは、最初の一歩を踏み出すことです。でも、すべてを一人でやろうとせず、まずは周りを頼ってみてください。特に、「まだ人に話す段階じゃないから」と、自分の考えを内に秘めてしまうのはもったいないと思います。人に話すことで考えが整理されたり、構想がより具体的になったりすることもあります。
商工会でも事業計画のアドバイスをもらえますし、頼れる場所はたくさんあります。「すべてを一人で調べなければ」と抱え込まず、周りの力を借りながら、ぜひまずは挑戦してみてください。
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