2015.02.27 掲載
vol4
合同会社 直送計画 代表
谷 俊介さん
新潟市在住
vol4
東京都出身。大学在籍時からITベンチャー企業に勤務。2011年、妻の実家がある新潟市に、高校からの友人や、IT企業の後輩らと共にIターン。独自の視点で、新潟の魅力的な商品を県内外に紹介するショッピングサイト「新潟直送計画」の運営を行っている。
23歳の時に、東京から新潟に移住して起業し、4年が経とうとしています。今回は、地方で起業することについて書いてみたいと思います。
首都圏から新潟に移住して起業して以来、「Iターン」「移住者」として様々な取材を受けましたが、正直なところ、そんなに大それた決断だったとは思っていません。実際、新幹線では2時間弱で帰れる距離です。東京で働きながら、千葉や神奈川の郊外から通勤している人達もたくさんいますから、その程度の感覚でしかありませんでした。それなのに家賃は東京の半額以下。今は事務所からすぐそばに部屋を借りているので、満員電車の苦労もありません。海も山も川も、温泉に雪山まであります。最近では、東京のベンチャー企業が、四国などにサテライト・オフィスを構える、なんて話をよく聞きますが、ITの活用によってこれからさらに働き方が多様化する時代になると感じています。どこででも仕事ができるなら、あえて固定費が高い都心部にオフィスを構え、毎日満員電車に揺られて仕事に向かう理由はないと思っています。
もともと、何をするかも決めずに新潟で独立しました。独立当初は、会社ではなく、フリーランスの集合体として仕事を始めましたが、貯蓄も無ければ、特別なスキルもなく、バイトなどを掛け持ちしながら、とりあえず独立してしまいました。現在、ネット通販の仕事や、WEBサイト制作の仕事をさせてもらっていますが、これらにあたって必要なスキルのほとんどは新潟に来てから、独学で学んだものです。僕らの世代は「起業」というと、「ベンチャー」のイメージが先行する部分があり、資本を集め、明確なビジョンを掲げて拡大路線を取ることが理想像のように思いがちです。僕らは気の知れた友人や同僚と集まり、自分たちのペースで仕事をしています。事務所の改装も自分たちでやりました。事務所には卓球台を置いてみたり、エスプレッソマシーンを置いてみたり、大型テレビにゲーム機を置いてみたり、自由に環境を整えました。いかにも「ゆとり的」ですが、僕らにとっては、「誰とどのように働くか」が最も大切なことで、それこそがやりたいことだったように思います。それでも、自ら起業することで一般的な就職の中では決して得られない経験を得られていると感じています。
「起業してみたいけどやりたいことが見つからない」、という声を聞くことがあります。私自身、やりたいことなど何もなく、何をするかも決めずに独立してしまいましたが、その点では地方に来てよかったと感じています。東京に比べると、地方の方が、単純に「必要とされていること」が明確で、かつたくさんあるからです。起業をして、事業を始めても、それが人に必要とされない限り、対価をいただく「サービス」として成り立ちません。技術の進んだ今では、東京を始め、世界中にあまりにも多くの会社とサービスがあり、何事においても便利な世の中になったと言われます。そんな中で生きてきた経験不足の若者にとっては、世の中に必要とされているサービス、その中で自分ができること、というのが見えづらい部分があると思います。人材が流出し過疎が進み、格差が生まれている地方の中において、必要とされていることは非常にシンプルなことが多いです。自分達自身、あてもなく新潟に来てから、地域の声に耳を傾け、自分たちのペースで、できることを模索しながら会社を運営してきました。今では地域の多くの農家さんや生産者さんにご支援いただき、ローカルメディアにも多く取り上げていただく機会を得ています。自分たちなりの、ゆるやかなペースではありますが、「地域社会との繋がり」の中で、着実に成長していることを実感しています。そんな自分たちの働き方が、多様な生き方を考える新しい世代の働き方の一つとして、考えてもらうきっかけになればと思っています。
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