2018.01.24 掲載
テラスカイ株式会社
原 諒太朗さん
上越市
テラスカイ株式会社
箕輪 雄太さん
上越市
「Why Japanese people?」のネタでおなじみ、厚切りジェイソンさんが部長を務めるIT企業、株式会社テラスカイ。2017年4月、新潟県上越市にサテライトオフィスを立ち上げ話題となりました。
オープンに合わせ、東京にある本社から4名が異動。現地で1名を採用し、現在は5名体制で仕事を行っています。異動に伴いIターン、Uターンしてきたお二人にお話を伺いました。
原 諒太朗さん:1981年神奈川県生まれ。2014年10月に株式会社テラスカイに転職。上越サテライトオフィスの開設と同時に、上越市へIターン。サテライトオフィス所長兼開発エンジニア。
箕輪 雄太さん:1987年上越市生まれ。大学を中退し、2007年に株式会社テラスカイへ入社。開発エンジニア。サテライトオフィス開設と同時に上越市へUターン。
原さん:上越市に来たのは、サテライトオフィスの立ち上げの計画を、社長から直接話を受けたことがきっかけでした。ある日、突然社長から呼び出されて「地方にサテライトオフィスをつくるから、所長をやってくれないか?」と。元々住む場所にはこだわりがなく、海外じゃなければどこでもいいかなと思っていたので、二つ返事で「はい」と答えていました。後から、場所を聞いたのですが、「上越市って何県ですか?」と言うレベル。当時、新潟県の市は新潟市と長岡市しか知らなくて(笑)全くイメージがないまま引っ越してきました。
当社では地方にサテライトオフィスを開設するのは初めてのこと。そのプロジェクトを任されたのは嬉しかったです。実は、親や友人など周りの人には反対されました。でも仕事だし、自分の力を試したいという思いもあったので、ひとまずはやってみたいと、チャレンジを決めました。
箕輪さん:サテライトオフィス開設にあたって、社内で上越市に行くメンバー集めが行われました。そこで原さんに「一緒に行こう」と、声をかけられたのがUターンしてきたきっかけです。でも、最初声がかかったとき、本当は戻りたくなかったんです。私は上越市出身で、大学進学をきっかけに関東に出ました。就職活動をしていた時には地元就職を希望していて、テラスカイに応募した理由は、2007年当時にも上越オフィスを立ち上げるという話があり、上越で働けるスタッフを募集していたからです。当初は1年間だけ東京で研修期間があると聞いていたのですが、上越オフィス開設の実現が遠のいたため、そのまま東京勤務。それから10年が経っていました。
今回、話をもらって、正直戻りたくないなぁと思っていました。親はすごく喜んでくれましたが、仲の良かった同級生も地元には残っていなかったですし、東京は便利で楽しいし。何よりも車社会だというのを知っていたので、東京生活に慣れてペーパードライバーの自分は生活が不安でした。
原さん:当社はインターネット上でデータを管理したり、システムを利用する「クラウドコンピューティング」の専門会社です。クラウドはインターネットさえあれば場所を問わずに仕事ができるので、テレワーク(場所や時間にとらわれない柔軟な働き方)に最適なサービスと言われています。クラウド上でのコミュニケーションが社内に浸透しているので、サテライトオフィスでも思った以上にスムーズに仕事ができました。チャットツールや、パソコン画面の共有、スケジュールにデータ共有、テレビ会議など、本社のスタッフとコミュニケーションを取るツールはたくさんあるので。ただ、阿吽の呼吸というか、普段、言語化しなくとも雰囲気で伝わるものが、遠隔になるといちいち確認しなければいけないという難しさも感じています。
箕輪さん:仕事しているとちょっとしたことで「どうしようかな?」っていうことがありますよね。そうしたときに同じオフィスにいれば雑談ついでにすぐに聞けたのですが、今は文字にしたり、電話したりという一手間がかかります。それが煩わしい部分があるのは事実です。ただ、東京にいた頃は通勤に片道1時間以上かかっていたのですが、今は10分程度になりました。人混みを歩くこともないですし、満員電車に乗らなくてよくなり嬉しいです。
原さん:上越サテライトオフィスは、総務省の「ふるさとテレワーク推進事業」に応募して採択されたもの。城下町高田の古い町家をオフィスにリノベーションしました。どんなオフィスにするかを委員会で話し合い、ただのオフィスではなく「自分たちも楽しい」「来た人も楽しい」「町も元気になる」といった要素を盛り込むことになりました。アイデアを出し合い簡単なセミナーや勉強会などにも使えるマルチスペースだけでなく、「カウンターキッチン」に「掘りごたつ」を設けるなど、過ごしていて楽しいオフィスになりました。
箕輪さん:本社では大所帯だったので会議室も予約しなければ使えないですし、同じフロアでは50人ほどが働いていたので、周りが気になって集中できないこともありました。今は人数が少ないので、一人で作業したいときには部屋を移動して作業できたりと、仕事環境はすごく良くなりました。
原さん:上越市に来て驚いたのは、食材のレベルの高さ。安くて美味しい食べ物がいっぱいあることです。中でもお気にいりは「あるるんの杜」というJAの直売所。地産地消のお肉や野菜を売っている場所で、新鮮な食べ物が手に入るのでよく利用しています。また、本社のある日本橋だとランチで1,000円を超えてしまうのですが、こっちだと1,000円以下で美味しいものを食べられるのも嬉しいです。
箕輪さん:上越市の食べ物の美味しさは、関東に出てから初めてわかりました。特に魚は種類も豊富で、新鮮で美味しかったのだと思いました。私はもともとあまり外に出かけるタイプではないので、東京にいるときと休日の過ごし方は変わっていないです。インターネットがあれば、どこにいてもいろんなコンテンツが楽しめるので。また、会社とスーパーの徒歩圏内に住んでいるので、心配していた自動車も使わずに生活できています。通勤時間が減った分自分の時間も増えて、部屋も広くなり、生活は快適です。
原さん:私は、もともと美術館通いが好きで、上越市に移住するにあたっても、「美術館に通えなくなったら嫌だ」と思っていました。こちらに来てからは、富山や長野など県外にも行っています。今度、長岡にある新潟県立近代美術館にも行きたいなと思っています。少し足を伸ばせば楽しめる場所はたくさんあるという印象です。
他にも、ギター、カメラも趣味でやっています。趣味のお陰で地元のコミュニティにも入っていくことができ、こちらでも知り合いが増えました。やっぱり上越市は人とのつながりが強いですね。東京では何回も会わないとなかなか仲良くなれないですが、こちらでは一回顔を合わせたらすごく良くしてくれます。
原さん:この1年で地元の人との繋がりもできてきました。サテライトオフィスでプログラミング教室を行ったり、見学に来てくれた人と情報交換をしたり。また、祭りで紅白幕と提灯を飾る等地域の行事に参加させてもらったりもしました。趣味の音楽でも地元の高校生と知り合う機会があり、「上越って高校を卒業すると大学進学の際に地域外に出て行ってしまう人がほとんど」という話も聞きました。これまでは、サテライトオフィスでの仕事環境の整備が優先事項でしたが、これからは地域の中で面白いことを仕掛けて行ければと思っています。プログラミング教室などのイベントはもちろん、例えば地元の高校生にインターンをしに来てもらうなど。地元のニーズを探っていきたいです。
箕輪さん:これからのことはまだわからないですが、まずは上越サテライトオフィスでの仕事をしっかり行っていきたいです。私たちはクラウドサービスの企業です。そのクラウドを活用して、場所や時間にとらわれずに働くテレワークの有効性をテストしている立場だと思います。まずは、目の前のことを一つ一つ積みあげていきたいです。
原さん:4月から地元出身の新卒社員が上越サテライトオフィスに入社します。これからも地元出身の人を積極的に採用したいと思っています。ここの定員は10名ほどですが、私たちの事例をきっかけに地元に帰ってきたいと思う若者たちの受け皿となる企業が増えていってほしいです。
このページをSNSで共有する