2014.01.29 掲載
チェーンソーアーティスト
成川潤さん
阿賀野市
保育士
青柳花子さん
粟島浦村
近年、「スローライフ」や「ロハス」などの言葉が注目を集めており、自然と共にゆったり生活することを目指す人が増えています。本県には、日本百名山に数えられる山々や特別天然記念物の朱鷺が生息する佐渡島があり、それらの地域には観光で訪れるだけではわからない魅力があります。
そこで今回は、夢に向かって“山”“島”に移住した2人の方をご紹介します。移住の経緯から仕事や活動、住んでいる人だからこそわかる“山”や“島”の暮らしについて、様々な角度からお話を伺いました。
仕事の傍ら、チェーンソーアーティストとして活躍している阿賀野市在住の成川潤さんにお話を伺いました。
成川さんは、専門学校で自然環境保全について学び、卒業後は県内の森林組合に就職。専門学校在学中は『木』だけでなく、爬虫類などの生き物にも興味があったといいます。
「就職した森林組合では植林、間伐、枝打ち、伐採といった工程を行っていましたが、伐採後にそのまま捨てられてしまう木を次第にもったいないなと思うようになりました。そして、『何かに活用できないか』と考え、浮かんだのがチェーンソーアートでした。
仕事で使っているチェーンソーを少しでもうまく使いこなしたいという思いから、練習も兼ねて、大きいサイズの生き物フィギアを作ってみることにしました。完成したフィギアは、思いのほかうまくでき、周囲の人も褒めてくれたので、徐々にチェーンソーアートに夢中になっていきました。」
「同じ種類の木でも色や模様、木目がそれぞれ異なるため、全く同じものができあがることはありません。そこが機械で作ったすべて同じの既製品にはない魅力だと思います。
また、乾燥した木と生木にも違いがあり、乾燥した木は水分が少ない分、堅くて彫りにくいのですが、乾燥後に変形することは少ないです。一方、生木は彫りやすい反面、乾燥すると割れたり、変形したりします。チェーンソーアートでは生木を使用する事が多いのですが、
“割れ”をうまく読まないと完成後に割れ目ができてしまいます。長年、作品作りをしている方の中には乾燥後の割れ目を見事に読み、変形や割れ目を売りに作品作りをしている方もいますが、私はまだ勉強中です。確実に割れ目を予測することができれば、作品作りがさらに面白くなると思います。
アート作品とは別に、より身近に日常的に使用して貰えるものを作りたいと考え、半年程前からノミを使って作ったお皿やフォークも作り始めました。観賞用としてではなく、日常生活に木工製品を取り入れ、多くの人に木の温もりを感じて欲しいです。」
「以前は新潟市内に生活拠点を構えていましたが、よりチェーンアートに打ち込める環境を求めて、一昨年の3月に現在の住まいである阿賀野市に引っ越しました。
引っ越してきて困ったことは特にありませんが、あえて挙げるとするなら、以前より通勤時間がかかることくらいです。特にこの時期は雪の影響で通常の倍以上の時間がかかることもありますが、それは苦になりません。
最近、都会に行けば行くほど、近隣住民との関わりがなくなっていますが、ここには田舎ならではの助け合いがあります。馴染むまでに少し時間はかかりましたが、馴染んでしまえば住民の方々はとても気さくで優しく、自分で切った木をお裾分けしてくれたりと本当によくしてくれます。
「人の気配がないと嫌だ」「歩いて5分以内にコンビニがないと嫌だ」という人もいますが、私は何も気兼ねせずに制作活動に没頭できる、静かなこの環境を気に入っています。」
「人生は短いですから、自分のやりたいことをやった方がいいと思います。学生時代はサークルや部活動などやることがあるので気にはならないですが、大人になり自由な時間が増えると逆に何をしていいかわからなくなる人が多い気がします。
せっかく時間があるのだから、その時間を有効に使い、何かにチャレンジしてみると良いと思います。何もしないのはもったいないので、何でも良いのでまずは一歩踏み出し、自分から行動して見ることが重要です。そうすれば、人とのつながりや出会い、新たな発見がきっとあると思います。」
粟島浦村で保育士をしている青柳花子さんにお話を伺いました。
青柳さんは、新潟市南区生まれの27歳。専門学校の保育科を卒業後、市内の幼稚園に3年間勤めた後、出身地である南区の保育園に転職。その後、前々から移住を夢見ていた粟島浦村に引っ越し、昨年の4月からは粟島浦村保育園に勤めています。
「粟島での生活を夢見ていたと言っても、粟島に移住する前は、2回訪れただけでした。しかし、その2回で粟島に魅せられました。1回目は旅行、2回目は毎年6月に行われる「粟島クリーンアップ大作戦」参加のために粟島を訪れたのですが、その時から漠然と粟島に住みたいなと思っていました。クリーンアップ大作戦で海岸清掃をしているときに、「いかにも保育園の先生」といったエプロン姿の女性に「粟島で幼稚園や保育園の先生として仕事をするにはどうすればいいのですか?」と声を掛けてみました。すると、「来年4月からの求人が出ると思うので応募してみたら」と教えてもらいました。しかし、あとから考えてみると、声を掛けた先生が辞めるつもりだったようです。それから、まめに粟島浦村の求人募集をチェックするようになり、現在の保育園への就職が決まりました。」
「粟島浦村保育園は現在1歳から6歳の子供たち、9人を預かっています。私は1・2歳児を担当しているのですが、いつもくったくのない笑顔を私に向けてくれる子供たちがとても可愛いです。また、よく地域の人が作った野菜をいただくのですが、家族で食べる分くらいしか作らず、しっかりと手を掛け、農薬も最小限しか使ってないためか、市販されている野菜より美味しいです。漁業をされている方もいますので、食べ物はすべて新鮮で、とても贅沢だと思います。
粟島で生活して、まだ1年ほどですが、地域全体で子供たちを育てているように感じます。そういう意味では、私も育てて貰っているのかもしれません。」
「昨年の5月にシェアハウスが完成しました。現在は男性3名、女性5名で住んでいます。キッチンやリビングが共有スペースで、個々の部屋がプライベート空間です。最近は季節毎にシェアハウス内でイベントを行ったりして、みんなで楽しく過ごしています。
将来的には長期滞在型のゲストハウスもつくりたいと思っています。若者に限らず、数週間、あるいは数ヶ月間住めるようなゲストハウスを作って、粟島の魅力を肌で感じて貰えるような体験ができる場所を提供したいです。観光の数日間では、味わえない粟島の魅力を知って貰う場になったら嬉しいです。
また、他にも観光で来た人と地元の皆さんを繋ぐカフェもやってみたいと思っています。なんとなく、そこに自然と人が集まってきて、島の人と観光客とが直接触れ合える場所が生まれたら、もっともっと粟島の魅力が伝わるような気がします。
私は島暮らしを始めて、まだ1年も経っていませんが、地域の魅力、粟島の魅力を発信できればと考えています。まずは皆さんに粟島に来て頂いて、島の魅力を感じて貰えれば嬉しいです。」
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