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ニイガタビト

旅する若き養蜂家 【後編】
- 自然と暮らしをミツバチと共につなぐ -

2017.06.21 掲載

後編

はちみつ草野・代表、養蜂家

草野竜也さん

新潟市在住

後編

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Key word

「いのち、しぜん、めぐる。」というブランドコピーを掲げ、はちみつが自然の循環を支える担い手であるというメッセージが共感を呼び、新潟県内にとどまらず、首都圏からも注文が殺到する国産非加熱生の「はちみつ草野」。今でこそメディアに引っ張りだこの草野さんですが、その歩みは決して順風満帆という訳ではありませんでした。

前編では、大学中退、勤務先の倒産など苦労を経てたどり着いた養蜂でもぶつかった壁をご紹介。今回はその壁をどう乗り越え現在に至るのか?養蜂家の仕事内容とともにお伝えします。

養蜂家・草野さんの一年

 養蜂家には3つの稼ぎ方があるそう。はちみつを売る人、ミツバチを育てて売る人、そして農家に花粉交配用にミツバチを貸す人。新潟県は、冬の気温が低く、雪も降り湿度も高く、ミツバチを育てるには条件が悪い。しかし、花の種類が豊富な地域で、いろんな種類のはちみつが採れる地域です。一方、西日本や東日本の太平洋側は気温が穏やかな分、野山に咲く花のバリエーションが少ないため、ミツバチを育てたり、園芸作物を育てるには良い環境ですが、はちみつを採るには適していないと言われています。

 草野さんは現在、新潟市西蒲区岩室を拠点に長岡市寺泊の野積地域から胎内市まで7ヶ所の養蜂場を時期ごとにミツバチたちと共に転々としながら採蜜をしています。採蜜時期は4月~6月末までの3ヶ月。山桜や、藤、菜の花、アカシアなど、花によって同じ場所での採蜜は5日から2週間ほど。取り扱うはちみつは花の種類によって異なる色・味・香りの6種類。一人養蜂家の草野さんは販売や卸売りも全て自分で手がけています。

 7月からは地元・岩室エリアに帰ってきて翌3月までを過ごします。その間はミツバチたちの体調を整えるための環境管理や点検をします。夏になると暑さ対策。天敵のオオスズメバチが増えてくるとその対策。一部は、県内外の農家さんへ花粉交配のために貸出されます。冬の前には防寒対策が始まります。ミツバチの冬越のために最重要とも言える防寒対策は、機能と効率をどう両立させるか?毎年、工夫を凝らしながら冬を迎えます。そして、巣箱の修理や道具の手入れをしながらミツバチとともに次の春を待ちます。

3年目で気づいた「自然に逆らわない」養蜂スタイル。

「7月以降もはちみつは採れますが、私は6月で販売用の採蜜は終わり。それからは夏、秋、そして冬と、ミツバチたちが減らないように飼育する。はちみつを多く採る技術よりも、ミツバチたちを上手に飼育する技術のほうが高度だと実感しています」
そう語る草野さんは、【前編】で紹介したように、養蜂を初めて1年目、2年目の冬は越冬に失敗し、ミツバチを全滅させてしまいました。もともと、理系のエンジニアタイプの草野さんは計画通りに事を進めたい性分だったそう。計画に合わせてミツバチに手入れをし、効率的に養蜂場を周る採蜜スケジュールを組み、段取り良く仕事をしていました。しかし…
「あの手この手で手入れをしていたのですが、何をやってもダメでした。世話をして可愛がっていた蜂ほど死んでしまう。どうして死んでしまうのか、当時は余裕がなく全く分かりませんでした」

 その一方で、人が構わなかった蜂の方が元気に生き残っているのに気が付きました。それを見て、自然の強さを実感したといいます。
「もう、蜂たちに“お前たち好きにしたら?”と、あまり手をかけすぎないようにしました。そうするとちゃんと育つんですね。今思えば、自然を自分の思い通りにしようとしていたのかもしれません。それに気付いてから、大きく変わりました」

 自然と向き合う仕事は、人間があれこれできるものではない。振り返れば「全ての箱の状態を均一にしたい」「このタイミングで採蜜を開始したい」といった、人間の都合でミツバチを世話していたという草野さん。蜂のペースに合わせた手入れに変えたことで、自分なりの飼育技術を見出したのです。

勝負の年に仕掛けた「リブランディング」

 3年目にして、自分なりの飼育技術を身につけたとともに、越冬のための防寒対策でも効果的な方法を編み出した草野さん。4年目にして「やっと養蜂家としてやっていける見通しが立った」と確かな手応えを感じていました。
「はちみつを採る量は増やせる。飼育技術も確立してきたので、管理する箱数も増やせる。年間の必要経費もある程度見えてきた中で、持続可能な事業にするために販路と新しい客層の開拓が必要だと感じました」

 2016年。養蜂家として5年目を迎えた草野さんは祖父から受け継いだ「草野養蜂」のブランドリニューアルに着手しました。一番の狙いは顧客の平均年齢を10歳若くすること。若い人にも受け入れてもらい、より多くの人にはちみつのことを知ってもらうこと。ブランディングの専門家と共に、ネーミングやパッケージを一新し、WEBサイトとネット通販をスタート。さらに、販売価格も思い切って値上げしました。

「自然を相手にする仕事は、良い年、悪い年の差が大きい。その中で継続的に事業を回していくために必要な金額に値上げさせていただきました。周りに理解いただけるか不安はありましたが、結果的には成功だったと思います。プランナーやデザイナーさんなど別業種の人たちとお付き合いできたことも、楽しかったし、自分の幅を拡げることにつながりました」
特に重視したのは共感性。アインシュタイン博士の「ミツバチがいなくなったら、人類は4年しか生きられない」という言葉を引用し、はちみつを楽しむことが自然の循環に参加してもらうことにつながるというメッセージを打ち出しました。結果、若くて感度の高い人たちにも認知度を拡げることができたといいます。

「リブランディングにより今まで届かなかった所まで、声を届けることができるようになった。表に出る機会も増え、今まで伝えたくても伝えられなかった想いを発信できるようになってきました。はちみつを通じてミツバチや自然の循環のこと、自然環境のことをもっと知ってもらえるようにしていきたいです」

自然とともにある仕事をこれからも

 リブランディングという大きな投資をし、満を持して迎えるはずだった2017年。しかし、この年は養蜂家にとって厳しい年なのだそう。
「2016年は秋から天候が良くなく、全国的にミツバチの数が少ないです。たくさん手に入れたくても、買えない状態。今年は例年の半分近い箱数でのスタートなので、収量も少ないことが予想されます」

 ミツバチ自体にも、蜜が採れる花にも、年ごとに当たりハズレが出るのが自然。人が思い通りにできるものではありません。とは言え、ビジネスである以上、結果を出さなければいけない。そんな自然と付き合っていくのが養蜂家の仕事です。この仕事をはじめて6年。養蜂を始めてから草野さん自身の性格も変わったのだとか。
「大学までは、管理したり、思い通りにしたり、型にはまった世界にいました。一方、自然相手の仕事は自分の思い通りにはならない。だからこそ“仕方ないなぁ”と思えるようになりました。心にゆとりができたのかもしれません。人間として優しくなりました」
自分なりの自然体を見つけた草野さん。過去には、なかなかやりたいことが見つかりませんでした。しかし、「心にゆとりができたら、いろんなことがやりたくなったし。いろんなことが楽しくなった」そうです。

 また、これまで培ってきた、エンジニア的な発想も養蜂にはたいへん役に立っているそう。
「自然相手なので、ミツバチの生育には個体差があります。けれど、どこまで良くできるかという最高点をしっかり把握しておくことが大切です。差がある中でも、最高点にいかに近づけられるか?自然に任せてもある程度できるのですが、やっぱりビジネス視点も重要です」
ミツバチの生育と、各地の花の開花状況を見ながらワークフローを計算し、スケジュールを組んでいるそう。大学時代のシステム設計の下地がある草野さんならではの強みです。
「組んだスケジュールは、自然にどんどん書き換えられていくんですけどね(笑)でも、それも楽しみのひとつかもしれません」

 2017年最初のはちみつ「山桜」は、販売告知から約一週間で早くも予約打ち切りとなりました。収量が少なかったこともありますが、自然の循環の中で自然と、暮らしをはちみつによってつなぐ草野さんの想いに共感する人が増えてきたからかもしれません。

「今では、自分にはこれしかないと思えるようになりました」という養蜂の道を、これからもミツバチと共に歩んでいきます。

はちみつ草野へのリンク

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