2025.03.24 掲載
田中 晴樹さん
南魚沼市
◎活動開始
2023年4月
◎経歴
・出身:兵庫県尼崎市
・地元を離れ、島根県壱岐島で高校生活を送り、まちづくりや地域創生に興味を持つ。大正大学地域創生学部へ進学。南魚沼市地域おこし協力隊として活動するため、2023年4月より休学。協力隊としての活動を継続しつつ、2025年春に復学する予定。
◎世帯構成
一人暮らし
中学時代のある出来事が、田中さんに強い影響を与えました。生徒会活動の一環として防災や復興支援に取り組んでいましたが、外部の事情で活動が突然中止に。当時を振り返り、「若者の挑戦を後押ししてくれる環境に身を置きたいと思った。」と語ります。その経験から、若者が応援される環境を求めて選んだ進学先は、地元の兵庫県尼崎市から遠く離れた島根県壱岐島の“隠岐島前高等学校”でした。全国から生徒を募集する「島留学」で知られるこの学校で、田中さんはまちづくりや地域創生への関心を深めていきます。
その背景には、学校と地域を結ぶ「コーディネーター」の存在がありました。「コーディネーターは、人と人、モノと情報をつなぎ、課題解決の架け橋となっていました。その姿に魅力を感じ、私自身も若者の『やりたい』を叶えられる環境を作りたいと思うようになりました。」と田中さんは話します。
高校卒業後、フィールドワークを重視する大正大学地域創生学科へ進学。大学2年次に「一般社団法人愛・南魚沼みらい塾」との関わりが始まります。「それまで漠然としていたコーディネーターの仕事の中身が、愛・南魚沼みらい塾で具体的に理解できました。」と振り返ります。きっかけとなった「愛南魚沼みらい塾をもっと知りたい。ここに身を置きたい」と、大学3年次に愛南魚沼みらい塾が運営する南魚沼ふるさとワーキングホリデーに参加。その後も度々個人的に南魚沼市を訪れました。
2023年春からは大学を休学し、南魚沼市地域おこし協力隊として活動を決めます。派遣先は、活動の決め手となった愛・南魚沼みらい塾です。
愛・南魚沼みらい塾は、地域の中高生とメンターである大学生や地域の大人が協働し問題解決に取り組む地域探究プログラム「YouKeyプロジェクト」や、都市部に住む若者が約2週間南魚沼市に滞在する移住体験プログラム「南魚沼ふるさとワーキングホリデー」、全国の大学生・若者を対象にした起業家教育プログラム「YouKey College」などを運営しています。
田中さんは、これらの企画全般に関わり、広報や参加者サポートを担当。同世代の若者や中高生の考えを引き出し、共に知恵を絞る「伴走する力」を磨いています。「『何がやりたい?』と尋ねても、答えにつまる参加者がほとんどです。直接的な投げかけではなく、『どんな自分になりたい?』『半年後にどうなっていたい?』と問いかけを工夫すると、相手は自分の考えを言葉にしやすいのだなと学びました」。
特に印象に残っているのは、YouKeyプロジェクトに参加した中学生との交流です。「思春期特有の感情に加えて、恥ずかしさがあったのだと思います。その中学生は、自分の考えをなかなか言葉にできずにいました。それが半年間のプロジェクトを経て、堂々と人前で発表したり、自主的な行動を取ったりするようになりました。その姿を目の当たりにして、『僕たちの活動は若者に有益な体験を届けられているのだ』と実感が湧いてきました。」と話します。
南魚沼市には、田中さん以外にも大学を休学し、地域おこし協力隊として活動している隊員が複数人いますが、現役大学生の協力隊員は全国的にも珍しい存在です。田中さんは、キャンパスライフともアルバイトとも違う地域おこし協力隊の日々に、ある思いを抱いています。「大学を休学していますが、『休学』という表記にすごく違和感があります。私たち協力隊員の活動を経験すると、『究学』が適していると思うのです。それほど、何かを極めたい、挑戦したいとい強く思い、行動するメンバーに囲まれています」。
高校時代から憧れ続けたコーディネーター役として、若者に寄り添い続けた2年間。活動1年目は、「愛・南魚沼みらい塾の一員として多くを経験し、人脈の広がりを感じ2年目はより覚悟が強くなりました。これまでのつながりから何を生み出せるのか、南魚沼市に還元できるものは何なのかを模索する期間でもありました。」と振り返ります。
3年目の任期を終えた後は、起業することを視野に入れ準備を進める田中さん。「現状は具体的になっていないことが多いですが、来年は起業に向けた準備ができる1年にしたい」と田中さんは意気込みます。「新しいことへ踏み出そうとする人にとってのロールモデルでありたいと思っています。前例がないから『怖い』と感じる気持ちを少しでも安心させられる存在でありたい。そのために南魚沼市で挑戦をしています」と語ります。