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地域おこし協力隊インタビュー

若い人たちが戻りたくなる街・三条に
- 建築家としての経験を生かし、空き家問題に挑戦! -

2024.11.05 掲載

佐藤 芳和さん

三条市

◎活動開始
 2022年8月
◎経歴
・出身:新潟県三条市(旧下田村)
・三条市下田地域で生まれ育ち、東京の大学で建築や都市計画を学んだ後、設計事務所に就職。7年間の間に住宅リノベーションや公共建築の設計、書籍編集、都市再生事業などを手掛ける。建築家として独立し設計事務所を立ち上げたのち、15年ぶりにUターンし、三条市の地域おこし協力隊に着任。市の空き家対策に従事しながら、一般社団法人燕三条空き家活用プロジェクトを設立。行政と民間を繋ぎながら、地域の空き家活用を通じてエリアの活性化に尽力している。
◎世帯構成
 祖母と両親の4人暮らし

「いつかは地元へ」30代で訪れた協力隊という転機

 大学卒業後に就職した建築設計事務所での7年間の経験を「建築設計だけでなく、都市設計も手掛ける事務所で、まちづくりへの興味や手法を学ぶ大きなきっかけになりました」と振り返る佐藤さん。独立後も仕事は充実していましたが、立場やライフスタイルに悩みが生まれていました。特に、長男という役割や、仕事のために全国どこへでも足を運ぶスタイル、ワークスペースに場所の制約がないことから、「東京での生活は楽しかったのですが、ここでずっと仕事を続けることに必然がありませんでした。地域に入っていき、建築を考えたいという思いもあり、いずれは新潟と東京の2拠点で働けたらと漠然と考えていました」と語ります。
 Uターンのタイミングは思いのほか早く訪れました。事務所設立から1年ほど経った頃、出身地である三条市で地域おこし協力隊の募集が始まったことがきっかけでした。地域に飛び込み、人とのつながりを作ろうとエントリーを決意。33歳で三条市の空き家対策を担う地域おこし協力隊に着任し、三条市役所の空き家相談窓口での活動が始まりました。

県内でも注目の、空き家対策の中心に

 佐藤さんは三条市の「空き家相談員」という肩書きで、東京の不動産会社から出向してきた「特命空き家仕事人」の熊谷浩太さんとともに市の空き家対策に従事します。まず力を入れたのは、三条市が運営する地域の空き家情報を集約したオンラインサービス「空き家バンク」の周知です。三条市内には推定4,590戸の空き家(総務省 令和5年住宅・土地統計調査)があるとされていますが、空き家バンク登録件数は佐藤さん着任前の2021年度まで10数軒程度に留まっていました。そこで、チラシの配布やポスター掲示、関連する業界団体への働きかけ、セミナー、空き家ツアーなどを継続的に行っていったところ、問い合わせや空き家バンクへの登録が増え、2023年度には登録軒数が101軒に増加。新たな所有者との成約数も増え、メディアにも取り上げられるなど、県内でも注目を集めるようになりました。

若者たちが集う地域の複合交流拠点を作る

 また、佐藤さんは地域おこし協力隊としての活動の一環で、熊谷さんと同世代の地域プレイヤーたちとともに、着任からわずか3ヶ月後に「一般社団法人燕三条空き家活用プロジェクト(以下「空活燕三条」)」を設立しました。
 空活燕三条として、シェアテナント/キッチン、移住体験のゲストハウス、移住者住宅を含む地域の複合交流拠点「三-Me.(ミー)」の運営にも取り組んでいます。三-Me.はもともと空き家で、オーナーからの相談を受け、佐藤さんら空活燕三条がの企画プランニングから内装設計等を手掛け、管理・運営もおこなっています。2023年のオープン以降、三-Me.はアクティブな若者たちがひっきりなしに集う施設として地域に定着しています。
 この取り組みは、佐藤さんの過去のキャリアが色濃く反映されているといいます。「設計事務所勤務時代に、東京郊外のニュータウンにある古い住宅を、人が集うように住宅・ワーキングスペース・シェアキッチン機能が組み合わさった建物にリノベしました。まさに今の三-Me.と同じ。あの時の経験は複合交流拠点という考え方に少なからず影響を与えています。」と振り返ります。佐藤さんは現在もオフィス設計など、建築家としての仕事も並行してこなし、忙しい日々を送っています。

地域を知り、自分を知ってもらうことが活動の第一歩

 着任前の経験も存分に生かした、まさに佐藤さんだからこそできる解決策で地域の課題に取り組む日々。「振り返ると、まずは自分が何者であるかを知ってもらうことが重要だったと感じます。積極的に行動することで、多くのつながりが生まれました。自分の動きが街の動きに直結し、それが目に見える形で反映されていくことは、大都市で働くよりも実感が得やすく、魅力に感じています」
 学生時代に三条で過ごしていた友人の多くは市外や県外に出ましたが、Uターン後に仕事を通じて知り合った友人たちは、ビジネスを超えた関係になっているとのこと。新たな友人と遊んだり、三条市や新潟市の書店を巡ったり、映画を観たりと、生活面でもストレスなく充実した日々を過ごしています。また、祭や凧(いか)合戦などの地域の伝統行事にも積極的に参加しているそうです。

三条市を、若い世代がUターンしたくなる街に

 進学・就職で一度は地元を離れ、Uターンして改めて三条市を見た佐藤さんが感じたのは「プレイヤーの多さ」です。「若い世代が頑張っていて、商店街には魅力的な店舗が増えています。また、ものづくりのまちなので、そういったプレイヤーたちと早くから出会えたことで、組織を立ち上げたり、活動を活発に展開できました」
 2年間の活動で見えてきた佐藤さんが次に注目している地域課題の一つは、三条市における空き家活用物件の少なさです。移住希望者が増えているにも関わらず、活用が追いついていない。空き家をリノベーションして魅力ある物件として再生し、貸し出す体制・流れを整えることで、「お試し移住」を通じて三条市の魅力を知ってもらい、本格的な移住へとつなげることを目指しています。成功事例をつくって発信し、取り組みが広がっていけば、前向きに空き家を任せてもらえるようになり、次のステップにつながると考えています。また、三条の中心市街地エリアはポテンシャルがあるので、もっと魅力的にできるのではないかと感じており、今後も建築やまちづくりのキャリアを活かして三条市に関わっていきたいと考えています。「若い世代には積極的に県外・国外に飛び出して、色々な世界や考えに触れてきてほしいと思うんです。そして、経験を積んだ彼らがまた戻ってきたくなるような魅力あるまちづくりに携わることが、今の自分がなすべきことだ思っています」

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