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地域おこし協力隊インタビュー

想いをカタチにする
- 見ず知らずの場所で暮らし、1から創ること -

2022.03.15 掲載

石坂 優さん

新潟県三島郡出雲崎町

◎活動開始 
 2020年7月~
◎経歴
・大阪府堺市出身、愛知県名古屋市育ち
・兵庫県の大学を卒業後、名古屋でマーケティング業界の企業に企画ディレクターとして就職。入社数年後からは本に携わるため土日は書店でダブルワークをはじめる。就職から4年半後、東京でブックディレクターに転職。その後、2020年7月から地域おこし協力隊として出雲崎町へ。
◎世帯構成
 ひとり暮らし

本の未来を明るくしたいという夢

 関西学院大学の社会学部で大学時代を過ごした石坂優さん。
 「大学を卒業して就職したのは、企画ディレクションを行うマーケティング業界の会社。企画ディレクターとして、紙やウェブをはじめ、さまざまな媒体でお客さまのニーズに応える企画を提案、制作していました。そんなとき、〈本の未来をつくる仕事/仕事の未来をつくる本〉という一冊に出会いました。いろいろなことに携わることは楽しくもありましたが、結局何も極めることができないのではないかと自分に悶々としている、ちょうどそんなタイミングでした。本の未来を考えさせてくれた一冊に出会ったことで、自分はすごく本が好きであるということに改めて気がついたんです」。
 「これをキッカケに“本”の置かれている現状を学びはじめると、スマートフォンの普及や電子書籍の登場などにより、紙の本の未来が明るくないことを知りました」。大好きな本には絶対になくなってほしくない、本の未来に携わる仕事がしたいとぼんやりと考えるようになり、まずは本の仕事の現場を自分の目で見て体感し現状を知りたいと、石坂さんは週5で会社に勤務する一方で、書店でのアルバイトを開始。本の未来に携わりたいという気持ちが一層強くなっていったそうです。

気が付いたら目の前にあった道

 この後、会社と書店で休みなく働く石坂さんの体は悲鳴をあげます。本の仕事がこんなにもやりたいことならまずはやってみようと、仕事は好きだったけれど会社を辞めることを決意したそうです。
 「とりあえずは書店のアルバイトでなんとか生活はしていける。とにかくキャリアを好きなことに振り切ろうと考えていたタイミングで、“それならうちに来ないか”とずっと憧れていたブックディレクターの仕事に誘っていただいたのです。何かを手放すと生まれた余白には新しいものが入ってくると本にも書いてありましたが、導かれているのかと思いました」。
 2019年10月、憧れの職業・ブックディレクターとしての新生活が東京で始まりました。しかし、仕事が身に付けば身に付くほど、同じようなことを自分自身でやりたいという気持ちが大きくなります。そんな中、知人のSNSで偶然目にしたのが、〈出雲崎を楽しむ、遊び人を募集します!〉の文字。何気なくその知人に連絡を取ってみると、あれよ、あれよという間に来県することに。これが石坂さんにとって、人生初の新潟県でした。翌日にはせっかく来たのだからと、半ば流れで地域おこし協力隊の面接まで受けてしまったそうです。
 「本のある空間を作りたいです、作れます!面接でこのことを強く伝えていました(笑)」。
次のステップに進むことを決めた石坂さん。退社の直前、面接のわずか一週間後に地域おこし協力隊の採用通知が手元に届きます。

想いをカタチにするまでの軌跡

 2020年7月に出雲崎町にやってきた石坂さん。ここから濃密な時間が始まります。まずは町営施設などへ赴き、職員の方にご挨拶。本のセレクトとPOP書きをして本のコーナーを作りたいと懇願し、本に関する活動をはじめることを町全体にアピールしはじめます。
 「そのさながら、町内で図書館になりそうな場所を探しました。そこで目についたのが、蔵でした。役場から蔵での図書館づくりの許可をもらってからは、何十ページにも渡る企画書を作ってプレゼンしたり、未来日記のようなSNSを立ち上げて情報発信を行ったり……。正直心が折れそうなことも何度もありましたが、“これをやらなかったら出雲崎町に来た意味がないじゃん”と自分を鼓舞しながら、這いつくばりながら、周りの方に助けていただきながら……」。
 2020年12月、着任して半年ほどのタイミングで念願だった空間をオープンさせます。
 〈蔵と書〉と名付けられたその場所には、最初はお金も本もまったくない状態だったので、町の図書館から一時的に借用した本、石坂さん所有の本、周りの人達が寄贈してくれた本など、さまざまな経緯で集められた本が列び、まだまだ数は少ないながらもようやく図書館のような空間となりました。
 「本当は準備にもっと時間をかけて、2021年の夏ごろにオープンしようと思っていました。本をバァーって、しっかり揃えた状態で、って。でも、この空間はそうじゃないんじゃないかなと途中から思うようになりました。この場所を利用するのはお年寄りから子どもまで幅広い。本の寄付を募りながら、開館するたびに本が徐々に増えていくような、みんなで少しずつ創っていく空間でもいいんじゃないかって思い、方針を切り替えました」。
 オープン当日は町内外から多くの人が来館。その後は、週に1回程度開館し、定期的に本を増やしたり、季節によって並べ替えたり、いろいろなことを企画したりもしているそうです。

蔵と書のInstagramへのリンク

縁もゆかりもない知り合いゼロの町で

 そんな石坂さんの趣味のひとつがランニング。移住当初は一人で海沿いを走っていたそうですが、町の方に声をかけてもらってからは、みんなで一緒に走るようになったとか。
 「わたしが走っていることを知って、地元のランニングチームの方が一緒に走ろうと誘ってくださいました。水曜日の夜はわたしの親世代の方々と一緒に町を走ります。このランニングの時間はわたしにとって、町のことを教えていただいたり、些細なことでも相談できたり、辛い時も笑顔になれるとても大切で大好きな時間です」。チームのみなさんと、週末に県内各地のマラソン大会に出場したりもしているそうです。
 また、道を歩いていて通りがかりでお声がけいただき話していたらお野菜をたくさんいただいたり、「いつでもコーヒー飲みにこいよ」と言っていただき冬はコタツにお邪魔してお話しするご近所さんがいたり、「優ちゃんを連れていきたい場所があるの!」と、お店や観光地に連れて行っていただいたり。「食べ切れないからあげるよ」と、おすそ分けをいただくことも。町のみなさまのあたたかさに支えられて、縁もゆかりもなく知り合いゼロだった町がとてもあたたかい場所となり、たくさんの人に支えられて、今では楽しく生活しているようです。

夢の始まり

 新しく生み出した〈蔵と書〉とともに前進を続ける石坂さんに今後のことを聞いてみました。
 「本もだいぶ増えてきましたし、理想のカタチにはだいぶ近づきつつあります。これからはどれだけ面白くしていけるかが勝負かなって思っています。最近では、ほかの協力隊の方とコラボをしてオリジナルのブックカバーを制作したりしました。周りの方を巻き込みながら新しいものを作る、そんなフェーズに入ってきている気がしますね。それに、毎月来ていただける常連さんや、町外から来てくれる馴染みの顔も増えてきたのもうれしいですね。そういえば、つい最近すごく感動したことがありました。ちょうど歩けるようになったぐらいのお子さんとそのお母さんが来館してくれたときのこと。わたしがお子さんと戯れていたら“実は去年、わたしのお腹が大きいときの最後の外出先が〈蔵と書〉だった”とその子のお母さんに言われたのです。お腹にいた子が歩けるようになるくらいまで、わたしは〈蔵と書〉をオープンしてきたんだなって。自分の中で感動しました。それから、〈蔵と書〉ができたことを知り、どんなところか見てみたいから出雲崎に初めて来ましたという方がたくさんいらっしゃることも、協力隊としてのミッションを達成できているなと実感できてうれしいです。町の関係人口を増やすことが、わたしの協力隊としてのミッションなので」。
 また、これから協力隊を志す方にメッセージなどがあれば・・・。
 協力隊の制度は、それがその地域のためになれば、夢を叶えたりやりたいことをカタチにするためのひとつの手段にもなり得ると思っています。ただ、田舎に来たら必ずしものんびりあたたかく過ごせるわけではないし、慣れない土地で暮らすことには見えない苦労がつきものです。それでも、それらの経験が必ず今後生きていくうえでの糧になることは間違いないと思っています。誰かの夢や、やりたいことと、地域の課題や求めることがマッチした時に生まれる奇跡が日本中でたくさん起こり、小さな町や村が活性化していけば、面白い未来が待っているのではないかと思います。
 自らの強い想いを〈蔵と書〉というカタチにし、本の未来を明るくするための新たな道を踏み出した石坂さん。地域おこし協力隊の制度を通じて、石坂さんの夢を叶えるための旅は続きます。

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