2008.11.20 掲載
県内には、手つかずの大自然でもなく、人工的な街でもなく、自然と人間が共生した「里山」地域が数多く残っています。
里山は、多種多様な生き物が生息していることから、動植物の格好の研究フィールドであり、生きた理科教育の場として注目されています。また、自然と折り合いを付けながら培ってきた生活の知恵を次代へ伝える教室であり、身近な遊びの場として大人から子どもまで気軽に楽しめる場でもあります。
そんな里山を活動拠点として、研究し、遊び、教える人たちがいます。
「あっ!何か動いている!!」
「これはクロスジギンヤンマのヤゴですね」
「えー、どうしてわかるんですか?」
「ほら、この口の先が尖っているのが特徴なんです」
子どもだけでなく大人まで夢中になって、虫をすくい上げようと池の中に網を入れています。
これは、『十日町市立里山科学館 越後松之山「森の学校」キョロロ』が実施している里山探検「森と田んぼの生き物」のヒトコマです。
案内しているのは、キョロロの学芸員であり工学博士の永野昌博さん。福岡に生まれ、横浜の大学・大学院で土の中の甲虫を研究。その後、すぐに虫が採れる所に住みたいとの願いが叶って、2003年のキョロロオープンの年に松之山へ移住しました。
「とにかく松之山は生き物が多い。虫の種類も相当なものです。水辺と森がセットになっている里山ならではですね。大自然なら生き物が多いかというと、そうでもないんです。このあたり全てが研究フィールドですから、研究者仲間からはうらやましがられています」
平日は十日町市内の小中学校で年100回ほど総合学習の時間を持ち、土日はフリーのお客様が参加できるプログラムを行うなど、多忙な毎日を送っている永野さん。
自分の研究の時間が短くなってしまうことに対しては、「研究も大切ですがそれだけでは物足りません。一緒に里山探検していると、知らないことを発見できたりもしますし、生き物を捕まえていくうちに夢中になっていく子どもたちの姿を見るのは楽しいですよ」
現在、キョロロには昆虫、植物、きのこを専門とする5人の学芸員が勤務し、さまざまな学習プログラムが組まれています。
多種多様な生き物が生息するフィールドと一流の講師陣を擁する十日町は、子どもたちにとって抜群の教育環境なのです。
「キョロロがオープンしてから1~2年は、暗中模索で自分のできるプログラムだけをやっていました。でも地元の人たちと親しくなるにつれ、生活の知恵はもちろん、植物のことなど地元の人たちの方が詳しいことがたくさんあることに気づきました」と永野さん。現在は、地元インストラクターの方々からもプログラムに参加しもらっています。
さらに「里山のめぐみ案内人の会」を組織し、様々な体験ニーズに応えようと体制づくりも行っています。
キョロロを核として地域全体が学びの場としての存在感を高めています。交流・定住先としても新潟の里山は大きな可能性を秘めています。
新潟市秋葉区の秋葉山。山全体が「秋葉公園」となっており、市民の憩いの場になっています。その公園の一角にある第二キャンプ場に集まる人たちが「秋葉山自遊会(あきはやまじゆうかい)」です。
新潟市の公園里親制度によりこのキャンプ場管理のお手伝いをしており、メンバー自らアウトドアを楽しむほか、地元の子どもたちを積極的に受け入れています。「秋葉山自遊会」代表の原淳一さんに話を伺いました。
Qどんな活動をしていますか
A最近子どもたちが遊ぶ場所が少なくなってきていますよね。子どもが元気に遊べる山をつくりたいとの思いから集まった仲間が「秋葉山自遊会」です。
月1回10人程のメンバーが集まって森林の手入れをしたり、手作りの遊具をつくったり、木登りをしたりして楽しんでいます。
地域の子どもたちからも里山でもっと遊び学んでもらいたいと思っていたところ、地元金津中学校の総合学習のニーズとぴったりと合ったので、1年生から3年生の子どもたちと「総合学習IN里山」として、今年は20回のプログラムをつくって、さまざまな体験してもらっています。
このほか、年に1、2回イベントを共催しています。先日は、地元のテレビ局とタイアップして、ごみ拾いや森林整備のほか、ツリーハウスをつくりました。
Q今後の活動予定は
A日本のツリーハウスづくりの第一人者・小林崇さんとは親しくさせてもらっています。この秋葉山をツリーハウスのメッカにしたいですね。ツリークライミング(木登り)もやっていますが、ギア(道具)も服装もキチンとして、大人が素敵に遊んでいる姿を見せれば、子どもたちも憧れると思います。ひいてはそれがふるさとの誇りになればと考えています。
それから、里山の資源を循環させるために木質ペレットを利用していきたいと思っています。車載型の木質ペレット製造機などを活用し、バーベキュー用のペレットコンロも新潟で開発製造されていますので、森の手入れをして出た間伐材や木くずを木質ペレットにして使えば環境への負荷が少なくなります。県内にはアウトドア用品のメーカーが多いので、まずその様なところから利用が増えていけばと思います。需要が増えれば様々な自然に関わるインストラクター等の活動も増え、森林体験で森に興味をもった子どもたちの将来の受け皿にもなります。
そうしたことを見据えて、秋葉山を環境教育の拠点にしたいと思っています。
このページをSNSで共有する