2009.12.16 掲載
曽我農園 トマト生産者
曽我新一さん
31歳 新潟市
新潟市出身。東京農業大卒業後、アメリカ、セネガル、フランスなど数々の国へ渡る。帰国後、実家の「曽我農園」を営む傍ら、学校での食育活動にも勤しむ。昨年「がちんこ農業生活」を出版。新聞や農業雑誌にコラム「ファーマーズハイ」を連載中。
新潟に戻ろうという強い気持ちはありませんでしたが、セネガルから帰国した際に、勢いで「事業継承します」と言ってしまいました。両親も高齢になったなと、ふと感じたのかもしれません。その後、農業大国フランスの現場を知りたくて渡仏。そこで出逢った農場の女将さんに「コンプレックスは隠さず、オープンにした方がよい」と助言を受けました。その言葉は、日本に帰ってからの自分と農業との向き合い方に大きな影響を与えたと思っています。農業の実態を包み隠さず、本やブログで発信するようになりました。
農業は生き物商売ですので、途中で投げ出すことができません。管理し続けないと、特にトマトは商品として売り物にならないんです。だから、休みもとりづらいですし、旅行するにしても誰かに仕事を頼まないといけない。これは心配というよりはこれからの課題でもあります。また海外と日本の感覚にギャップを感じたこともありました。状況によりますが日本では自分の意見や考えを正直に言うとよく思われないことがあります。特に高齢者の多い地元では歓迎されないことです。それで度々喧嘩になったこともあります。今はようやくコミュニケーションの取り方に慣れて、うまい具合にできていると思います。どこの地域でも適応するっていうのはパワーのいることだと思いますね。
夏場と冬場でやることが全然違いますね。夏は午前2時起きて、夕方まで働いたり。冬場になると1日6時間位だったり。農業を営む際に私が工夫していることは情報発信の部分です。新潟で働くことや農業にコンプレックスを持っていたのですが、そういうところも積極的に表現しています。また、ブログなどを通じてどんどん自分をコマーシャライズし、それを付加価値として商品を売り込んでいます。これまで生産者のキャラクターを全面に押し出して商品を売っていくと言うことは農業分野ではなかなかなかった動きだと思います。後は試食を出して食べさせる。うまくて値段がその価値に見合っていればリピーターさんは確実に増えます。偉そうなこと言いましたが私はトマトが食べれません(笑)。
インターネットや読書、後は買い物が多いですね。ただ、夏場は繁忙期なのでなかなか休みがとれません。
オススメのお店は北区太夫浜にある「BAKERY CAFE エミタイ 」。青年海外協力隊の先輩がやっているお店で、ここのパンを食べると他のが食べれなくなります。
枝豆の収穫期など仕事の忙しい時期は地域の人たちが無償で手伝ってくれるのですが、ここには助け合う風土があると思います。一度入り込んでしまえば近所の方はほんとに優しいですね。
あと、こちらからのブログ、新聞記事に対して反応があるのもうれしい。情報発信が一方的なものでなく、双方のコミュニケーションになっているのもいいですよね。
自分をコマーシャライズして、自分がやることに付加価値をつけていければいいですね。needs(ニーズ)をwants(ウォンツ)に変えていく努力が求められていると思います。情報発信はこうした理由もあって続けています。
常に周りの環境は変化し続けています。一つの方法論に執着しないで常に「適応」していける「柔らかさ」が大事だと思っています。思考停止しないで今何が必要か考え続ける。自分の考えるゴールを設定し戦略をたて、あとは波乗りのように実行していく。今のところ私にとっての農業はそんな感じです。ギリギリ喰ってますけど(笑)。
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