2010.03.24 掲載
山上染物店 14代目
山上あづささん
41歳 村上市
村上市出身。京都府内の専門学校で織の技術を学ぶ。卒業後、同府内の工芸作家に弟子入り。平成5年に村上にUターン、江戸時代から13代続く伝統を守りながら、新しい作品づくりを続ける。
実家の跡を継ぐため、染物の技術を学ぶ必要がありました。京都は西陣織(にしじんおり)、友禅染(ゆうぜんぞめ)など、繊維関係の産業が集まっていますので、京都の専門学校で勉強をしながら腕を磨きました。卒業後も京都の作家さんに弟子入りし、修行を重ねていました。
人生設計を立てて、地元に戻る時期を決めていたのですが、自分の技術がまだまだ未熟だったので、実家に戻って自分に何ができるのか、もう少し腕を磨いたほうがいいのではないかという不安を感じていました。家業をついでからも精進する毎日ですが、製品を生み出す苦しみを味わいながら、仕事にやりがいを感じています。
のれんやはっぴ、手ぬぐいなどを染める印染(しるしぞめ)を主に手掛けています。たまにTシャツも作りますね。また、村上はお茶が有名なので、茶葉を使った草木染(くさきぞめ)という手法を用いて商品開発をしています。村上茶を使った茶染は、お茶屋さんから商品にならない細かい茶葉をゆずり受けて行います。この手法は私の父の代から始めたもので、伝統を守りながらも、新たな商品開発に取り組む姿勢を大事にしています。
仕事である以上責任を持って行いますが、未だに自分が作った製品で満足したことはないですね。仕事ぶりを振り返るといつもたくさんの反省点が出てきますが、反省を生かすことは向上心につながります。「責任を持って取り組むが、自信は持たない」というのでしょうか。表現は難しいですが、そのような心構えで仕事に励んでいます。
私の住む村上は、城下町らしいまちなみがあって、町屋づくりのお家に出会えて、村上人の人情に触れることができる地域です。そういったことを含めた村上の風情が自慢だと思っています。
今でこそまちの自慢を語れますが、京都での暮らしを終え、村上に戻ってくるまでは全く気づきませんでした。村上を訪ねてくるお客様にこのまちの魅力を教えてもらって、初めて村上の魅力に気付かされましたね。
また、村上には3つの「さけ」があります。1つは三面川の「鮭」、もう1つは酒蔵の「酒」、そして村上人の「情け」。この3つの「さけ」も、村上の宝物ですね。
新潟県のどの地域でも魅力は必ずあります。是非探して楽しんで欲しいですね。それが私の場合は、町屋巡りだったり城下町の風情を楽しむことだったりするのですが、違う場所で異なる楽しみ方を見つけることもできます。自分なりに新潟の楽しみ方を見つけることができれば幸せなことだと思います。
新潟に転勤してきた人は3回泣くと言われています。1回目は転勤したての時に地域の仲間に入れなくて。2回目は仲間に受入れてもらったとき、人々の人情深さに。3回目は赴任地から離れるとき、新潟から離れ難くて泣いてしまう。新潟の懐はとても深いと思います。
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