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ニイガタビト

人・情報・縁が集まる『ひょうご屋』

2016.11.09 掲載

vol3

佐渡市地域おこし協力隊

熊野礼美さん

vol3

 兵庫県出身。大学卒業後、関西を中心に日本語教師や教材販売の営業など忙しいながらも充実した日々を送る。趣味は登山。その登山がきっかけで2014年5月初めて佐渡へ来島。その年、佐渡市地域おこし協力隊に応募し、晴れて隊員として佐渡に移住。夫と共に暮らし始めて、早1年半。佐渡暮らしの仲間が増えるといいな、という思いで、暮らしや日々感じることなど書かせていただきます。どこかの誰かの佐渡暮らしの参考になりますように。

前回は、地域おこし協力隊としての仕事や新天地に降り立って思うことを書かせていただきました。
今回は、手に入れた空き家!「ひょうご屋」の改修とその利用について、お話しようと思います。

草とイタチゴッコ

 高校を卒業してから親元を離れ、アパート暮らしをしていました。これから先、アパートかマンション暮らしだろうなぁと思っていたのに、佐渡でまさかの一軒家暮らし。しかも築70年の広い家をお借りすることになりました。
 大きな一軒家での暮らしは、家の管理や草刈りなど初めての体験ばかりです。広い庭の草刈りは1度で済むはずもなく、刈ったと思っても季節が変わると種類が変わり、また育ちます。人生初の草刈りは、鎌と刈払機を手にイタチゴッコを繰り広げた夏でした。

私の生活を変える空き家を手に入れた!

 素晴らしい佐渡建築の話は前回触れましたが、現実は空き家が目立っています。残念なことに住む人を失った家はどんどん朽ちていき、「どうにかならないか?」と人に言って回っても「古い家を使えるようにするのは大変だよ。」と言われます。次第に私は、「みんなが言う『大変』ってどんなもんだろう…。」と思い始めました。
 そんな時に出会った1件の空き家が、その後の私の生活を大きく変えることとなりました。空き家調査で出会ったその家は、外観はトタンの錆に覆われ、「いかにも空き家」な雰囲気。しかし引き戸を開けると、使い込まれた美しい木が現れ、建てられた頃にタイムスリップしたようでした。ふすまはレトロな絵柄で、洗面台タイルの色の組み合わせもかわいい。「ここだ!」そう思った私は、「はい、買います。」と手を挙げました。

隊員的空き家レポへのリンク

空き家再生は希望をもたらす

 購入した家は「兵庫屋」という屋号を持っていました。兵庫県出身の私にはまさに運命を感じる名前です。
 昔の家はどこも冠婚葬祭を自宅で行なっていたので、兵庫屋も例外ではなくたくさんの食器が出てきました。「こんなにたくさん要らないんだけど…でも勿体ないし、どうしよう。」そう思っていたら、同じ悩みを抱えた友人が、「うちも空き家からたくさん着物が出てきて困ってる。どうしよう…。」その時、「じゃあ一緒に何かやろう!」と思い立ちました。タイミングよく開催される地元のイベントに便乗し、それぞれの空き家から出た逸品たちのガレージセールを行うことにしました。
 その名も「古民家☆デパート」!名前からしてワクワクしそう。兵庫屋のご近所の方も「15年空き家だった家に人が入って何かやってる。」とワクワク。「空き家に明かりが点くこと」が、これほど地域の人に喜ばれるとは思ってもいませんでした。大袈裟にいうと「希望をもたらすことが空き家再生にはできる」そう思いました。
 「古民家☆デパート」の当日は、6人の友人が自分たちの空き家から出たものや手作りの雑貨を持ち寄りました。10時オープンにも関わらず、8時半頃にはご近所の方たちが偵察にやってきて、兵庫屋の昔話などを聞かせてくれました。午前中だけで40~50人は来られたでしょうか。知り合いやご近所の方だけではなく、Facebookページで配信していた兵庫屋の空き家改修の様子を見て、来てくださった方もいてびっくりしました。そして15年間空き家だった兵庫屋は、この日「ひょうご屋」として蘇りました。

ひょうご屋Facebookへのリンク

『大変』から始まる暖かい関係性

 ひょうご屋で、数々の素晴らしい出会いに巡り合いました。
 たくさんあった食器を見て「わぁ、レトロ!」と、喜んで持って帰ってくれる人がいる。古畳をヤギの運動場にと、もらってくれる人がいる。廃材を薪ストーブにと、引き取ってくれる人がいる。解体・壁板打ち・床張り・塗装など、一人でやれば『大変』な作業を「おもしろい!」「やったことのない体験!」と楽しんで手伝ってくれる人がいる。みんなの言っていた『大変』が費用であったり、労力であったり、時間であったり…様々なことを体感しています。けれど、お金の関係性だけではない暖かい関係性がここにはたくさんあります。コミュニティの強さ、それも含めて「佐渡暮らし」だな、と感じます。

佐渡市地域おこし協力隊ブログへのリンク

佐渡は自分自身をレベルアップさせてくれる

 草刈りもそうですが、佐渡で暮らし始めてから自分がレベルアップしたように思います。今まで手にしなかった刷毛・バール(テコとして利用する鉄製の棒の大工道具)・げんのう(打面が2つある金づち)・のこぎりなどの工具。その使い方を知る度、こういった自力で生きていくための知識は今までの暮らしでは得られなかったことだったなと思うんです。そして自分自身もレベルアップし楽しんでいるけれど、同じようにひょうご屋をきっかけとして、『大変』を楽しんでくれている人がいることがとても嬉しいです。
 このコラムが掲載される頃も、人・情報・縁が集まる場所「ひょうご屋」は、レンタルキッチン・コワーキングスペースを備えたシェアスペースにしようと引き続き改修中です。そして佐渡暮らしを楽しんでもらえるよう、移住の相談もこのひょうご屋で行っていきたいと思っています。
 次回は最終回、「田舎には仕事がない?地域の困りごとを仕事にする!未来に続く仕事づくりを目指して」というお話をします。

ひょうご屋へのリンク

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