2015.10.16 掲載
佐渡農業協同組合
本田虹子さん
生まれ育った地域。そこでは当たり前のことが、実はかけがえのないこと、宝物だったと、外にでて初めて気付くこともあります。
今回は、佐渡農業協同組合のJAバンク窓口業務を担当する本田虹子さんから、首都圏で生活して気付いた佐渡の魅力や、佐渡での暮らしぶり、郷土愛などについてお聞きしました。
※※写真は、現在の住まいである古民家の床の間
佐渡市出身。神奈川県内の大学へ進学・卒業後、東京都内で就職。何もないと思っていた佐渡には何でもあると気づき、JA佐渡に就職を決めてUターン。温泉や古建築・骨董品を愛し、温泉ソムリエと古民家鑑定士でもある。
「Uターンを意識したのは、勤務先の契約期間が終わりに近づき、次の生き方を考えたときです。自身の価値観を見直し、好きなこと・やりたいことを書き出してみました。温泉、海や山、おいしい食べ物、古美術や古建築。
なんだ。すきなもの全てが佐渡にある。昔は何もないと思っていた佐渡には、何でもあると気づきました。」
「Uターンを考えはじめたのですが、仕事や車の運転、将来の不安などから、迷いはありました。そんななか、佐渡の情報を求めて訪れたネスパスで「にいがた暮らし相談窓口」に登録。新潟へ移住した先輩との交流会の案内があり、相談できるいい機会だと思い参加しました。そこで、“不安があるのは、どこにいても同じ”という先輩の言葉をもらい、まさにそうだと気付きました。先輩移住者のパワーを感じましたし、背中を押してもらいました。
その後、前職の在職中に佐渡での就職活動や家探しを始め、晴れてUタ―ンが決まりました。」
「地元であり、これから暮らす島。佐渡をよりいいところにしていきたい、地域のためになることがやりたいとの思いから、JA佐渡への就職を決めました。佐渡におけるJAは、営農、金融の他にも、ガソリンスタンドやスーパー、車両整備なども行っており島のライフラインの一翼を担っています。微力ながら、地域住民の生活を支える仕事に誇りを感じます。
職場の農業体験研修では、佐渡の生きものを育む農法や高品質の農産物の素晴らしさを再発見しました。佐渡は世界農業遺産(GIAHS)に認定されており、生物多様性農業や景観の保全、鬼太鼓や薪能などの農村文化も大切にされています。その取組みを目の当たりにし、郷土への誇りも高まりました。また、研修でお世話になった農家の方の“農業をやることは、家族、地域、佐渡を考えること。地域との調和と連携が大切。”という言葉が大変心に残っています。」
「現在はJAバンクの窓口業務を担当。お客様が同じ島民であり、誰かのお知り合いや親戚だと思うと自然と、親身になって寄り添いたいという気持ちになります。今後は食や農に携わる業務にも興味があります。」
「首都圏での生活は、観劇などの趣味は楽しめていましたが、季節を感じることがなく、どこか不自然さを感じていました。
佐渡では、空気や花や緑で季節の移ろいを感じます。通勤中や家の窓から見える景色でも身近に四季を楽しめる。食生活も豊かで、いつでも新鮮さと旬を味わえます。自宅の敷地内で山菜が採れたり釣った魚をすぐに食べたりと、自然の恵みに改めて感激しています。また、仕事帰りの星空は見事ですし、電灯がなくても、月明かりが玄関を開ける手元を照らす。佐渡では小さな幸せを積み重ねていけます。」
「そして、憧れの古民家暮らし!
温泉が大好きなのですが、名湯には歴史ある木造建造物がつきもので、自然と懐古趣味に。関東でも古民家を探したのですが、希少性もあり価値を感じる方が多く、高価格のため諦めていました。ところが佐渡では、趣のある古民家が手の届く価格で借りることができました。憧れの暮らしができることもUターンの決め手になっています。自宅は畑と竹林付きの築100年の佐渡の伝統的な農家の造りで、玄関だけでも前のアパート位の広さです。畑で初めての農作業にも挑戦し、じゃがいもやナスを収穫。近くに住む実家の両親や兄ともたまに食事をし、家族と過ごす時間も増えました。」
「休日は毎週の様に温泉に行き、古道具屋を巡ったり、地域の方や旧友、移住者の方と談笑したりと佐渡生活を満喫しています。」
「また地元の人は、農業も大工仕事もできる上に、日常的に美術品や工芸品を楽しんだり、伝統や文化に造詣が深い方が多く勉強になります。移住者の方も自給自足に近い生活をしたり、個性あるお店やイベントを開いたりする方が多く、とても刺激になります。人が人を呼び、どんどん面白い人が集まっています。Uターンしたことで消費するだけの生活は終わり、暮らしを楽しむことを覚えました。離島ならではの不便さもありますが、それに勝る自然の恵みや文化度の高さに魅了されています。」
「首都圏にいる時は常に受け身で、地域のなかでの自分を意識することはありませんでした。しかし、佐渡に戻ってからは島の若者としての当事者意識が芽生えました。
首都圏にでた10年前に比べ、佐渡はより魅力的になり盛り上がりを感じます。移住者の方も活躍されていますし、私も地元の者として、何かやりたい・できることはないかという気持ちになりました。
特に関心のある古民家については、空き家を佐渡の資源と結びつけて保存・活用・利用することで新たな価値やコミュニティを生んだり、定住・移住に結びつくような取組みができないかと考えています。
佐渡は米をはじめ、酒や乳製品、海の幸や山の幸、果物など新鮮でおいしい食の宝庫です。自然や温泉も魅力的。まだまだ豊富な地域資源がある宝島です。Uターンしてからさらに郷土愛が深まりました。その魅力を磨き、発信していきたいですね。
裂き織や民謡などの伝統芸能にもチャレンジしたい気持ちがわいてきました。佐渡人としての自分を深めていきたいです。
老後は、海を望める古民家で温泉宿もいいですね。
佐渡は離島ならではの楽しみが豊富です。ここは、やりたいことでいっぱいです!」
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