2012.11.14 掲載
水と土の芸術祭実行委員会事務局 アートスタッフ
川越千紗子さん
32歳 新潟市
滋賀県大津市出身の川越千紗子さんは、水と土の芸術祭実行委員会事務局で作家6名を担当するアートスタッフとして、芸術祭の運営業務を行っています。各作家担当ディレクターのもと、作品制作前の展示場所の選定から制作期間中の補助、作品完成後はアートイベントやワークショップの運営、作品のメンテナンスなど。さらにはサポーター担当としてボランティアの手配やサポーター主催イベントの運営補助など、様々な仕事を日々行っています。
川越千紗子さんは滋賀県大津市で生まれ、高校から京都へ進学。大学卒業後に上京し川崎で、ある照明家のアシスタントに。照明デザインといっても様々ですが、特に美術館等で作品を傷めずに美しく見せる光の設計や、建築家とコラボレーションしながら特殊な照明器具を用いて美しい光の空間を設計する照明家の事務所に就職しました。
そういうと「美術関係の大学ですか?」と聞かれますが、進学したのは同志社大学の法学部。その話をすると皆さん不思議に思われるようです。アート系の仕事に就く為に美大や造形大という選択肢もありましたが、大学時代は多岐に渡る人脈を作るよう親に薦められたこともあり法学部に進学。それでも学芸員の資格を在学中に取得したのは、やはり美術が好きだったことに他ならないといいます。
会社の主な顧客は国内外の美術館や博物館。他には高級ブランドのショップやファサード照明、アートコレクターの自宅照明設計、設営などがメインだったそうです。器具は全く見えないけれど、光だけが空間に浮かびあがるような照明器具をオリジナルで製作するなど、常にその空間に合わせた照明器具を設計、製作していたとのこと。川越さんはそのなかで主に現場に赴いての設営作業やコーディネート業務などを担当していました。
一流の空間で一流の作品に囲まれ、最先端で活躍する人々と接する刺激溢れる仕事でしたが、10年間のうちに会社の業務内容はアートだけに留まらず新しい分野へも進出していきます。やはり大好きな美術により近い現場で働きたいという思いが年々強くなり、年齢的にも自分のやりたいことの出来る最後のチャンスと思い退社。世の中をリアルタイムに表現する現代アートの現場に関わりたく「水と土の芸術祭」事務局スタッフの募集に応募。学芸員の資格は持っているものの、美術系の大学も出ていない。さらに新潟出身ではない自分が選ばれることはないだろう。無理は承知で、とにかく挑戦と思い面接に。合格通知が届いた時はもちろん嬉しさもあったが、『私でいいのかな?』という気持ちの方が大きかったといいます。
新潟で生活を始めてまだ一年半くらいですが、新潟の印象は「みなさんとても温かい」ということにつきます。縁も所縁もない自分が、まったく知らない土地で新潟出身の他の皆さんと一緒に仕事ができるんだろうか?と不安でいっぱいでした。しかし事務局スタッフはじめ、街でふと言葉を交わす人にも優しさ、穏やかさを感じ、不安など少しも感じることなく芸術祭スタッフとしての毎日が始まりました。
新潟へ行くことを決める時、新潟行きを薦めてくれた知人がいました。その方は以前新潟に数年間住んでいた外国人。「新潟の良さは人の温かさ。自然も豊かだし本当に住みやすいから。」と背中を押してくれました。来てみて本当にそうだったと思っています。今回芸術祭に参加して初めて新潟にいらした作家の皆さんも、口を揃えてそう仰っていますよ。
新潟の方達が豊かな心を持ってらっしゃるのは、広大な土地や大きな河川の存在感、劇的に変化する気候も関係あるのかな?と最近思ったりもします。新潟に興味ある方が、もし私に「新潟はどう?」って質問されたら、迷わずに「何も心配しなくても温かく迎えてくれるはず。私は思い切って新潟に来て本当に良かったです。」と答えます。
新潟に来てからの毎日、芸術祭を通じて本当にたくさんの方と知り合いました。作品制作に関わってくださった地域の方々やサポーターの皆さん、作品を見に来てくださった皆さん。新潟市以外の方にも多くお会いしましたが、新潟の皆さんが県外から来た作家さんや私のことを自然と受け入れてくださった寛容さは、ほんとうにすてきなことだと思います。
12月24日まで「水と土の芸術祭2012」は開催していますので、新潟の土地からインスピレーションを得て制作された作品にぜひ足を運んで頂きたいと思っています。また作品鑑賞だけでなく、最終日までまだまだ多くのワークショップや様々なイベントを予定しています。詳しくは「水と土の芸術祭」のホームページに、作品情報や開催プログラムをご案内しています。ぜひそちらもご覧ください。
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