2017.03.15 掲載
vol4
ゲストハウスおむすびのいえ オーナー
青柳花子さん
vol4
新潟市出身。高校卒業後、保育の専門学校に通い、卒業後は新潟市内の幼稚園で3年間勤務。こどもたちと共に成長できる環境は、自然体でいられる職場だったが、次第に変化をしていない自分に気付く。生活に区切りをつけるため退職し、迷いながらも「自分らしく暮らしたい。」そんな思いを抱き始めたころ、粟島に出会う。初めて訪れた粟島は『粟島時間』と呼ばれるゆったりとした時間が気持ちよく、移住したいと思うように。2013年移住し、昨年9月ゲストハウス『おむすびのいえ』をオープン!
前回は、ゲストハウス開業への道のりを書きました。
今回は、いよいよ最終回!「おむすびのいえ」オープンを迎え、これからの粟島生活への思いをお伝えしていきたいと思います。
夏の観光シーズンのオープンが間に合わず、どちらかと言えば閑散期のオープンとなりました。というのも、観光シーズンが近づくに連れてひとりでの作業も多くなり、思うように作業が進まずにいました。島の人からは「お盆を過ぎたら冬になるぞ!」と声をかけられるようになり、より気持ちばかりが先走ってしまう状態でした。結局、目指していた夏には間に合いませんでしたが、観光シーズンも落ち着いてきた9月に正式オープンすることができました。
当初は、観光シーズンを外れてしまうことに焦りを感じていましたが、オープンしてみたら、ゲストさんが少ない分、ゆっくりお話ができます。「なぜ粟島に来たんですか?」「ゲストハウスはどこで知ったのですか?」とひとりひとりの話に耳を傾けられます。「粟島」という小さな離島につながるストーリーを聞く時間が楽しくて仕方ありません。観光客は来ない!と言われる冬のシーズンですが、おかげさまでおむすびのいえには様々なゲストさんがやってきます。それはまるで、映画のワンシーンのようです。
10月に宿泊してくださったゲストの女性から「おむすびに泊まってるって言ったら、おばあちゃんみんなが、花ちゃんのところか〜って笑顔になったの。おむすびに泊まっただけで、島の人に受け入れてもらった気持ちになれたのは、花ちゃんが頑張ってきたからなんだね。」と言っていただけたことがありました。「大好きな島の人たちともっとたくさんふれあってほしい!」その思いの種が実になったように感じました。
「稼ぐ」という表現を使うと多くの方からひかれるかもしれませんが、私はきちんと島で稼ぐことを目標にしています。田舎や離島に移住というと、一般的には都会に比べて年収は減るイメージを持たれるかと思います。そんな離島で、私は現在銀行から融資を受けています。私が、未来を見据えてここで生活していけるようになれば、移住を悩んでいる人の背中を押すきっかけになるかもしれません。そして私のように「粟島で夢に向かって挑戦したいんです!」という人が出てくるかもしれません。そのためにも、きちんと自分のやりたかったことと生活が直結できるようになりたいのです。
「稼ぐ」ことの他に「粟島に人の流れをつくる」ことも目標にしています。もちろん暮らしのベースは粟島ですが、新潟市での時間もなるべくつくるようにしていて、2拠点居住に近いかもしれません。ゲストハウス開業のタイミングで知り合った方がいて、新潟の観光を盛り上げるビジネスコンテストの粟島企画を一緒に考えています。また、新潟市に来るたびに、粟島ではなかなか得ることができない情報を教わったり、逆に私は粟島のことを話してPRできたりと、少しずつ流れができているように感じます。これからもっともっと粟島の窓口のような存在になれたらいいなと思っていますし、イベントも参加する立場から、運営する立場になって島を盛り上げていきたいです。
先ほど銀行の融資を受けていると触れましたが、それ以外にゲストハウスの資金の一部は、クラウドファンディングで集めました。30日間で150万円という、かなり無謀な挑戦でしたが、多くの友人や、共感してくださった方のおかげで目標金額を上回る協力を募ることができました。
なぜ全額融資を受けず、クラウドファンディングに挑戦したかというと、理由は2つあります。1つ目は、クラウドファンディングのサイトは世界中の人が見ることができるので、まだ粟島を知らない多くの人にもその存在を知ってもらえること、2つ目は、粟島内の人たちに、島外からも私の活動に共感してくださっている人たちがたくさんいるということを知ってほしかったからです。
おむすびのいえがオープンして、その時にご協力くださった方からお手紙が届いたり、実際に宿泊してくださる方もいました。そして12月には、クラウドファンディングの授賞式に御招待いただき、東京まで行ってきました。授賞式では、いつも画面越しに見ていた起業家の方々のディスカッションを聞くことができ、とても興奮しました。なかでも、社会起業家の駒崎弘樹さんが「チャレンジは、すればするほど、上達する!」とお話されていて、この言葉に背中を叩かれて、気合いを入れていただいた気分でした。
私にとって「働く」ということは、「自分自身を最大限に引き出せること」だと思っています。ずっと「働く=仕事」だと思っていましたが、粟島で暮らしてから変化が生まれ、「働く=生きる」ことのように感じるようになりました。今は、畑仕事や漁の手伝い、手作り生活もひっくるめて、日々の暮らしが私の働き方そのものです。だからこそ、私は粟島が一番力を発揮できる環境なのだと思います。
「種をまく人」という本があり、ひとりの少女が荒れ地に種をまくところから物語が始まります。種をまいている少女を見て、次々に種をまく人が増え、荒れ地が菜園へと変わっていく物語です。私もゲストハウスという種まきをしました。ここから、次々に粟島で夢を叶える人が増えてほしいと願いながら、自分と重ねて何度もこの本を読み返しています。
4回にわたり拝読してくださったみなさまに、心から感謝申し上げます。ありがとうございました。
粟島でお待ちしてます!
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