2012.10.04 掲載
上越市出身の高橋和真さんは、高校を卒業後、山形県の東北芸術工科大学及び大学院に進学し、卒業。その後、上越市にUターン。
パッケージクラフトは大学3年生の時から作り始め、現在は、妙高市のギャラリーで作品を展示する傍ら、製作に励んでいる。また、年間3~4回、全国の美術館や百貨店などで展示会を開催。
昨年11月には、『一般社団法人パッケージクラフト協会』を設立し、理事長に就任。パッケージクラフトの普及に努めている。
「大学3年の春休みに実家へ帰省していた時、ふと、お菓子のパッケージで何か作れないものかと考えたのがきっかけです。
元々、様々な素材を利用して立体作品を作ることが好きだったこともあり、何気なく作り始めました。最初はなかなか難しくて、試行錯誤しましたが、次第にコツを掴めるようになりました。
コツを掴んでからは『1つの作品に1つのパッケージのみを使用すること』『パッケージをできるだけ余らせずに使い切ること』『文字を切らずに活かすこと』『作品完成後に全ての文字が読める状態になっていること』の4つを自分自身のルールとして製作しています。パッケージを使って製作している方は、他にいるかもしれませんが、この4つのルールに基づいて作っているのは、おそらく日本で私だけだと思います。」
「製作にあたっては、パッケージを開いてから作るモノを決める場合と作るモノを決めてからパッケージを探す場合の2パターンがありますが、最近は後者の場合が多くなっています。
製作期間は、展示用のもので平均3~4日を要しますが、複雑なものになれば10日間ほど掛かる場合もあります。また、子供達に教えるためのものであれば、難易度を下げるので、1日でできます。
私自身、作品を本物に似せることが得意ではないので、多くのものはディフォルメして製作しています。気に入った作品は、図面や型紙を残しているのですが、最近はメーカーのパッケージデザイン変更のサイクルが早くなっています。パッケージデザイン変更されると、当然、文字の配置などが変わってしまい、手直しが必要になるため、少し大変になります。」
「日本おもちゃ会議という団体が主催するイベント『おもちゃフェスティバル』が2年に1回開催されており、そのイベントに作品を出展したことがきっかけで、少しずつ知ってもらえるようになりました。「おもちゃフェスティバル」では、会員が製作したオリジナルのおもちゃが展示されるのですが、青森県在住の会員の方が、私の作品をご覧になり、口コミで熱心に広めくれました。
また、人とのつながりができたお陰で、昨年7月、日本テレビ系列の「人生が変わる 1分間の深イイ話」に出演する機会があり、司会の島田紳助さんから、ウィスキーのパッケージで製作したトラの作品に10万円の値を付けていただきました。
近年は、全国の美術館などで展示会も開催しているのですが、作品をご覧になった方からは、『すごい』『面白い』といった声や『ゴミになるはずのパッケージがアートになっていて、環境に優しい』といった声も頂いています。」
「実は以前、作品を販売することが可能かどうかをお菓子メーカーに確認したことがありましたが、どの作品もパッケージに商品名が残っているため、販売を控えるようにとの回答でした。もしかしたら、細かい契約を交わせば、可能だったのかもしれません。今は販売してしまうと、購入した人は作品を飾ってそれで終わりのような気がしているので、まずは、パッケージクラフトそのものを知ってもらい、作る楽しさを体験してもらうことを最優先に考えています。
現在は、お菓子メーカー2社とタイアップして、お菓子のパッケージから作ることができるモノの作り方を提供しています。今後も、バリエーションを増やしながら、タイアップするお菓子メーカーや商品の数を増やしていきたいと思っています。」
「打ち合わせ等で年間3~4回は上京していますが、東京は、住んでいる上越市から比較的近く、今まで不便を感じたことや困ったこともないため、拠点を首都圏に移すことは考えていません。性格上、あまり人混みが好きではないということもありますし、作家は技術を売っているので、データのやり取りができるパソコンがあれば、それほど場所は関係ありません。やはり、昔からの知り合いが多く、自然に囲まれている、生まれ育った場所が一番落ち着きます。」
「昨年11月、より多くの人にパッケージクラフトを知ってもらうため、『一般社団法人パッケージクラフト協会』を設立しました。特に、子ども達から楽しんでもらいたいという思いから、展示会の会場でワークショップを開催したり、毎月第一日曜日に新潟市のイオンモール新潟南でパッケージクラフト教室を開催するなどして、普及にも力を入れています。
また、作家は私1人だけなので、本格的な作家を養成したいとも考えています。外国人作家による外国パッケージでの作品も面白いと思うので、できれば世界中に広げたいです。ブームで終わってしまうのではなく、少しずつ広がっていき、例えば、子供の夏休み工作の定番になるなど、きちんと定着するように頑張っていきたいです。
個人的な目標としては、複雑な観音菩薩をシリーズ化して製作したいですし、毎年、年賀状用に製作している干支が、残すところあと2つなので、それも完成させたいと思っています。」
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