2012.04.26 掲載
静岡県出身の江口勝彦さんは、中学からバスケットボールを始め、首都圏の大学卒業後も実業団、新潟アルビレックスBB、アメリカの独立リーグABAでプレー。引退後は、結婚を機に、県内企業に就職、2010年にUIターン希望者を中心とした人材紹介会社を起業し、社長に就任。そんな異色の経歴を持つ江口さんに、これまでのチャレンジについてお話を伺いました。
「学生時代までの私は、慎重な性格だったためか、進学校の方がよさそうだ、教員免許を取っておいた方がよさそうだと、何となく社会的立ち位置に保険を掛けて選択してきたように思います。しかし、ふと冷静に自分は『人生で何を成したいのか?』と考えると、一つのことだけに人生を懸けてみなくていいのか、チャレンジせずにあきらめていいのか、という葛藤を持ちました。その時、知人から『新潟でバスケットボールが盛り上がっている』という話を聞きました。実業団にいれば、安定した収入があって高いレベルでバスケットボールもできる恵まれた環境だったのですが、今までの自分を取っ払い、すべてをバスケットボールに注ぎたくて、新潟アルビレックスBBの入団テストを受けました。」
入団テストに見事合格し、新潟での選手生活がスタート。
「入団してみると、新潟のブースターの温かさをとても感じました。有名選手でなくても、一生懸命に応援してくれますし、時には、お弁当を差し入れてくれるブースターもいて、チームと地域のつながりがとても深かったと思います。経済的には、実業団時代より楽ではなかったかもしれませんが、充実した日々を過ごすことができました。この時に感じたことや得たものが、今の私の根底にあります。」
「ただ、当時の私は、競技者としてどこまでやれるのかを試したかったので、自分のためにプレーしていました。引退して気付いたことは、誰かのためにという気持ちを持てるかが一流選手になれるかの大きな差だということです。大リーグの松井選手やゴルフの石川遼プロが、『チームのために』とか『ファンのために』とよく言いますが、『誰かのために』という思いが、さらなる向上心につながります。就職してからは家族のために仕事をしましたし、今は世のため人のためにと思って事業をしています。」
新潟アルビレックスBBを退団後も、アメリカ独立リーグABAの入団テストを受け、ニューヨークのチームで練習生に。しかし、選手契約には至らず帰国。
「帰国後は、新潟県出身の妻との結婚を機に、バスケットボール選手を引退し、新潟で就職することに決めました。大学が教育学部出身で、人材育成分野に興味があったため、採用などに携わる人と仕事ができる求人広告のコンサルティング会社で勤務した後、老舗商社に転職し、人事・採用を担当しました。その後、人材紹介会社を興した元上司から、新潟で起業しないかと声を掛けていただきました。起業について、ぼんやりと考え始めていた時期でもあり、やってみようと決意しました。起業にあたっては、多くの方のご支援がありがたかったですし、「起業チャレンジ奨励事業」も活用させていただきました。私のこれまでの経験から言えることは、まずは希望を持ってやってみるということです。そうすれば、周りの人達もサポートしてくれますし、自然と道は開かれます。」
UIターンを考えている方にお伝えしたいことを伺いました。
「私自身もIターンということになりますが、まずは、自分の価値観や生活スタイルを大事にしてもらいたいと思います。年齢を重ねるごとに、子どもを自分の故郷で育てたいとか、親御さんの世話をしなければならないなど、考えや状況が変わっていきます。また、UIターンすると収入が落ちてしまうのではないか、仕事がスケールダウンするのではないかといった不安も当然あると思いますが、決してそんなことはありません。時間的なゆとりや人とのつながりなど、収入だけではない豊かさもあります。UIターンを希望する方との面談では、『大きな会社の小さな歯車ではなく、小さな会社の大きな歯車になりましょう』とお伝えしています。もちろん、首都圏の生活を否定するつもりはありません。ただ、UIターンを希望する方に対しては、首都圏に住んでいては掴めない生の情報をきちんと提供していきたいと考えています。」
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