2011.05.25 掲載
新潟県中小企業家同友会事務局長の池田泰秋さんに新潟の中小企業の特徴と中小企業のこれからについてお話をお聞きしました。中小企業家同友会では共同求人サイト「Jobway」を運営していることから、併せて最近の就職活動についてもお話をいただきました。
「中小企業家同友会は現在、各都道府県に1つと全国協議会を併せて48の組織があります。商工会議所のような法制団体ではなく、自主的に発足した任意団体です。当県では1982年に創設されました。経営指針の策定や経営環境の改善にあたって中小企業1社で取り組むのは厳しいですが、これらの課題を共有し、同友会会員の横の連携を図ることで解決できる課題もあります。また、入社式や社員研修を共同実施することもあります。求人活動についても同様で、合同企業説明会を最初に始めたのは北海道の中小企業同友会と言われています。」
「政策提言も行っており、その結果、昨年度閣議決定で中小企業憲章が制定されました。中小企業が経済を牽引していることを基本理念に掲げ、政府が進める8つの具体的な行動指針があげられています。中小企業というととかく支援がないと経営が難しいものと捉えがちかもしれませんが、支援を受けずに自立的経営をしている中小企業は多くあります。」
「総務省のH18事業所・企業統計調査によると、非1次産業においては企業全体のうち99.7%を中小企業が占めています。企業数だけでなく、常用雇用者数でみても、企業全体のうち7割弱が中小企業で雇用されています。統計データからみても中小企業が経済や暮らしを支えているといえ、自ずと就職の選択肢に入ってくると思います。」
「新潟の中小企業の特徴として世界に通じる高い技術力を持っている企業が多いですね。それから新潟県の面積は、富山、石川、福井の3県分ほどあるのですが、山に囲まれていることが起因しているのか、あるいは広大な県土を有し長岡、上越といった県内に支店を持つからか、県外に支店をもつ割合はわずか14%。わざわざ支店を県外に求めなくても地域で循環できていると言うことができます。
東日本大震災を通して、新潟の優位な拠点性にも気づきました。東京ルート、長野ルート、北陸ルートのほか北海道ルートもあり、こういったルートから燃料を宮城県に届けることができました。この拠点性も新潟のアドバンテージかもしれませんね。」
「これからの企業は特色がないと生き残っていけません。高い技術力やコーディネート力、マッチングの妙など。ワンストップサービスも売りになります。何でもコーディネートしワンパッケージで提供するなど。
リスクマネジメントをチャンスマネジメントにパラダイムシフトさせていってほしいですね。機会を管理し、それがないなら自分たちで作っていく。とくにサービス関連の起業はイニシャルコストが低く、始めやすいかもしれません。」
「これは統計的な裏付けがあるものではなく私が感じていることですが、大企業の場合、多くの学生を採用しても1年後、3年後と年々社員が退職され、10~20年後まで働き続けている人は1割程度なのではないかと思います。採用されてからが本当の選抜試験なのだと感じています。これが中小企業だと採用数そのものは少ないのですが、社員にずっといてもらわないと会社が困るので、長く働いてもらうよう社員を育てる傾向にあるようです。大企業が語学力プラス専門性を求めるのに対して、中小企業の場合、最も重視するのは人柄で、この人を育てたい、そしてこの会社で何十年も働いてもらいたいという人を求めるようです。」
「在学中に自分のキャリアプランやビジネスプランを構築してほしいと思います。これは就職するまでのキャリアプランでなく、職のプロフェッショナルとして一人前になるまでのキャリアプラン。そのためには社会とつながることが必要です。バイトでもインターンシップでもボランティアでも何でもいいと思いますので、社会参加をお勧めします。グループやサークルで会社見学をしてみてもいいと思います。大学の講義だけが勉強ではありません。就職をどうしようと思い悩むよりもまずやりたいことを率先してやっていく。自分に自信が持てない人はやりたいことを成し遂げていない人なのかもしれません。」
「就職活動で業界研究をするよりは、学生時代に働くという経験をして、その中で働くことはきつくて苦しいけれども、おもしろいということを感じてもらいたい。仕事とは単に報酬を得ることというより、社会貢献や社会の役に立った対価として報酬を得るものだと思います。
職に就くことはプロフェッショナルになるということ。みなさんの就職活動はプロフェッショナルになる“就職”ではなく、単なるワンクリックの会社選びともいえる“就社”になっていませんか。内定をもらう人は何社ももらっています。企業の問題、社会の問題は確かにありますが、積極的な社会参加と自分自身を高めていくことで“就職”に近づいていくと思います。」
このページをSNSで共有する