2011.02.16 掲載
国際協力や国際交流には様々なスタイルがありますが、何から始めたらいいのか分からない方のために、新潟で出来る国際協力や多文化共生時代に出来ることについて、新潟大学国際センターの田村友美さんと、JICA新潟デスクの佐脇奈都代さんへのインタビューを通じてご紹介します。
新潟大学国際センターの田村友美さんに海外留学の魅力と多文化共生時代に私たちにできることについてお聞きしました。田村さんは日本人学生の派遣プログラムを担当し、留学プログラムの周知や実際に海外への引率、また留学生向けの教養科目の通訳をされています。
「日本では内向き志向の学生が増え、留学する学生数が減少している中、いかにして海外留学の魅力を伝えられるか、海外へ出るきっかけ作りをしています。学生にとって留学することは一大決心ですが、留学した学生に共通していえることは、外国での生活で刺激を受けて、さらなる向上心が湧くようです。知らない土地に飛び込み海外で実力を試し、自分に何が足りないかを知ることで、帰国してから大学卒業までに何を達成したいか、将来どんな自分になりたいかといった具体的な目標設定につながっているようです。」
「物が溢れる時代、お金を払えば欲しい物が買える時代にあって、海外留学はお金では買えない何かを、困難を乗り越えた上で手に入れることができます。それは、一生大切にしたい人間関係であったり、自分の人生の基盤となる哲学だったり、外国人とのコミュニケーションを充実させるための語学力や異文化理解であったりします。留学して人生の宝を見つけて欲しいと思います。
最近のトレンドはポップカルチャーや食文化を通して中国、台湾、韓国などが身近に感じられるようになり、アジアを留学先に選ぶ学生が増えています。韓国でのプログラムは新潟空港発着で参加しやすく人気があります。大学にいるアジア圏の留学生と接して彼らの国に興味を持つ学生もいますし、将来性を見越して語学留学に行く学生もいるようです。また、経費の面からも欧米よりアジアを選ぶこともあるようです。
留学するのが難しい場合でも、地域の国際交流協会のHPにイベント情報などが紹介されていますのでこうしたイベントに参加したり、国際交流団体や民間の会社がホストファミリーを募集していますので、こういったツールを活用することで異文化交流・理解や留学生への手助けができると思います。」
「これは私自身の経験ですが、アメリカ留学時代、よく耳にした言葉のひとつに”identity”がありました。多民族国家のアメリカでは、自分はどこから来た何者であるかを自分自身が納得し外に向かって表明できることが大切だと感じました。他人と自分が違っていることは当たり前なので、お互いの理解にたどり着くために自己表明が必要なのだと感じました。
一方の日本では、自分が他人と異なる外見や性質、考え方や意見を持つとき、他人に合わせたり、目立たないようにそれを隠そうとしたりします。そうすることで「和」を尊重し、直接的に言葉を介さないコミュニケーション(以心伝心)に頼ります。こういった国民性の違いは大変興味深いと思います。」
「学生には、夏休みなどの休暇を利用して海外へ出かけてほしいと思います。新潟空港から韓国、中国、極東ロシアへ定期便が運行されています。新潟から直行便のある韓国仁川国際空港を経由すれば世界各国へ行くことができます。就職したら長期の休みを取ることは難しいかもしれませんので、時間のある学生のうちにぜひ海外へ行って、異文化に触れて欲しいと思います。
これからの日本は外国人労働者を受け入れなくては国を支えることができないと言われています。多文化共生の時代。正しい理解に基づいて異文化を受け入れ、隣近所や職場の外国籍住民を支援することが重要になってくると思います。まずは自分の身近にいる留学生や外国籍住民は困っていないか気にかけてあげてください。これからの国際交流は、国際交流団体だから行うのではなく、地域の外国籍住民と日本人住民の相互理解を促して住みよい社会にするために、地域住民が主体となって行う、生活に密着したものになるとよいと思います。今のうちからいろいろな方と接して、多くの異文化経験を積んでおくと構えず柔軟に応じることができるかもしれません。」
次にJICA新潟デスクで新潟県国際協力推進員をされている佐脇奈都代さんに新潟でできる国際協力についてお聞きしました。
「新潟県国際協力推進員は、(財)新潟県国際交流協会に配置されている『新潟のJICA窓口』です。いわば新潟と国際協力をつなぐ架け橋。新潟の皆さんに世界の現状を知っていただき、国際協力への参加促進を目的とし、JICA事業を中心に国際協力の広報及び啓発活動の推進、自治体の国際協力事業との連携促進などを行っています。私も青年海外協力隊のOG(2005-2007)です。学校等でバングラデシュの農村で女性の生活改善に携わった経験をもとに国際協力の話をさせていただくこともあります。
新潟県からは666人が青年海外協力隊として派遣され、現在も50人が世界各地で活動中です(H23.2月現在)。また、帰国後、協力隊経験を生かして活躍されている方が多いのも新潟の特色です。JICAボランティア募集説明会は春と秋の2回ですが、新潟の青年海外協力隊OB会は毎月最終金曜日の午後に国際協力イベント(協力隊ナビ)という形で実施されています。場所はOBが経営する新潟市内のパン屋(カフェ)。まったりお茶を飲みながら海外の話に花が咲きます。申込不要。カフェ&パンが好きな方、お時間があるときにのぞいてみてください。旅行では知ることができない面白い話が聞けますよ!」
「『国際協力とは、まずその国の人と知り合うことから始まるのではないか』貧しい村の女性たちに助けてもらった経験から、国際協力とは一方通行ではなく、お互いに学び合える関係が大切だと強く思うようになりました。良かれと思った支援がその国で役立つとも限りません。相手を知った時にその人が本当に必要としている支援が見えてきます。目の前で友人が困っていた時に自然に手を差し伸べる。それこそが国際協力の原点だと思っています。県内にも開発途上国から来た方もたくさんいらっしゃいます。ぜひその国の話を聞いてみてください。また協力隊OBなど海外経験の豊富な人もいます。JICA新潟デスクでは国際協力出前講座、国際理解教育セミナーなど体験談が聞ける機会も用意しています。新潟にいて海外を体感できるイベントに気軽に参加してほしいですね。その上でご自身に合った国際協力のスタイルを見つけていただければと思います。さらに新潟県内には国際協力の団体がたくさんあります。(財)新潟県国際交流協会のトップページから『県内国際交流・協力団体検索』で探してみてください。」
「新潟に来てから1年8ヶ月が経ちました。岐阜出身で知らない土地で不安を抱えていた私を新潟の方々は温かく受け入れていただきました。着任以来、毎日が出会いと感動の連続です。しかも新潟は人と人の結びつき、そして結束が非常に強い地域です。周囲に話を持ちかけるとすぐに協力者が集まります。地元の人の完璧なバックアップに支えられて仕事ができる私は日本一ラッキーな推進員かもしれません。
『一念天に通ず』という諺があります。本当に成し遂げたい夢であれば、その想いを強く持ってください。勇気が必要かもしれませんが一歩踏み出して門を叩いてみてください。きっとその先に道が見えてきます。困ったときには誰かを頼り相談してみるのもいいと思います。一人ではたどり着けなかった答えがみつかるかもしれません。国際協力や海外に興味のある皆さん、まずは気軽にJICA新潟デスクにご連絡ください!どこかでみなさんの夢とつながっていくかもしれません。交流の架け橋となって皆さんのお役に立てれば幸いです。」
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