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ニイガタビト

受け継いだ技術と想いを、自分らしい形で未来へつなぐ
- 刺繍の花に想いを込めて、五泉から新たな挑戦を -

2026.07.08 掲載

塚野刺繍株式会社 Design/Produce

塚野 紗羅さん

五泉市出身。専門学校を卒業後、兵庫県の結婚式場に就職し、ブライダル業界で7年間勤務。その後、地元・五泉市へUターンする。帰郷後はフリーランスとしてブライダルやグラフィック関連の仕事に携わった後、実家が営む塚野刺繍株式会社へ入社。塚野刺繍株式会社の技術を活かした、刺繍のお花(スレッドフラワー)ブランド「LOPIN」のプロデューサーとしても活動している。

県外で磨かれた感性が、刺繍と向き合う原点になった

【Q.専門学校卒業後、新潟県外で就職した理由を教えてください。】

新潟はもちろん好きな場所でしたが、就職先を考えるにあたり「もっと広い世界を見てみたい」という思いがありました。県外に出れば一人暮らしも経験できますし、自分自身を成長させるためにも、一度は新潟を離れてみたいと考えていたんです。

せっかく挑戦するなら大きな都市で働きたいと思い、東京と関西で悩みました。その中で、自分の性格には関西の雰囲気が合っていると思い、神戸にある結婚式場に就職することになりました。

実際に県外へ出てみると、良かったと思うことばかりでした。新潟ではまだ触れる機会の少なかった新しいものやトレンドに出会うことができ、日々たくさんの刺激を受けました。新しい発見が多く、自分の感性もどんどん磨かれていったように感じています。

また、神戸にはさまざまな地域の出身者がいて、多様な価値観や考え方に触れることができました。同じ出来事でも人によって捉え方が違うことを知り、自分の視野が広がったと思います。そうした環境の中で過ごした時間は、今でも自分にとって大きな財産です。当時受けた刺激や経験の一つひとつが、現在の仕事やものづくりにもつながっていると感じています。


【Q.新潟へのUターンを考え始めたきっかけは何でしたか?】

もともと「いつかは新潟に戻りたい」という気持ちはありました。実家の会社を継ぎたいというよりは、親の近くで暮らしたいという想いが強かったですね。

そんな中、新型コロナウイルス感染症の影響でブライダル業界の仕事が大きく減少。さらに、勤務していた結婚式場の運営母体が変わり、それまでの働き方が難しくなったことも重なって、新潟へ戻ることを決意しました。

ただ、新潟へ戻った当初は、実家の会社へは入社しませんでした。私にとって刺繍は物心ついた頃から身近にある存在だったので、正直なところ当たり前すぎて特別な興味を持ったことはなかったんです。

そんな考えが変わったのは、母が試行錯誤を重ねながら作り上げた自社製品の一つ、「刺繍の絵本」の誕生秘話を聞いたときでした。その背景にある想いや苦労を知り、とても心を動かされたんです。「この商品をもっと多くの人に知ってほしい」、「この想いを自分が伝えていきたい」。そう思ったことが、改めて刺繍と向き合うきっかけになりました。

そして会社の仕事や技術を知っていく中で、「うちの刺繍って、こんなにすごかったんだ」と初めて気づきました。子どもの頃からずっとそばにあったものだからこそ、その価値を見落としていたのかもしれません。

心がほどける場所で、ものづくりと向き合う

【Q.新潟に戻ってみていかがでしたか?】

一度県外に出たからこそ、改めて新潟の魅力に気づくことができました。ありきたりかもしれませんが、やはり「ご飯がおいしい」というのは本当に大きいですね。神戸で暮らしていた頃も、実家から送ってもらった新潟のお米を食べていたんです。でも、同じお米なのに、炊くときに使う水が違うだけで味が全然違って、とても驚きました。

また、外食のレベルの高さも新潟ならではだと思います。比較的リーズナブルな価格でおいしい料理を楽しめますし、ラーメンひとつとってもそのクオリティの高さには驚かされます。

自然豊かな環境も、新潟の大きな魅力の一つです。特に五泉市は、良い意味で「何もない」ところが好きですね。人や高い建物が少ないので、視界に余計な情報が入ってこなくて、目が疲れないんです。自然がすぐそばにある環境だからこそ、日常の中で気持ちが落ち着き、癒されているように感じます。

休日は、そんな新潟の自然を満喫しています。友人たちを呼んで家でBBQをしたり、近くの公園へピクニックに行ったり、やすらぎ堤を散歩したり。自然の中で過ごす時間が良いリフレッシュになっています。

大都市での暮らしからは、多くの刺激や学びを得ることができました。しかし、実際に暮らす場所として考えたとき、自分には新潟の方が合っていると感じています。今は、心も身体もリラックスできるこの場所で、自分らしく仕事やものづくりに向き合うことができています。

唯一無二の表現を目指し、挑戦はこれからも続く

【Q.刺繍のお花のブランド「LOPIN」立ち上げのきっかけを教えてください】

きっかけは、自社製品として販売していた「お花のブローチ」でした。その商品を通して、「刺繍でお花を表現する」という可能性を初めて意識するようになりました。

ブライダル業界で働いていた時、「結婚式当日のままの姿を残せるお花があったら素敵なのに」とずっと思っていました。その想いと、刺繍でお花を表現する技術が結びついたとき、「これなら実現できるかもしれない」と感じたんです。刺繍でもっと生花に近い表現ができれば、造花とも違う、ブライダルシーンにふさわしい特別な存在になるのではないか。そんなイメージが少しずつ形になっていきました。

母は刺繍でできる表現を常に試行錯誤しながらたくさんの商品を作っていました。しかし、刺繍屋として誇れる技術はあるものの、方向性が定まらず悩んでいました。そこで私は、新たなブランドとして方向性を明確にし、「できるだけ本物の花に近く、生花に混ぜても違和感のない刺繍の花をつくろう」と決意しました。それが、LOPINの始まりです。


【Q.これから挑戦したいことを教えてください】

まずは、お花の種類をもっと増やしていきたいと思っています。現在も四季のお花を一通り揃えていますが、お客様からリクエストをいただくことも多く、その中でも特に多いのが五泉市のチューリップです。実はこれまで何度も制作に挑戦しているのですが、社内でも納得できる表現にたどり着けず、なかなか商品化できていません。

また、ブランド立ち上げ当初は、「本物のお花に混ぜても見分けがつかないものをつくる」ことを目標にしていました。しかし、制作を続ける中で、本物とまったく同じを目指すだけではLOPINである意味がなくなってしまうのではないかと考えるようになりました。形や大きさ、佇まいは本物に近いけれど、刺繍だからこそ表現できる美しさがある。その絶妙なバランスを探しながら、日々試行錯誤を続けています。言葉にするのは難しいのですが、LOPINならではの唯一無二の造形を追求していきたいですね。

さらに、今後は香りとの組み合わせにも挑戦したいと考えています。糸は香りをしっかり吸収するので、お花と香りを一緒に届けることができれば、これまでにない楽しみ方を提案できるのではないかと思っています。

現在はオンラインショップや店頭、POPUPを中心に販売しています。これからはイベントにも積極的に出店しながら、商品だけでなく、そこに込めた想いも含めて、より多くの方に届けていきたいです。

外の世界で磨いた感性を、故郷の力に変えていく

【Q.Uターンを考えている方にメッセージをお願いします】

県外で得た経験は、自分が思っている以上に大きな財産になっていると思います。だからこそ、ぜひその経験を新潟に持ち帰ってきてほしいですね。

「県外に出たけれど、特別なことは何も得られなかった」と感じる方もいるかもしれません。でも、そこで出会った人や環境、日々の暮らしの中で培った感性や価値観は、きっと自分が気づいていないだけで大きな力になっているはずです。私自身も県外でさまざまな経験をしたからこそ、新潟の魅力や可能性を改めて感じることができました。そして、その経験が今の仕事やものづくりにもつながっています。

一度外に出た人だからこそ見えることや、新潟に持ち帰れる視点があると思います。県外で得た経験やアイデアを活かして、一緒に新潟をもっと面白く、もっと魅力的な地域にしていけたらうれしいです。

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