2010.03.30 掲載
将来のライフプランを考える際、就職、結婚、育児、住環境など様々なステージがあります。まだ先のことと考えがちですが、将来におけるライフプランを設計しておくことは重要です。
新潟県内で、子育て支援を推進している取組例や新潟県の住環境の特徴などについて、各フィールドでご活躍されている方へのインタビューを通じてお伝えします。
子育てしながらみんなが元気になれる社会を目指して活動しているNPO法人マミーズ・ネット理事長の中條美奈子さんに伺いました。
「子どもが3歳の時に、Uターンで上越に戻ってきました。すぐにママ友達が出来ると思ったら、親子連れに会うことも少ない。もっと子育て情報があればいいのにと、自分たちで子育て応援の情報誌を作成しました。雑誌では紹介しないような近所の公園や、子どもと一緒に飲食できるお店を紹介したりと、まさに地元密着型の情報誌。活動はさらに広がって、ワークショップ、子育て応援ひろばの開設、こどもセンターの運営受託など、地域で支えあう子育てのための様々な活動を行っています。」
「子育ては一時期のことだからと、我慢する人が多い。つらくてもそれを人に話す時間さえないのが現状です。一時期のことだからと言って我慢しないでほしい。幸せな親から幸せな子どもが育つように思います。そのためにも、子どもだけでなく自分自身も大切にできる、そんな子育て環境が必要です。こどもセンターには情報が集まっていますし、子育て応援ひろば「ふぅ」は、子どもと一緒に出かけながら、親が自分のために本を読んだり、お茶をしたりと、自分の時間を持てる場です。」
新潟の子育て事情についてもお聞きしました。「上越市を例にとってみると、大きすぎず、小さすぎない中規模の都市。保育所に入れない待機児童の話などをニュースで耳にしますが、この地域では利用しやすいと聞いています。それから、スキー場やキャンプ場が近くにあるので、子どもたちとスキー、バーベキュー、キャンプに出かけることも多いですね。自分があのまま東京にいたら、そういった経験をさせてあげることも少なかったのではないかと思います。今後、マミーズ・ネットで育った子どもたちが、子どもを持つ頃、マミーズ・ネットで子育てしたいと思ってもらえたら、うれしいですね。」
温かく柔らかな口調でお話してくださった中條さん。多くの女性たちに、エールをいただいたように感じました。
次に、企業内保育苑こどもけやき苑の苑長 近藤和義さんにお話をお聞きしました。
「私たちの法人(社会福祉法人長岡三古老人福祉会)の職員数は1,200人にのぼります。職員の福利厚生と優秀な人材確保を目的に3年前に開設しました。土日や祝日も休まずやっていますし、時間帯も午前7時から午後9時までと変則勤務に対応できるよう幅広い時間帯としています。また、地域からの要望を受け、法人職員以外の方の利用受付も始め、今春からは一般の皆様にもご利用頂けるように整備をいたしました。併設するグループホームや特別養護老人ホームの入所者と、日々交流しています。子どもたちの元気な声で、入所者の表情にも笑みがこぼれます。時には、一緒に自然豊かな苑庭で動植物にふれたり、畑で農作業のお手伝いをしたりと、やさしさを育む世代間交流の場となっています。」
「木の温もりを大切にしていて、食育にもこだわり、木製の手作り食器を用いた給食や、床材に桐を使用しているので、冬でも子どもたちは裸足ですし、イスも杉を使用し、オーダーメイドです。施設側の立場で考えるのではなく、利用者の立場で考えないといいものはできないと思います。クオリティや利便性がよくなければ、心地良く利用してもらえない。社会福祉法人の社会貢献活動としてこれからも、保育、教育、環境とやれることはどんどんやって良い循環を生みたいと考えています。」
職員の方や子どもたちなど、インタビュー時にお会いした皆さんが、笑顔だったのがとても印象的でした。
1日のうち、多くの時間をすごす家。マイホームを持ちたい、自分たちだけの空間でゆっくりとすごしたいと新潟へU・Iターンする人も増えています。住環境は、人間の心理や行動に大きな影響を及ぼします。そこで、新潟県の住宅事情について、株式会社松岡建築設計事務所代表取締役渡邉松男さんにお聞きしました。
「県外出身のお客さまも多いのですが、皆さん口をそろえて「新潟に来て1年目は冬がつらかった。それが2年目になると、こんなにいいところはない。四季がはっきりしているので、季節ごとの生活を楽しめる。」とおっしゃって、マイホームを決意する方も多い。それに、新潟は食べ物がおいしいですよね。素材そのものがおいしいのは、海、川、平野、山といった大自然の恩恵。新潟のポテンシャルは高いと思います。」
「新潟は、建築技術に関してもレベルが高い地域。はっきりした四季に対応するため、また、住宅需要が多い地域なので様々な要求に応えるため、技術力は向上してきました。新潟は、住宅を持っている人が多い上、一戸建ての割合も高い。さらに、住宅が広いのも特徴的で、そういった住環境のもと、ゆとりと豊かさが育まれるようです。親が楽しいと思う家は、子どもにとっても楽しい家になります。家を建てることはゴールではなく、そこに、その家庭ごとの価値を付けていくものです。それは、家族の時間であったり、文化や情緒、趣であったり。自分たちのライフスタイルがはっきり見えてきますね。メンテナンスをしっかりすれば3世代は住めるんですよ。子どもが将来、「この家でよかった」と思ってもらえる家造りを目指しています。」
子ども環境学会の会員である渡邉さんは、学会での研究のほか、夏休みには子ども寺子屋を開いたり、子どもたちと一緒につくった作品や黒板を事務所に飾っていたりと、事務所自体が子どもたちとの交流の場に。また、インタビューの際に、薪ストーブの温かさと大きな窓から入り込む日差しに、新潟の四季を感じました。
新潟県は、女性の有業率が全国よりも高く、また、保育所待機児童数もほぼゼロ。女性が働きやすい地域とも言うことができ、また、住宅データからも、持ち家比率や住宅面積、一戸建ての割合が全国と比較してみると、非常に高いことが窺えます。
どんな仕事をするかも重要ですが、どこでどのように暮らすかというビジョンを持つことも大切です。どう暮らすかが見えてくると、何をしたらよいか取捨選択され、今、やるべきことが見えてきます。あまり、目先のことだけにとらわれずに、その先のプランを設計し、それに近づくよう少しずつ努力するのもよいのではないかと思いました。
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