2010.01.29 掲載
数多く発行されている新潟の情報誌の中でも、近年、手にすることが多くなったフリーペーパー。
「お金を払わずにこんなにたくさんの情報がもらえるの?」というくらい情報満載のものや、ターゲットを絞り、独自の切り口でこだわりの記事を掲載しているものなど、内容も様々。
上越エリアを中心に女性のニーズに応える提案型の情報誌「cocola(ココラ)」と、お得なクーポン券付きで佐渡を楽しむ情報誌「s-life(エスライフ)」の両編集長に“情報誌編集人からみる新潟”についてお話を伺いました。
ココラは、毎月1回、約66,000部を発行し、上越市及び旧新井市の全世帯にポスティングしています。フリーペーパーでは地域№1の発行部数。編集長の栗田浩子さんにお話をお聞きしました。
(インタビュー1)
“上越には海も山もある。でも街のなかに活気がない?”と、ココラを創刊。ちょうど2年前に東京からUターンし、ココラ創刊前の準備期間から携わっています。準備期間だけでも約半年かかりました。せっかく地元に戻ってきたのだから、「アクティブに楽しみたい。でも、情報が少なすぎる」という思いがあったのも事実です。
上越市と旧新井市の全世帯にポスティングしているので、ターゲットを幅広い層の女性に設定し「女性が元気なら、街は元気」というキャッチフレーズをつけました。単に街にある情報を発信するだけでなく、女性たちのニーズを掘り起こして、それに応えるようなプランを提案していきたい。一方通行の情報誌でなく、読者と商店、企業との橋渡しをするような双方向的なメディアになれればと考えています。
(インタビュー2)
地方の情報誌だからこそ、著名人に直接お会いしてインタビューすることができます。アーティストや俳優など様々な方にお会いできました。これが東京であれば、逆になかなか取材できないのでしょうが、せっかく地方に来たのだからと取材に応じてもらえることが多いようです。
あと、ココラに掲載したお店から反響があった時はうれしいですね。今月号も、まだ配布が終わらないうちから、問い合わせが数件あったとうれしそうにお店の人が話しているのを聞くと、こちらまでうれしくなりますね。やっててよかったと思える時間です。
(インタビュー3)
狭い地域での取材なので、毎回新鮮なネタがあるわけではありませんし、既存の媒体には、かなわない面もあります。なので、私たちは目新しさよりも、ココラ独自の「視点」を大切にしています。たとえば朝市を取材する場合、市で買った食材を使った料理というと、煮物などの和食をイメージしがち。それをココラの取材ではイタリアンシェフと朝市へ出かけ、パスタをつくってもらいました。生活目線で、自分たちらしさ、ココラらしさを出していきたいと思います。
(インタビュー4)
東京にいるころは「実家に帰ればおいしいものが食べられるし、遊ぶのにお金もかからない」と楽観的に考えていましたが、おいしいものは勝手に自生しているわけでなく、農業、漁業を営んでいる人たちの苦労があっての賜物です。そこに暮らす人たちへのリスペクトなしに、盆や正月に帰って来て、上げ膳据え膳で甘えていた自分を恥ずかしく思います。たとえ、ふるさとにUターンしなくても何かの形でふるさとに恩返しすることはできます。ふるさとを離れる人には「いつでも、いつまでも気持ちよく帰って来られるふるさと」を残していくことを考えてもらいたいですね。(自戒を込めて・・・)
次に、佐渡の活性化をコンセプトに、元気で楽しく豊かに過ごせるようにと、2004年5月に創刊したフリーペーパー「S-Life(エスライフ)」編集長、西野春彦さんにお話をお聞きしました。
(インタビュー1)
創刊時は建設会社でエスライフの制作に携わっていましたが、現在は独立して、また、紙面もリニューアルし、発行しています。発行部数は18,000 部。奇数月に発行し、主に店頭に設置。始めたきっかけは、佐渡が紹介できる情報誌を全く知らず、「もっと佐渡のお店・イベントを紹介する情報誌があればいいのに」と思ったことからです。思いというものは実現するものですね。情報誌発行のための編集スキルは、専門書やインターネットで習得しました。また、広告掲載などの営業は、東京での営業経験が活かされています。
(インタビュー2)
情報誌は、紙という保存性のある情報を手に取ることができるという利点や、クーポンを主体とした販売促進のツールになるという利点があります。また、作り手側にとっても自分たちの努力や苦労した結果がアウトプットとして、紙に残るのはいいですね。
さらに、1年間はネット上でも見ることができますし、携帯電話からも情報を取り出すことができます。また、掲載されている情報は佐渡地域の観光名所、グルメ、ショッピングに関するものですので、まさに生活圏に密着した地域の情報誌といえます。
それから、この仕事をしていて、読者から「いつも見ています」という声を聞く時が一番うれしい。お店側からも「おかげでお客さんがいっぱい来たよ」と言われた時にも同じくやりがいを感じます。
(インタビュー3)
佐渡は、物流や人の流れが緩やかですが、その反面、情報が閉ざされることによって、地域の伝統や芸能が守られたことと、美しい田園風景が残っていることをうれしく思います。また、佐渡にいる人たちが、これらを守ろうとする心を持っていることもうれしい。どこへいっても、行動範囲内に海があり、山があり、川があり、平野があります。それによってもたらされる海の幸や山の幸。
最近では、トキの放鳥により環境にやさしい農作物づくりに取り組んでいます。農村、漁村には自然と共生する、たくましく生きるお年寄りたちがいます。佐渡は人・自然・伝統がそろった感動の島なんでしょうね。
(インタビュー4)
今は就職が厳しい時期といわれています。ただ、これは視点を変えれば、Uターンできるチャンスかもしれません。せっかく都市へ行って勉強できたわけですから、地元と都市との違い、良い所とそうでない所の両方がわかったと思います。都市にない地元の良さ(自然・環境・産直品・やすらぎ・資源・ネットワークなど)を都市に向けてPRしビジネス化したり、逆に都市の良さを地元に持ち込んで、ビジネス化していけばおもしろいと思います。最初は失敗もあり大変でしょうが、自分自身で経験したことは、自分の身につくと思います。自分は何をしたいのか、自問自答し、強い気持ちで望むことが大切です。後は思ったらすぐ行動することです。
(終わりに)
情報は、自分でも十分に集められる時代です。しかしながら、編集人のフィルターを通して、料理された情報には、新たに気付く地域の魅力も多い。インタビューを受けてくださったお二人とも、たまたまUターンされた方ですが、情報誌づくりに当たって、住んでいる地域を俯瞰できているなとも思いました。地域のために作られた貴重な情報源を入手し、暮らしにもう少しだけアクティブさを加えてみるのもいいかもしれませんね。
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