2013.08.28 掲載
vol2
「古本いと本」店主
伊藤かおりさん
vol2
1987年生まれ。新潟県関川村出身。東京の大学で4年間栄養学を学んだ後、Uターン。新発田市の企業に約1年半勤めた後、退職し、2012年7月に新発田市駅前通り商店街の『まちカフェ・りんく』の中に、古本屋『古本いと本(いとぽん)』を開業。現在は古本販売の他にも、「本」を切り口に、人と人の間にコミュニケーションが生まれるようなイベントを企画している。
「何だか面白そう。試しにやってみようかな。」
そんな思いつきから始まって、一歩踏み出してみると、思ってもみなかった展開になることはありませんか?今回は、私が本屋を始めることになったそんな一歩の一つ、「一箱古本市」についてご紹介したいと思います。
一箱古本市は、みかん箱一箱分の古本を誰でも自由に販売できるイベントで、いわば古本のフリーマーケットのようなものです。2005年、東京の谷中・千駄木・根津で「不忍ブックストリート」として初めて開催され、その後は全国各地で開かれています。新潟市では、ニイガタブックライトという団体が主催で、2011年6月に第一回目が開催されました。その頃は、本好きの一会社員だった私。本屋を自分で始めようとは少しも思っていませんでしたが、この古本市が開催されることを、新潟市の北書店という本屋さんで知り、「むむ!これは参加しなければ!」とすぐに申し込みました。この一箱古本市が、自分にとってのターニングポイントになるとも知らずに・・・。
一箱古本市に申し込んだのはいいものの、一体どんな本を並べようか?ああでもない、こうでもないと考えながら、家にある本を選び、古道具屋さんで買ったトランクの中に並べてみる日々。「この本の隣は、これがいいよなあ」「せっかくだから、こんなチラシもおいてみようかな」そんな風に考えている時間は、不思議なことにあっという間に過ぎていくのです。
思えば学生時代から、私は人と違うことをするのが好きでした。仲間と一緒にどこかへ行くよりも、誰も知り合いのいない場所へ一人で行ってみたい。そんな気持ちが強い、一匹狼タイプでした。そのため、この古本市も単独で出店することにしました。孤独な一箱古本市は果たしてどうなるのかと不安もありましたが、それ以上にどんな人や本に出逢えるのか、楽しみで仕方なかったのです。
いざ当日、トランクと30冊程度の本を持って会場へ。90店ほどの一箱が勢ぞろいした、大賑わいの古本市でした。一人で出店したので孤独になるかと思いきや・・・本を手に取ってくれるお客さんや、お隣に出店している方と喋りっぱなしの1日でした。この古本市に出店していなければおそらくずっと他人だった人とも、本を間に挟むことで気軽にコミュニケーションが取れることに驚きました。
家と会社の往復という普段の生活では、世の中の大半の人と一生関わることができないと思います。でも、本が人と人の間にあることで、見知らぬ人ともほんの一瞬でも、笑顔で挨拶をしたり語り合ったりできる。本が好きという共通点があるだけで、こんなに距離は近づくのかと感じました。今まで一人で読んで楽しんでいた、本の新しい一面が垣間見えた気がしました。
そして、何気なく参加したこのイベントで出会った人たちには、後々大きな影響を受けることになるのですが、その話はまた次回のコラムにて。
ほんの思いつきで、普段の自分の枠から飛び出してみると、そこから思わぬ方向に転がることがあります。その一歩は、すぐ目の前にあるかもしれません。大きなことではなくても、「面白そうだなあ」「気になるなあ」という自分の感性を信じて、小さなチャレンジをしてみると、思いもよらない明日が待っている可能性があります。
今回、ご紹介した一箱古本市。本好きの方なら、ぜひ見に行ったり、出店してみたりしてください。
9月はなんと、新潟市内で4回も一箱古本市が開催される予定です。本を間に挟んで、店主さんとお喋りするのも楽しいですよ。私もどこかに出店するかもしれません。もし古本いと本を見かけたら、気軽にお声がけください。
イベント情報や、古本屋の日常をブログで日々発信しています。
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