2014.10.08 掲載
vol3
宮崎正美さん
佐渡市在住
vol3
熊本県出身。1998年1月、佐渡を拠点に活動する太鼓芸能集団鼓童の研修生面接のため、佐渡へ。その年の4月から研修生として佐渡島の生活を始める。その後、鼓童の正式メンバーとして全国はもとより各国で演奏活動を行い、この春から佐渡太鼓体験交流館「たたこう館」のスタッフとして勤務。
何だか、あっという間に佐渡の夏が通り過ぎていきました。
もうとっくに秋。すでに冬を思わせる寒い日もあったりして・・・。
今年の秋、我が家の一大イベントは、稲刈りです。
小さな我が家のすぐ隣の小さな小さな田んぼで、春から順調に育った稲たちが、ちゃーんと黄金色になりました。
自然は偉大です。初めてですし、無肥料、無農薬、見てるだけの稲でしたが、立派に実りました。 (それとも旦那様が夏の草取りを頑張ったから、かなぁ。)
朝早く、露でまだ葉が濡れている時間から稲刈りを始め、午前中で終了。勿論手刈りです。
刈っていると、例のごとくご近所の先輩方が「どれどれ・・・」といった感じで、様子をうかがいに来ます。
皆さん、プロですもの。稲を手に取り、ジーッとみて、籾を一粒一粒触りながら「んー・・・」。
「こりゃいい出来だ」と言われると、我が子を褒めてもらったようで、嬉しくて、つい笑顔に。
セニアカーに乗ったおばあちゃんも嬉しそうに「美しゅうできたなぁ」と言って通り過ぎます。
みんな手刈りをする私たちを見て、昔を思い出しているみたい…。
きっと、機械化される前は大変な苦労もあったのでしょうが、それだけ収穫の喜びも大きかったのでしょう。
まだ少し青いかなと思うところもありましたが、そのムラを楽しむこととして、全部すっかり刈りました。
稲刈りは順調にいき、差し入れのアイスを食べたら、次ははざ掛けの準備です。
これが、思った以上に、時間がかかり大変でした。
体験したことがある人なら、皆さんお判りでしょう。
稲を藁2~3本で束にする作業があるのですが、その縛った藁を親指できゅきゅっと挟んでうまいことほどけないようにする方法があるのですが、これがど素人の私には難しい!
鼓童の研修生時代を思い出し、頭ではなく体が覚えていたようで、手は勝手に動き、束にすることはすぐ出来るようになったのですが…親指が痛いんです。ギュッと絞ったその藁に無理やり押し込むのですから。私が、「痛いよぉー」と弱音を吐いていると、通りがかりの先輩が、ささっと縛り、ハイ次!ハイ 次!と束ねていくではありませんか。しかもしっかり縛れているし、どの束も同じぐらいの量で揃っているのです。「ここで適当にやってはいかんのだ、ここを丁寧にやっておけば後が楽」の一言。その妙技をしっかり見て、真似をしてみたけれど、やはり痛い。またまた通りがかりの先輩が「そうきつう縛らんでもいいわさー、指ん痛ゃーなるよ」と。なるほど。やはり何事にも適当な塩梅というものがあるらしい。結局私たち夫婦2人分ぐらいの束を作ってくださった仙人のような先輩にお礼を言い、いざはざ掛けへ。ご近所のはざ木をお借りしました。そこにかけられ、夕日を浴びる稲を見てほくほく。
この日は家に帰ると、さすがにどっと疲れが出ました。
毎朝このはざ掛けした稲を見ながらの通勤です。雨の日は悲しく、晴れると嬉しい。まるで稲になった気分です。
さて、4月から勤め始めた「たたこう館」ですが、早7か月が経ちました。春、夏と修学旅行生や観光で佐渡においでのお客様が大勢いらっしゃいました。これから秋、冬を迎えるにあたり、佐渡の観光施設にとって、厳しい時期を迎えます。
しかし!私はそんな時期だからこそ、面白い企画を立てて、自分たちが楽しめることをしたいと考えています。12月には「たたこう館まつり」開催を思案中。寒い佐渡だからこそ、体を温める太鼓教室や、体も心も温まる人形劇公演や、温かい飲み物を出すちょっとした喫茶店など、何かそんな素敵な空間 を、この「たたこう館」でつくることが出来ないかあ、と妄想中です。佐渡に住む人たちと、「自分たちの手で自分たちが温まる企画」を一緒に作り上げることが出来たら、これまたほくほくです。私、「ほくほく」「ほっこり」することが好きなんです。老若男女問わず、是非皆さん一緒にほくほくしませんか。
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