2008.09.05 掲載
新潟の祭りは活気がない?
そんなことはありません。県内各地で熱い祭りが開催されていますが、中でも「にいがた総おどり」は、祭り好き新潟人のDNAを呼び覚ます熱気とパワーで人気急上昇です。
300年前、港町新潟には4日4晩踊り明かした祭りがあったと言います。その様子は『遠く沖より眺めれば、祭りのかがり火によって、新潟の空が真っ赤に燃えてみえた』と伝えられ、幕府直轄となった新潟の初代奉行・川村修就が描かせた「蜑(あま)の手振り」絵巻物に見ることが出来ます。町中の堀にかかる橋は74あり、その橋の上で小足駄(こあしだ=下駄)をはいた人々が、しょうゆ樽や酒樽を打ち鳴らすリズムに合わせて乱舞する姿がありました。
当時の町の活気や人々の情熱を、祭りを通じて復活させていこうとするのが「にいがた総おどり」です。2002年に若者が中心に立ち上げた祭りは毎年9月中旬に開催され、2007年には、3日間で参加団体220団体、踊り子総勢1万人、市民ボランティア400人が参加、観客動員数32万人を超える新潟市を象徴する祭りに成長しました。
新潟総踊り祭実行委員会副会長の能登剛史さんに話を伺いました。
総踊り祭参加のルールは、「心を込めて踊ること」です。民謡、ジャズダンス、ヒップホップ、コンテンポラリー、創作ダンスなど、ジャンル問わず様々な踊り団体が出場しますので3日間見飽きません。
その中でもやっぱり目玉といえば「下駄総踊り」でしょうか。300年前の踊りを再現したもので、踊り子たちが樽砧のリズムに合わせ小足駄をはいて踊ります。今年の「下駄総踊り行列」には、巻の「やかた竿燈」が合流し、今年新たに花形という踊りも加わります。楽曲も新しくしました。1,000人の踊り子が古町通りを練り歩く行列をぜひ観てください。
次世代を担う子どもたちに新潟に誇りを持ってもらいたかったんです。そして次の世代の子どもたちの為に良い世の中を祭りを通じて創りたかったんです。踊り子のほとんどがファミリーで参加されています。親は子どもの踊りに感動しますが、子どもたちだって大人たちが生き生きと踊っていれば感じるものがあるはずです。
夏休みに子ども向けワークショップも開催しています。踊りの講習だけでなく、陸・海・空の生き物に会いに、水族館に行ったり森でバードウォッチングをしたりします。生き物に関心をもつことは、命の大切さや環境を考えることにつながります。祭りの時にはゴミの分別を徹底し、リサイクル、エコ活動にも力を入れています。
300年前に4日4晩踊り明かした祭りがあったように、踊りを楽しむ素地はあると思います。ダンス用品のメーカーの方から聞いたのですが、新製品は北海道と新潟で売る、踊る人の数が1位2位なんだそうです。高校の体育祭の応援でも踊りが入りますが、他県ではあまりないようです。2万人の市民が踊り手として参加する新潟祭りの民謡流しもそうです。踊りを楽しむという文化に関しては新潟は全国でも有数だと思います。
今、県内各地の祭りのなかで、総踊りを取り入れたいという依頼があって、あちこちで、下駄総踊りの講習会を開いています。岩室温泉では、祭りを活性化させようと、2か月間毎週講習会をして温泉街の通りを練り歩きました。例年まれに見るたくさんのお客様が来られたそうで、とても賑わいました。
既成概念にとらわれず、異文化と交流していこうという柔軟性が港町新潟のポテンシャルだと思います。
ボクもまだ若者だと思ってますから偉そうなことは言えないんですが、単に過去の物をそのままやるのではなく、祭りを通じて心の豊かさをはぐくむ日本人ならではの、祭りの形態が今必要だと感じていて、それは市民の中から生まれてくる祭りです。そういう、もう一度原点にもどるような新しい祭りの流れが出来ているように思います。
新潟には、祭りだけでなく、市民の中から生まれてきた様々な活動があります。若くても経験がなくても頑張ってやれば、やったことの成果が出やすい地域だと思います。
好きな言葉に「迷わず進め正直の道」があります。多くの若者にとって、新潟がその舞台となることを願っています。
職場の同僚を中心としたチームで参加している清水さん(29歳)に、総踊りの魅力について話を伺いました。
○きっかけ
知人に誘われて、ボランティアスタッフとして参加したのがきっかけです。
大学在学中にも総踊りのことは知っていましたが、卒業後、新潟に戻ってきて、間近で見たとき、何とも言えない衝撃が走りました。こんな祭りがあったのかと驚きました。
人前で踊るのはちょっと、と思ってましたが、一緒にボランティアで参加した仲間と意気投合し、見てるより踊った方がいいんじゃないと、チームを結成してしまいました。
(つづく)
○総踊りの魅力は
一生懸命踊って、観客から拍手で返してもらうと、踊りの楽しさでつながっているんだと感じられます。もっと練習してもっと感動を伝えられるようになりたいと思います。
それと、新潟では、チームの枠を超えて個人参加ができる合同演舞というのがあって、県内外の踊り子とみんなで創って、ともに踊って、会場全体で盛り上がる。各地で大きな踊りのイベントはありますが、この一体感やパワーは新潟の魅力です。
私もそうでしたが、直に触れてみないとわからないので、ぜひ見に来てください。何か物事を進めるときのエネルギーをきっともらえるはずです。
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