2022.12.26 掲載
山田 華緒季さん
柏崎市矢田
◎活動開始
2020年9月
◎経歴
・出身:新潟県上越市
・石川県の美術大学を卒業後いったん就職するが、小さな集落での地域づくりに関わりたいという気持ちが高まり、地域おこし協力隊を志望。
◎世帯構成
ひとり暮らし
もともと民族衣装に興味があり、大学時代も中国を訪れて少数民族の手仕事を調査した経験を持つ山田さん。亮布(リャンプー)という独特の光沢感を持つ布に惹かれ、自分自身で制作も行っていました。「美しい布なのですが、高齢化や若者の出稼ぎなどで担い手が減り続けていました。同じことは日本にも起きています。それならば、古いものをアップデートして、新しい方法で継承させたいと思うようになりました」。
地域おこしをキーワードに進む道を探っているときに、移住スカウトのサイト「SMOUT」で矢田地区が地域おこし協力隊を募集していることを知りました。「ミッションは、矢田内外の交流を図ること、農事組合法人のサポートをすることの2点で、柔軟に活動できるという点が良いなと思いました」。2020年6月の2泊3日のお試し滞在を経て、9月に着任しました。居住と活動の拠点は空き家になっていた商店。「壁は自分でペイントしましたが、トイレや水回りは集落の人がリフォームしてくれ、受け入れ体制を整えてくださったので心強かったです」。その拠点を矢田屋と名付けました。
山田さんが移住した矢田集落は、新潟県柏崎市の里山のふもとにあります。「海の印象が強い柏崎ですが、ここは田畑が広がるエリアで、米はもちろん、枝豆やマコモタケなどの農業が盛ん。一方、市街地に近いので生活も便利です」。山田さんは矢田屋を使って、週1回の折り紙の会、月1回の矢田ガク講座、季節のイベントなどを開催し、その予告や報告を回覧板やラインで広く発信しています。
「矢田ガクというのは、地域の人に先生になってもらって得意なことを教えていただく講座です。そば打ちやクラフトのハンドメイド、山菜採集などいろいろなことを教えてもらいました」。そして、2022年11月には、初めて「矢田マルシェ」も開催。「そば打ちやハンドメイドのワークショップ、野菜や加工品、お惣菜、コーヒー、お菓子などの販売、紙芝居やダーツなども行う、小さなお祭りです」。イベントへの出展や開催の準備に多くの人たちが協力してくれ、内容は充実。集落の人だけでなく、集落外からも来てほしいと山田さんはチラシやインスタグラムを駆使し、広報にも力を入れました。
2021年には大きなプロジェクトにも挑戦しました。矢田の伝統行事・神楽の衣装を新しく作り、祭りを次の世代に引き継いでいくことです。「集落では、一度途絶えた神楽を数年前に復活させたのですが、衣装がボロボロになっていました。新しくできないだろうかと相談され、亮布(リャンプー)を思い出しました」。
中国の少数民族が作る布を矢田で再現し、それを矢田の神楽の新しい衣装にする――突飛なようにも感じられますが、実は両者には共通点がありました。「高齢化や時代の変化で、伝統継承が難しくなっているという問題です。どちらの伝統もこの先もずっと続くようにと思いを込めて、『祈りをつなぐ祭衣装プロジェクト』を提案し、100名以上の住民のみなさんに関わっていただいて、衣装を作り上げました」。5月にスタートし、藍染め、光沢加工、試作、裁断・縫製を経て、10月4日の秋まつりでお披露目。プロジェクトの過程は動画と冊子に残しました。
山田さんは地域おこし協力隊の役割とは「地域の方が気負わずに地域の活動に関われる仕掛けづくりをすること」と考えています。それは、
将来的に地域の人たちの自走に繋がります。「祭衣装プロジェクトの過程を映像に残したのは、プロジェクトの企画や実行の参考にしてもらうだけではなく、映像を見て『矢田ってこんなことができたんだ』と気づき、この地域に誇りと愛着を持ってほしかったからです。そういう思いが地域の未来づくりには必要だと考えています」。
最後に、これから地域おこし協力隊を目指す人たちへのアドバイスを伺いました。「私は行政の方に加え、地域のまちづくりコーディネーターさんにも相談に乗ってもらえ、物理的にも精神的にもとても支えられました。知らない場所に入っての活動なので、相談に乗ってくれる人や組織があるかどうかは大事だと思います。情報を集めるときや下見にいくときに確かめてください」。
矢田に来て登山にはまったという山田さん。「海も山も一望できる、米山からの眺めは最高です」。プライベートも充実していると微笑みました。