2022.12.12 掲載
木村 綾子さん
村上市
◎活動開始
2021年2月
◎経歴
・出身:新潟県村上市
・東京女子体育大学でラクロスに打ち込み、卒業後は社会人チームで活躍し全日本選手権で7連覇、8回優勝。地域おこし協力隊としてUターン。
◎世帯構成
母と二人暮らし
網のあるスティックを使ってボールをゴールに打ち込むラクロスは、「空中のホッケー」とも呼ばれる激しいスポーツです。木村さんは大学時代からラクロスに打ち込み、社会人クラブチームでは全日本選手権8連覇を成し遂げました。その後、Uターンを考え始めたとき、村上市猿沢地域で地域おこし協力隊を募集していることを県のサイトで見つけました。村上市は木村さんの故郷、問い合わせるとUターン歓迎との返事を得ました。「ミッションは竹林の整備と活用で、知識や経験はありませんでしたが、地元の役に立ちたいという気持ちで志願しました」。
2021年2月に活動を開始した猿沢地域は、村上市の市街地にある木村さんの実家から車で10分。「こんなに近いのに、ここは日本の昔話の舞台のよう。風景も積もる雪の量も実家付近とは大きく違うことに驚きました」。
里山のふもとにある猿沢地区は竹林が多く、GWには地域の人が筍を収穫して道の駅などで販売しています。その筍はえぐみが少なく、さっとお湯で湯がくだけで食べられると評判です。とはいえ、生えてくる量が多すぎて販売だけでは追い付かず、すぐに成長しては道路にかぶさって通行を妨げるなど、問題になっていました。そこで、猿沢竹林環境整備組合はこの課題にともにに取り組む地域おこし協力隊を求めていたのです。
組合が対策として注目していたのは、竹でメンマを作れないかということでした。日本で食べられているメンマは、ほとんど中国の真竹で作られた輸入物です。「でも、日本に生える孟宗竹(モウソウチク)でもメンマはできるらしい、むしろシャキシャキした食感でおいしいらしいというところまでは地域の人たちも知っていました。でも、具体的な方法がわからない――そこで、純国産メンマ製造のパイオニアである日高栄治さんに連絡を取って事情を説明し、オンラインで加工方法を教えていただきました」。
1~2mに伸びた若い竹を塩漬けにして熟成させ、熟成後に塩抜きをして味付けをするとメンマが出来上がると知った木村さん。「まずは行動だ!」と、2021年5月に塩漬けに初挑戦しました。翌年は集落の皆さんに協力してもらいながら、5日間で前年の約6倍の116㎏を塩漬けに。拠点として使用している集落センターには、メンマの原料になる塩漬けの竹が入った樽が積み上げられました。「やっとベースができたというところです」。
次は活用の方法です。塩漬け作業と並行して、木村さんは村上産のメンマをアピールする取組も始めました。「メンマを作って試食してもらったり、また、塩漬けの竹とレシピを配って感想を聞いたり、まずは猿沢地域の人に認知してらおうと思っています」。調理まで行える道具や人材がそろっていないので、今目指しているのは、塩蔵の竹を食品メーカーや飲食店に卸し、調理のプロに様々な特産品を作ってもらうスタイルです。実際に、村上市内の店や人に話を持ち掛け、メンマ・シュウマイやメンマ・クッキーの試作にこぎつけました。
「こうした活動は私一人ではできません」と木村さん。メンマの開発には力強いサポートがあるのだと言います。それは、地域の人たちはもちろん、猿沢竹林環境整備組合、地域づくりを推進するNPO法人都岐沙羅パートナーズセンターの存在です。相談に乗ってもらうだけでなく、提案やキーパーソンの紹介、イベントへの招待など幅広くフォローしてもらえるので、孤立することなく活動を続けられたと木村さんは振り返ります。
東京で暮らしていたとき、たまたま村上市のトライアスロン大会に参加した友人が「海も山も町歩きも楽しめて、魚も米もお酒もおいしい。村上はすごい!」と感動したのがきっかけで、村上の魅力を意識し始めた木村さんですが、地域おこし協力隊として活動して初めてもう一つの村上の魅力に気が付きました。それは『人』です。「ここでは、人と人との距離が近く、新しい人やコトを温かく受け入れてくれる。さりげなく手を貸してくれる――そういう人たちに助けられて、ここまでやってこれたのです」。現在は、地域の情報を掲載した「SARUSAWA Bamboo NEWS」の発行や、集落センターの玄関前に「手描きツイッター」と呼ぶお知らせを毎日掲げて、身近な情報を発信。8月から10月の朝活体操では、運動や健康の知識をプラスして「地域のお母さんたちと楽しく動きました」。
木村さんの地域おこし協力隊の任期は、折り返し地点を過ぎたところです。「知識ゼロの自分を受け入れてくれた村上のために、これからも、また、卒業後も継続してできることを探して活動していきたいと思います」。