2022.02.15 掲載
森 瑞絵さん
新潟県中魚沼郡津南町 三箇地区
◎活動開始
2020年6月~
◎経歴
・出身:神奈川県横浜市
・横浜市で保育士として6年間勤務した後、津南町地域おこし協力隊に。
◎世帯構成
ひとり暮らし
神奈川県横浜市で生まれ育った森瑞絵さん。関東学院大学で保育や教育を勉強し、卒業後は横浜市内で6年間、保育士として勤務したそうです。
「保育士として働いていた頃から、自然の中で子どもが育ち、成長することの重要性を感じていました。同時に、自分にはいろいろな面で経験値が少ないとも考えていました」。
2017年5月、自然を感じようとたまたま訪れた十日町で、宿泊した民宿の方に、集落の掃除などのボランティアに誘われました。自然とともに暮らすこの土地の生活を体験し、驚きと刺激を受けたと話します。
「地域の方と話せたことが大きかったです。自然と共にある暮らしについて考えるきっかけとなり、充実した暮らしを送れるような感じがしました」。
保育士として働きながら3年間考えた末、2020年6月に森さんは津南町での地域おこし協力隊としての生活をスタートさせました。
「自然の中で生活する経験がしたいと思い、保育士として働きながら、新潟県内のいくつかの場所を訪れました」。
その中で、『地域おこし協力隊』の存在を知り、『津南町』にも興味を持った、と話す森さん。
「津南町がいいなと思った理由は2つあり、1つ目は、協力隊のスタイルがミッション型ではなく、地域密着型で募集していたこと。地域の方が大事にしてきた暮らしの中に、これからの生き方を考えるヒントがあると感じていました。2つ目は、移住ツアーに参加した際に、住民の方のあたたかさを感じたことです。町の外から来た人たちを受け入れようとするオープンな姿勢や雰囲気がとても印象的でした」。
移住ツアーが終わった後も、住民の方との交流が途切れることはありませんでした。
「ツアーが終わった後も温かく接してくださり、津南町で暮らすことへの不安などを話すと快く答えてくださいました。このことが、津南町への移住の大きな決め手となりました」。
津南町の『三箇地区』という場所に移住した森さん。農作業や生活に必要な軽作業などを手伝うことで、地域の生活を学んでいるといいます。また、自分の感じた驚きや発見をお便りにし、毎月一軒一軒に手配りしているそうです。
「作業中の何気ない会話の中にも得るものがたくさんあって心に響いたり、自分の生き方を考えさせられるような言葉をみなさんからいただいています。『ここが魅力』という言葉をあえて使わずとも、みなさんにこの三箇の良さをフィードバックできればいいなぁと思っています」。
そんな思いを2021年12月、別の形で具現化した森さん。
「みなさんのお家にお邪魔してお話していると、みなさんにそれぞれ、先祖代々受け継いできた得意なことがあると分かりました。そこで、その得意なことをみんなで学び合う、という趣旨の『おらほの暮らし』というイベントを企画しました。『おらほの暮らし』とは、この場所の方言で『私たちの暮らし』という意味です。第一回目は、しめ縄づくりと保存食・こんにゃくづくり。それぞれ定員を上回る募集があり、ぜひ次回も実施してほしいという声をいただきました」。
次回の要望は、麹づくり。冬、雪に閉ざされるこの豪雪地帯で重宝された調味料づくりのもとである麹のつくり方をみんなで学べるように、今は講師役を探している途中です、と森さんは話してくれました。
「自然とともにある暮らしに興味を持ってこの場所に移住してきましたが、1年ほど住んでみて思ったことがありました。『四季』というものは自然から感じられるだけでなく、そこで暮らしている人の生活からも感じることが出来るということです。都会では季節が同じでもそれぞれの人が違うこと、違う動きをしています。しかし、三箇ではあちこちでが同じ動きが見られます。春になったら山菜を摘んできて、庭先で揉んで干す。秋になればみんなで稲刈りをする。冬前には干し柿を一斉につくり始める。人が生きているところに季節を感じることができます。それはここに住んでいてとても心地よい瞬間。自然に沿った暮らしと、人々の繋がりが四季をかたどっているんです。」
それぞれの暮らしがある一方で、人同士のつながりもある。三箇に住む人生の先輩たちから多くのことを学んでいるという森さん。さまざまな考え方や、生活する知恵を日々吸収しているそうです。
「これから協力隊を目指す方には『学ぶ姿勢』を大切にしてもらいたいです。その地域に伝わってきたことや、住んでいる人の想いから何を学ぶか、それをどう活かしていくかを考えながら過ごしてほしいです。そうすることで、今後の人生に活かせるような、本当の意味で価値ある『経験』が得られると思っています」。
森さんは現在一軒家を借りてひとり暮らしをしているそうです。
「休みの日には、木材を使ってDIYのようなことをしています。私が一人で暮らすには大きすぎるほどの家を、いかに使いやすくするか、というのも楽しみのひとつです」。
また、コロナ禍で受けた影響についてもお話してくれました。
「コロナ禍で夏祭りは小規模になりましたし、そもそも中止になったイベントも多々ありました。それでも最近は、少しずつこの地域に残っているイベント事を行えるようになってきたと思います。お正月明けには塞の神を小学校の校庭で行いました」。
三箇のみなさんが代々受け継いできた文化や伝統を一つでも多く体験し、そこから得た学びを自分の中に落とし込んでいきたい、と話す森さん。
「協力隊卒業後、前職の保育士に戻るのか、別の道に進むのかは決めていませんが、どの道に進むことになっても三箇で学んだ経験や考え方を活かし、活躍できたらいいなと思っています」。