2016.03.31 掲載
vol5
農家
川崎哲也さん
35歳 関川村在住
vol5
7年前に関川村に移住。現在、奥さまとお子さん4人の6人家族。農業を始める前は国家公務員という経歴を持つ。仕事柄、様々な外国人と接するなかで、自分自身の生き方に疑問を感じ始め、衣食住の中で何ができるか考え、食に興味を持ち『農』の道を選ぶ。
先日、味噌を仕込みました。
「自然と調和した食と農を楽しみながら、関川村から元気と幸せを広げていこう」を目的に活動する農民仲間「はっぴぃふぁーむの会」。我が家も所属するその会では、毎年3月に味噌を仕込みます。自分たちで育てたお米と大豆、山北の自然塩、村内の湧水を使った、身体にも大地にも優しい自然味噌。
毎年、会以外の方も多く参加してくださり、今年は二日間の工程に、のべ70名が参加し、みんなで約200kgの味噌を仕込みました。たくさんの人の心が詰まった、エネルギーたっぷりの美味しいお味噌になるでしょう。我が家では味噌を仕込んで三年後くらいに食べ始めます。どんな味噌が出来るのか楽しみです。
はっぴぃの会が開催する食・農イベントには、家族連れの方が多く参加してくれるので、子供の人数も多いです。子供たちは、大人が作業する姿を横目に、走り回ったり、お絵かきしたり、お手伝いしたり、自由にその時空間を楽しんでいます。大人に言われなくとも、年上の子が小さい子の面倒をみながら、それぞれの子がその場で、やりたい事やるべき事を見つけていきます。そんな元気な子供の笑い声を背景音楽に農作業、何とも心地よいものです。
思いっきり遊び、お手伝いした後は、会の自然栽培の穀物や野菜を使ったランチ。ご飯とみそ汁、漬物などのおかず2~3品、シンプルなランチですが、みんなモリモリ食べます。心からの「いただきます」(命への感謝)と「ごちそうさま」(作り手へのねぎらい)は、見ていてもすがすがしく、幸せを感じます。本当、毎回子供たちの目がキラッキラなんです。
一方で、普段子供たちが集まる場では、ゲーム・スナック菓子が当たり前。それぞれの存在にあまり関心もない。同じ場にいても、みんながみんなの事を想いやる、子供同士で学び合う、自分の役割を知る、そんな状況が少ないように思います。
それは子供の問題ではありません。子供たちが健やかに成長する環境、社会を作っていくのが私たち親の役目。でも現代は、その親自身がどう生きていけば良いか迷っていると感じています
戦後、科学が急速に進歩・発達してきました。脳科学、医学、栄養学など、人間がより健康で豊かに生きれそうな知識・技術を研究をしてきたのに、現代の日本人は最も元気で、健康で幸せな時代を生きている、とは言い難い状況です。科学技術が進歩しても、「人生をどう生きるか、日々をどう積み重ねていくか」を伝えてくれる、「師」と言う存在が減ってしまったからではないでしょうか。
私は今、古事記を学んでいます。古事記には、古(いにしえ)の人たちが何を思い、どのように生きてきたのかがつづられています。何千年と命を私たちにつないできてくれたご先祖様からのメッセージ。古の人たちの生き方に思いを馳せ、私たちが何を目指して、今をどう生きればよいかを、自分なりに考えていきます。社会の変化、自分に起きる出来事にも落ち着いて対処できる、ブレない軸を、自分の人生の中に作ることが出来ると感じています。(古事記勉強会は新潟県内各地で広がっていますので、どこかで目にすることがあると思います)
「働く」とは「傍を楽にすること」「世の中のハッピィに貢献すること」。与えられた人生・才能を活かし、輝いて生き、周りの人が、次世代が歩んでいく道を照らす。昔の人にとっては当たり前の「働く」だったのかも知れません。でも、それが私にとっての「新しい働き方」です。
5回に渡り、農民川崎哲也のコラムを読んでいただき、ありがとうございました。今回のコラムに関わる全ての方々とのご縁に感謝いたします。
このページをSNSで共有する