2015.08.12 掲載
vol2
佐渡地域おこし協力隊
小川佳奈子さん
佐渡市在住
vol2
神奈川県横浜市出身。大学を卒業して、社会人を経験した後、英国に2年滞在。英国で無農薬野菜と出会い農業を仕事にと考えるように。そんな折、佐渡の地域おこし協力隊を知り応募。2013年10月から協力隊メンバーとして活動をスタート。新穂地区を担当。
田舎暮らしに憧れ、農業に関わる仕事をしながら自分のペースで生活したい。そんな思いから、佐渡への移住を考えるようになり、地域により溶け込みやすい仕事と思い、佐渡市地域おこし協力隊に応募しました。2013年10月に佐渡へ移住し、今年の9月末で丸2年が経ちます。この2年間で、自分が思い描いていた生活が手に入ったかと言うと、まだまだです。やはり現地に来て初めて分かることも多く、想像とのギャップもいい意味でも悪い意味でもありました。ただ、そう言ったすべてをひっくるめて、協力隊をきっかけに佐渡へ来て良かったと思っています。何の足掛かりもなく、祖母だけを頼りに佐渡へ来ていたら、きっと1年で実家に帰っていたでしょう。協力隊として新穂の人たちに受け入れてもらえたからこそ、この先もここで頑張って行きたいと思えるようになりました。
佐渡で生活を始めて、田舎でのんびり…という考えが、甘い夢に過ぎなかったことに気づきました。農繁期にもなると、農家さん(専業もいれば兼業の方も)は日の出と共に作業を始め、日が落ちるまで外仕事をするのはもちろん、夜は夜で、集落や地域の寄合があったり、芸事や趣味の集まりも盛んで、いつ休んでいるんだろうと不思議に思うほどです。忙しいのは農家さんだけでなく、佐渡は全島通してイベントごとが多いので、週末は何かしらイベントに駆り出されたり、自分が行ってみたい!と思うものがいくつも重なって、イベントをはしごする…なんてこともあります。
私も始めの1年目は、地域に溶け込むことが何より大切だと、あらゆる場に顔を出させてもらいました。今思うと、どこからどこまでが仕事か曖昧で、プライベートの時間との両立に悩んだりと、目まぐるしい日々でした。協力隊という仕事ならではの、地域とつながる「下積み時代」は、必要不可欠なものだと思っています。この1年で出会った人、もの、ことの濃密さは、今までにないものでしたし、今後につながる貴重な糧となりました。(同じことをもう1年と言われると身体がついていきませんが…。)
協力隊に限らず、佐渡に移住したいと考えている人には、地域との距離を、少しずつでも構わないので縮める作業を苦に思わないでほしいなと思います。「地域」というものがまだ生きているからこそ、続けられているお祭りや行事もあります。そこに、加わってくれる人が増えない限り、地域の連帯は崩れて行ってしまうと感じています。
元々、伝統芸能や昔ながらの風習を伝承していきたいという想いがあったので、協力隊のうちにできる限りのことは経験してみたいと思っていました。憧れの鬼太鼓は、本来女人禁制の世界とは知っていましたが、私の住む集落の鬼太鼓組には、幸いにも女性のパイオニアがいらっしゃったので、割とスムーズに仲間に入れてもらうことができました。それでも、私の扱いには色々と気を使ってくれているなと感じます。男性の世界へ女性が入っていくことの難しさはありますが、それを拒めるほど余裕がなくなってきているのも現実です。私が太鼓を打つ姿を見て、一人でも多くの女の子が自分も将来鬼太鼓を続けたいと、そして周りがそれを認める環境になればと願っています。
もうひとつ、「一緒にやらんかさ」と声をかけてもらったのが佐渡の人形芝居のひとつ、のろま人形です。まだ佐渡に来たての頃、初めてのろま人形を観てお腹を抱えて笑わせてもらいました。上演後、話を聞くと新穂の方々ということで、そこでまたひとつ、重要な出会いを経て、今年7月から一緒に練習をさせてもらっています。8月は早速舞台デビューも決まりました。人形の使い手が話す、佐渡弁がなんとも愛嬌のあるお芝居ですが、佐渡弁から練習の必要な私が四苦八苦する姿に、これもまた「俺の方が上手くやってみせるっちゃ」と担い手候補が現れることを期待しています。
地域での仕事が行き詰った時や、地域にどっぷり浸かってしまい違う視点からモノが見られなくなった時、同じ境遇の「仲間」がいることの有難みを実感します。地域にいる同世代の人たちや同じように島外から来た人たちにも、説明しづらい協力隊ならではの悩みや喜びを、共有できる仲間がいることは、とても大きいことです。
「お前たちには、どんな道でも佐渡でやりたいことを見つけて欲しい。協力隊の3年はその為に与えられた時間と思えばいい」。先日、協力隊の採用面接でお世話になった方に言われました。そんな風に、私たちを見守ってくれている人たちがいることも、大きな支えです。悔いのない3年を、次につながる時間を全うしたい。そんな思いが日に日に強くなっていくのは、責任感からか、はたまた情が移ったせいなのか。つくづく変わった仕事を選んだもんだと思います。
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