2014.01.24 掲載
vol4
鈴木恵美さん
佐渡市在住
vol4
埼玉県出身。佐渡市内のケーブルテレビのアナウンサーとして来島。ケーブルテレビ退社後は、地域のイベントや結婚式の司会、世界遺産を目指す相川金銀山周辺の街並みガイドなどを行う。2年前より、佐渡地区農山漁村体験推進協議会のスタッフとして、新潟県内外から訪れる子ども達の自然体験や民泊体験のサポート、グリーンツーリズムなどの事業に携わる。
佐渡の修学旅行の受入れシーズンは4月〜10月。この間は忙しくて目が回るような日々を過ごしているのですが、オフシーズンになるとゆっくり地域の方々と意見交換をしたり、勉強会をしています。教育旅行で佐渡を訪れた子ども達を一般の家庭に宿泊させて、農家漁家体験を行う「民泊」事業は今年で4年目になりましたが、受入れをしている地域の方々からは「子どもだけでなく、大人の人達にも来てもらいたい」そんな意見が出てきました。
これはチャンスです!じゃあ新企画やりましょうか!と、「大人も農山漁村地域で楽しめる企画」の構想を1年ほど前から練り始めました。
民泊を受け入れているある地区ではこんな話があります。夏になると、近所のキャンプ場には全国各地からキャンプをする人達が訪れます。中には、数日間滞在し、釣りをしながらのんびり余暇を楽しむ人達がいるそうです。そこで地元の人達は、夕方になるとそのキャンプ客の隣でイカをツマミに酒を飲み始め、「どこから来たんですか〜」と話し始め、終いには一緒に酒盛り・・・。
そこまではよくある話かもしれませんが、なんとそのキャンプ客はすっかりその地域のファンになり8月の地元の祭りに毎年来るようになり、挙げ句の果てにはスタッフになってしまい、地元住民と一緒に焼鳥を売って、一緒に盛り上がっています。
他の地域では、夫婦でやっている漁家民宿に、なんと35年通い続けている東京からのお客さんがいるそうです。そのお客さんは大学生の時に友人達と初めてその地域を訪れ、何年か通ううちに彼女を連れてきて、結婚して子どもを連れ、そして今では孫も一緒になって毎年のように通ってきているそうです。民宿のご夫婦も親戚のように付き合いをし、一緒に楽しみ、一緒に喜び合っているのだそうです。
このように観光客が地域のファンになって、何度も訪れてくれたり、時間に制約されないゆったりした時間を過ごし、地元の文化を理解する旅を「グリーンツーリズム」というそうです。写真を見せながら嬉しそうに語るご主人を見ていると、1人1人が心の交流をもつ旅こそ、多くの人に体験してもらいたいのです。
観光客が地域に入るにはまずきっかけが必要です。そこで私達は「村(集落)を歩いてもらう所から始めたい」と考え、さらに村を歩くには場所やルート、その土地のルールも守って歩いてもらうために、集落の人達に案内人をお願いして、その人に地域のことや歴史、文化を語ってもらいながら一緒に歩いてもらいたいと考えました。
例えば環境に優しい米づくりに取り組む新穂正明寺集落のルートでは、時々朱鷺が飛来します。朱鷺は大変臆病な鳥なので、大声を出したりするのは厳禁です。しかし朱鷺が見たくて私有地に入る人達や、カメラ撮影のために朱鷺を脅かす人もいて地元住民は困っているそうです。(朱鷺も困っているでしょう。)それでも多くの人達に朱鷺を身近に感じてほしいという地元の人達の優しい気持ちもあり、案内人付きの街歩きプログラムの候補地に上がっています。
他にも、地元住民と歩くことでしか知ることのできない歴史文化が佐渡にはたくさんあり、全島より9つの地域にお願いして街歩きプログラムの作成を行っています。プログラムの名前は「さどんぽ」佐渡をしなしな(ゆっくりと)散歩して欲しいという気持ちを込めました。
現在、9つの地域や集落より3〜4人ずつ「さどんぽ案内人」の候補を出していただき、研修や勉強会を行っています。11月中旬、初めて全員で研修会を行ったところ、30人ほどが集まり実際に街を歩き、意見交換を行いました。案内人候補のみなさんは60代〜70代が中心ですが、中には若い世代にも勉強させたいと、30代の方の参加もありました。
意見交換の中では、みなさんの観光客の受入れに対する意識が高いこと、村のためにがんばってやらんかさ!とやる気を持って参加していることに、私達事務局の方が驚かされました。「限界集落と言われて久しいけれども、我々に限界なんてないぞ!」といった気概です。
私のコラムは今回が最後になります。一年間ありがとうございまし た。
案内人のみなさんは、今年はどんな楽しい街歩きを展開してくれるでしょうか。
冬の間に勉強して、春にはデビューする予定です。
体制が整ったら、ぜひこの場でも別なカタチでご紹介したいと思っています。
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