2013.11.11 掲載
vol3
恩田富太さん
長岡市在住
vol3
長岡市新組地区出身。親戚から譲り受けて読んだ司馬遼太郎の小説『峠』に、古里長岡が描かれていたことをきっかけに、遅咲きの郷土愛に目覚める。10年間の東京生活からUターンし、広告デザインなどの仕事の傍ら、御当地伝記マンガ『長谷川泰ものがたり』の制作に参加。
(参加市民活動)
・「郷土の偉人 長谷川泰を語る会」漫画班
・「千桜塾」(若者に向けた郷土史講座)塾長
2011年、地元の偉人を描いた御当地伝記マンガ「長谷川泰ものがたり」の制作を通して、古里の誇るべき歴史を知り、自分も地域社会の一員であると知った僕でした。以降、地域コミュニティの中で活動をするのみでしたが、昨年2012年に転機が訪れます。
長岡郷土史の話で意気投合していた友人から、「越後RYO-MA倶楽部」という若者の市民活動グループに招かれたことです。端的には「坂本龍馬のようにボーダレスに、古里を盛り上げられる仲間を増やそう」というテーマのグループです。
そこで僕は、尊敬する長岡郷土史研究家の稲川明雄さん(長岡市河井継之助記念館館長)の講座を提案しました。長岡甚句の一節から「千桜塾(せんおうじゅく)」と名付けられた郷土史講座は、教科書のような暗記の歴史ではなく、古里の先人たちの生き様に学ぶ作りでお願いしています。長岡は他の地域に比べて濃密な歴史文化があると言われます。これを楽しく学び、ここに生活する人のプライドとして受け継ぎたいという趣旨なのです。これまで8回開催、20代からの若い参加者のご来場は他の郷土史講座には無い層であり、これは大きな意義だと考えています。
写真は、今年の「米百俵まつり」で皆さんと時代行列に参加した時のものです。
少し近場の話で、この夏の長岡市の豪雨災害の話をさせていただきます。
消防団員として復旧活動に入った地区のその後が気になり、再度個人でボランティアに入ってみました。初めて自発的に参加したボランティアでしたが、そんな気を起こしたのは、「越後RYO-MA倶楽部」を通してできた友人にボランティア経験者が多く居たことの影響です。また、同郷の先人である長谷川泰(はせがわ たい)の言う「※済生救民」が心によぎったのかもしれません。
被災地区では、委託業者だけでは行き届かない復旧活動が、ボランティアの力で行われていました。災害時に限らず福祉活動などもそうで、社会には行政の補助や民間サービスの届かないところがあり、市民の助け合いの上に私たちの生活が成り立っているのだと思い知らされたのでした。東日本大震災の記憶も新しく、身近には中越地震で被災を経験しているというのに、大変に遅まきの認識となってお恥ずかしい限りなのです。
今回は進行中の形で僕の経験を書かせていただいていますが、こんな風にして上京中10年のブランクを地域社会の中で上書きしている現在です。
※済生救民(さいせいきゅうみん)
広く民衆を救うという意味であり、医師・政治家として長谷川泰が目指した思想。
伝記マンガの普及に忙しくしていた頃、僕の住む長岡市では新市庁舎「アオーレ長岡」のオープンに合わせて、「市民協働条例」なるものへのパブリックコメントが募集されていました。僕はコミュニティ活動に参加してみて、主体的な実行と継続の大変さなども知り始めていました。この上「条例」が制定されるとどのようなことが起こるか?まさか強制力でもあるのか?と、不安のコメントを送りました。
それは僕の無知からの取り越し苦労でした。条例はあくまで市民の自主性を促すものであり、主体的で活発な市民活動を、行政との対等な連携の中で実行することが目的だと、今は理解しています。歴史を辿れば、江戸時代の長岡にも官民協働の気風が既にあったということです。
そのパブリックコメントへの応募がひとつの切っ掛けとなり、地元新組地区のコミュニティセンター長と共に、長岡市の「協働のまちづくり事例集」に掲載していただくことにもなりました。僕の活動ぶりが事例としてふさわしいのかどうか、それは今も甚だ疑問ではあるのですが、掲載を承諾させていただいたのにはひとつ考えがあってのことでした。
事例集への掲載については、市民協働というものは『僕のような者にでも、できるんです』と、身近な人たちに知って欲しいという考えがありました。思えば御当地伝記マンガの制作にしても、切っ掛けは町内のお父さん方から通りがかりに巻き込まれたことでした。ただ、機会があった時には、ほんのちょっとずつ自分のできることを提示してみながら、他の活動にも参加を広げて来たのです。
僕も感じますが、「ボランティアに近づくと何か強制されそう・・・」という心配もあるようです。しかしそもそも、自主性がボランティアスピリットの核心であるそうです。市民協働は、できる時に、できる範囲で活動する。それを少しずつ皆で分担すれば、素敵な地元ができあがるように思います。
ボランティア活動は「自己満足なんじゃないの?」と思われる向きもありますが、他者から喜ばれるのが気持ち良いというのも尊い感情ですし、それが助け合いの原動力ではないでしょうか。
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