2012.06.04 掲載
三条市出身の鳥羽和明さんは、高校を卒業後、東京の出版会社に7年間勤務したのち、Uターン。Uターンしてから1年ほど経過した頃、以前勤めていた出版会社から誘いがあり、その新潟支社で再び勤務することに。
新潟支社で勤務するようになって6年ほど経った頃、環境問題に取り組むNPO法人ネットワーク『地球村』の講演を聴いたことをきっかけに、環境問題への関心が高まり、出版会社を退職することを決意。会社勤めの傍ら約1年にわたり、個人で環境問題に関する講演会や上映会などの啓蒙活動を行ったあと、出版会社を退職し、NPO法人ネットワーク『地球村』東京オフィスで勤務するため、再び上京。
そして、2度目のUターンを果たし、NPO法人NPOさんじょうに勤務。現在、NPOさんじょうが指定管理者として管理する「三条市グリーンスポーツセンター」のセンター長。
「東京での生活は、終電で帰れれば早い方で、深夜1~2時にタクシーで帰る毎日でした。電車に乗れば満員、歩けば人混みで、まっすぐ歩けない街という印象でした。また、アパートやマンションでは隣の部屋に誰が住んでいるかわからず、人とのつながりが希薄に感じました。
一方、外から新潟をみることができたので、改めてよさに気付くことができました。新潟は、「自然の豊かさ」「食べ物のおいしさ」「人のよさ」のバランスが取れていますし、コミュニティがあって、人とのつながりを実感できるなど、金額換算できないものがたくさんあります。将来を考えた時に、首都圏での結婚、子育てをどうしてもイメージできなかったため、いずれは、自然豊かな地元で暮らしたいと考えるようになりました。」
Uターンしてから1年ほど経過した頃、以前勤めていた出版会社から誘いがあり、新潟支社で再び勤務することに。そして、人生の転機となる出来事に遭遇。
「出版会社の新潟支社に勤務していた時に、大阪を拠点に活動しているNPO法人ネットワーク『地球村』代表の高木善之さんの講演を聴く機会がありました。当時の私には、環境問題なんて他人事で、自分に何ができる訳ではないと考えていました。ところが、講演を聴いてみると、生き方を変えなければと思うくらいの衝撃を受けたのです。無関心でいること自体、環境悪化につながっていること、今さえ良ければいいという価値観が問題を引き起こしていることなど、自分自身にも原因があることに気付かされました。」
「この講演をきっかけに、環境問題に興味を持ち始め、私でも気付けたのだから、この気付きを多くの人に伝えたいと思うようになりました。そこで、会社に勤務しながら、個人的に環境問題についての講演会や上映会などの啓蒙活動をスタートさせましたが、ちょうどその頃は、競争社会から脱却したいと考えていた時期だったこともあり、特に次の仕事が決まっていた訳ではありませんが、約1年後に出版会社を退職しました。私の性格からも、次の仕事が決まってから辞めようと思っても、いつまでたっても辞められないような気がしたので、退職することに、一切迷いはありませんでした。
その後は、私に衝撃を与えてくれたNPO法人ネットワーク『地球村』の東京オフィスに勤務することになるのですが、新潟で生活したいという思いは変わっていなかったので、3年以内にUターンするつもりで再び上京しました。」
その1年9ヶ月後、結婚を機に2度目のUターン。そして、現職。
「現在は、センターの管理業務のほか、様々な感覚を使いながら、自然を直接体験する「ネイチャーゲーム」の指導などを行っています。特に、子ども達には自然の素晴らしさを伝えたいと思っています。例えば、キャンプで朝起きた時に感じる大地の感触。これは、布団では絶対に味わえません。小さい頃から、自然の素晴らしさを体験していれば、都会に憧れて外に出たとしても、いずれ戻ってきてくれると思うのです。個人的にも、もっともっとスローかつシンプルな生活をしたいと思っています。」
ネイチャーゲームとは・・・1979年にアメリカで発表された活動で、みる・きく・触る・かぐなどの感覚を使って、自然を楽しむプログラム。
仕事をするうえで大事にしていることをお聞きしました。
「普段、仕事をするうえで意識していることは『視点は高く、視野は広く』ということです。出版会社に勤務していた時に自然と身に付けたことですが、任された仕事だけでなく、全体をイメージしながら、なぜこの仕事が求められているのか、誰が何に使うのかなど、背景にある情報を読むということが大切なのです。
例えば、情報誌を制作する際、ひとつの工程を任されたとしても、全体の工程や前後の工程を把握することで、プラスαの作業を加えることができます。そうすれば、前後の工程がスムーズに進みますし、結果として全工程(商品)にも良い影響を与えることができます。また、似たような仕事を任された時には、こういう作業もしておきましょうかと提案することもできるようになります。本当に大切なことは目にみえないところにあると思っています。
出版会社に勤めた通算約14年間は、苦労も多かったですが、好きな仕事だったので、がむしゃらに働くことができましたし、その時の経験が今の自分を造っています。」
最後に、将来についての悩み・迷いを抱えている人へのメッセージ。
「私は、悩みとは人生経験を積むことによって出てくるものだと考えています。これから人生経験を積むべき人にとって、それは悩みではなく、「覚悟が決まらない」「経験不足のために将来をイメージできない」ということなのではないでしょうか。1日24時間の中で、悩んでいる(と思い込んでいる)時間はとてももったいないので、まずは、自分に素直になって、飛び込んでみることです。
人は、お金、地位、他人からの評価を気にするものですが、そういった足かせを外せば、とても楽になります。今の時代、何が起こっても不思議ではなく、安泰はありません。一度きりの人生、覚悟を決めて進むことが大切だと思います。」
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