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ニイガタビト

復興とともに (Vol.2)
- 最強の応援団 -

2010.10.19 掲載

 「復興とともに」と題して2回に分けて、お伝えしています。Vol.1では長岡技術科学大学の上村准教授のインタビューを、今回、Vol.2では、(社)中越防災安全推進機構復興デザインセンターの阿部巧さんのインタビューをお届けします。

現場に行きたい

 地域とボランティアをつなぎ、住民が主役の地域づくりのコーディネート役を果たしている(社)中越防災安全推進機構復興デザインセンターの阿部巧さんにお話をお聞きしました。
 「新潟市出身ですが、学生時代に京都でまちづくりに関する活動をしていました。講演会を開いたり、HPを制作したりと。関西では、行政に頼るというより、自分たちの力で自分たちがやりたいことをやっている人が多かったですね。大阪商人の心意気とでもいうのでしょうか・・・。ちょうど帰省してNPOの活動を手伝っている時に中越大震災が発生。新潟市にあるボランティア本部に毎日いたのですが、現場に行きたいと懇願し、12月には長岡に移り住んでお手伝いをするようになりました。」

(社)中越防災安全推進機構復興デザインセンターへのリンク

組織を立ち上げる

 神戸から来ているボランティアの方々から教わることが多かったといいます。「12月に入ると仮設住宅への入居が始まりました。仮設住宅でのケアはもちろんですが、地域に帰ってからのケアが最も重要なのではないか、生活再建に当たり必要な情報が行き届いているのか、支援策は使えているのかなど、神戸の教訓から多くのことを考えさせられました。民間の中間支援組織が必要だということも早くから言われていて、震災の翌年3月に、中越復興市民会議というイベントを開催したのを機に、イベント名と同じボランティア組織“中越復興市民会議”を発足しました。常勤スタッフは私を含め2名でしたが、多くの方々の協力があり同年5月に立ち上げることができました。」

現場の声を聞く

 まずは、被災地の声を聞いて廻ろうと、集落や仮設集会所で座談会を始めてみたそうです。「困っている話は次から次へと出てきます。雪を何とかしてほしい、道路を復旧してほしいなど。そんな中、旧小国町の法末地区の住民の方の言葉が心に残りました。法末地区で、廃校になった学校を活用した“やまびこ”という交流施設、これが自分たちの生活そのものだった、“やまびこ”を元どおりにしてほしいと。インフラ整備は行政がやる。自分たちができることは、これまでの暮らしの中での生活のハリや生きがいを取り戻すお手伝いなんだということに気づきました。」

最強の応援団

 「そこで法末地区にボランティアを連れて一斉に入りました。このニュースは新聞、テレビで大きく取り上げられました。姉妹都市で、“やまびこ”を拠点に交流をしていた武蔵野市民の協力や多くのボランティアの応援により、“やまびこ”は、2005年12月にリニューアルオープンしました。外からの応援受入や、民が主導での復興メニューづくりができたのは、自分たちが行政よりも被災者に近い位置にいるからできたこと。行政のように予算はないので与えることはできないけど、応援団になることはできるんだ、地域の方の前向きな気持ちを引き出すことはできるんだという大きな自信につながりました。」

横のつながり

 「震災後、多くの団体が地域づくりに立ち上がりました。震災がなくても過疎化が加速していた地域。共通した課題を抱えていることもあり、横のつながりを深めようと地域復興交流会議を1泊2日で開催したこともありました。こうした活動には、長岡の子育てサークルも活動に加わり、子供に農業体験をさせたい、無農薬野菜を栽培したいと、すっかり意気投合し、目的は違っても、こうした活動での横のつながりはさらに広がっていきました。」

何に価値を置くか

 「復興基金を利用した地域復興支援員は、現在48人います。年代も出身もキャリアも様々。県外からまちづくりをやりたくて来た大学院生、MBA取得者などキャラクターもいろいろ。5年間という期限付きですが、誰かからの指示を受けるのでなく、自分で仕事をつくるのが仕事。復興現場をフィールドに、震災後の新しい芽を支える。市町村合併により、住民の声が行政に届きにくくなったのではないかということが懸念されますが、住民と他者とのつなぎ役として、自分たちや復興支援員が果たす役割は大きいと感じています。」今年、30歳になるという阿部さん。正社員として安定した職を求める人だけでなく、人とのつながりや、人の役に立つということにやりがいや価値を置く人がちょうど増えてくる年代なのかもしれないと語っていらっしゃいました。

必要とされるマンパワー

 「不況で就職が厳しいといわれていますが、この地域ではマンパワーが大いに必要とされています。やることは山ほどあります。とくに震災後、外部との交流が一層盛んになり、農村に都心の学生が大勢いても、全く違和感はありません。何かやりたいという人には絶好のフィールド、活躍できる場です。目的さえしっかり持っていれば、受け入れ先はたくさんあります。
 内閣府の事業で1ヶ月間、農村でのインターンシップをするという事業があります(地域社会雇用創造事業)。学生だけでなく、30代の会社員など、農村を求めて来る人が多い。1ヶ月のインターンシップ後、この地域で働きたいと移住された人もいます。地域の人間関係に馴染めたら、後は飛び込むだけかもしれませんね。」

(終わりに)

 東京や名古屋といった遠方から夜行バスに乗り、自費でボランティアに来られる学生さんが多いそうです。関東や東南海はいつ地震があってもおかしくないと言われ続け、自主防災意識の高い人が多いし、阪神大震災のインパクトも影響しているそうです。神戸では、震災から16年が経過しても、その遺伝子は今でも、学生たちに引き継がれています。
 防災意識が醸成でき、地域コミュニティとも関われる。その上、雪かきの達人にもなれます。視野を広げ、防災体験や雪かき道場に参加していくうちに、あなたの武器が一つ、二つと加わっていくかもしれません。

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