2010.05.28 掲載
新潟には、後世に継承したい伝統産業が多くあります。
注文する人の思いを受け止め、形にしていくので、全てが職人の手作業によるこだわりの商品。少量多品種で、注文の高いクオリティに応え続けるもの。
伝統文化を後継しながら、新しい文化も創りあげている職人さんへのインタビューを通じて、新潟でのモノづくりの魅力をお伝えします。
美しい水を有する阿賀北地方・水原。瓢湖に美しい環境を求めて白鳥が飛来することからも、この地域の水質の良さが窺えます。
この地域で、創業260年余を経た今もなお変わらぬ製法によって伝統工芸品を作り続けている越後亀紺屋藤岡染工場の藤岡あゆみさんにお話をお聞きしました。
「兄が9代目として家業を継ぐことになっていたので、私は家業に関心はありませんでした。デザインを学びたくて大学へ進学したのですが、そこでたまたま出逢った染め物の奥深さに惹かれ、家業に携わることになりました。」
「春、秋はブライダルの手ぬぐい、夏はお祭りのはんてん、ハッピやのぼりの制作で忙しくなります。水で濡れた生地は、想像以上に重たく、染め物は意外にも力仕事なんです。技術そのものは受け継がれているものの、昔からの染料が手に入らなくなったり、また、顧客からの様々なニーズに応えるため、常に新しいことにも取り組んでいます。
染め物は洗えば洗うほど風合いが出てくる。糸の深くまで染めてあるので、プリントのようにはがれることもなく、使い手に馴染んでくる。使う人の色になっていくのです。」
「最近は、若い人が“ものづくり”に興味を抱き、この工場でも4名の若者が制作に携わっています。新潟はデザイン関連の仕事に関しては、関東圏に比べて遥かに少ない。ただし、ものづくりに関しては技術が集積している地域。伝統技術を継承しながらも新たな文化を刻んでいきたいですね。自分の想いが作品や商品になるこの仕事は本当におもしろいと思います。」
次に、村上市でオーダーメイドの家具製作をしている(株)加藤組住宅部の閃屋(せんや)の川鍋幸弘さんにお話をお聞きしました。
「大学に進学した後に、飛騨高山にあるオークビレッジに入学しました。代表を務める稲本正氏の書物を高校時代に読み、共感したのがきっかけです。日本の大量消費社会を、ものの大切さやエコを取り入れた循環型社会に変えていこうというもの。自給自足もその考えの一つです。そこでは家具製作のスキルも学びましたが、それ以上に地産地消、オーガニックを取り入れたビジネスを始めたいと思い、3年前に閃屋を立ち上げました。」
「閃屋は、無垢の木を使った家具、雑貨を制作している工房です。閃屋の家具の特長は、シンプルで主張がないもの。家具は暮らしの主役ではないですから。生きている木を使った、生きている製品なので、使ってこそ意味のあるものを創っていきたいです。それと、本物の素材を用いて、長持ちする木のものづくりをしているのですが、これも循環型社会の理念からくるものです。
また、地元の伝統文化も取り入れています。漆や堆朱に関しては高い技術を有する地域。伝統工芸品をプロデュースしたり、職人さんたちとコラボして、伝統工芸品の新しい形を創り出しています。」
「3年前にこの地域にIターンしてきました。暮らしてみて、不都合な点は何もありません。衣食住という言葉がありますが、生活に必要なものは揃っています。あえて少ないものをあげるとしたら娯楽的な施設ですかね。
若い方には、いい物、本物を判断できる目を養ってほしいと思います。それには、目先のことだけでなく、どうなりたいかというビジョンを持つこととその理由を持ち合わせることが必要です。そうすれば新潟暮らしが選択肢に入ってくるように思います。」
伝統技術を有する職人さんというと、その道何十年というイメージがあるかもしれませんが、今回インタビューしたお二人は、ともに20代でご活躍されています。いいものを受け継ぎながら、さらに新しいものを創る。伝統なのに、どこか新しい。そして、作品は繊細にしてシンプル。
制作者の想いが形になる喜びがあり、それをユーザーがさらに喜んでくれる。個々の価値観を大切にするものづくりは、伝統技術だけでなく、作品自体も多くの方に受け継がれて後世に紡いでいくものなのかもしれません。ものづくりに興味のある方、技術が集積している新潟でチャレンジしてみませんか。
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