2022.11.14
新潟市
自分の生活を豊かにするための工夫=ライフハックとして新潟にUIターンし、地方だからこそ実現できる暮らし・多様な働き方を楽しむ「にいがたライフハッカーズ」。
今回ご紹介するにいがたライフハッカーは、新潟市秋葉区在住のデザイナー・明間 隆さん。
長岡造形大学でグラフィックデザインを学び、卒業後は東京の広告制作会社へ就職。その後、生まれ育った新潟市秋葉区へUターンし、新潟でデザインの仕事を複数経験。現在はフルリモートで、新潟に腰を据えながら東京の会社でサービスデザイナーとして活躍しています。
新潟で暮らしながら東京の会社に所属するワークスタイルや、自宅にて仕事と子育てを両立するリアルな想いなど、たっぷりとお話を伺いました。
1985年生まれ、新潟市秋葉区出身。長岡造形大学を卒業後、デザイナーとして都内の広告会社に3年間勤務。その後、新潟市秋葉区にUターン。デザインの仕事を中心に4社経験し、グラフィックデザインからWeb制作、サービスデザイン、UXデザインまで幅広く手掛ける。現在は地元で暮らしながら東京のデザイン会社にフルリモート勤務。同じくフルリモートで働く奥様とともに、仕事と子育てに奮闘中。
新潟県十日町市出身。高校卒業後は東京の大学へ進学し、就職を機に新潟市へJターン。Webプロモーション会社にて、TwitterやInstagramをはじめとしたSNS運用に従事。その後、自社オウンドメディアのライター、編集者として活動。また、コンテンツディレクターとしてWebサイトやSNSのディレクション業務も担当する。新潟市に来て一番驚いたことは風の強さ。新潟の美味しいお米と日本酒が大好き。
きら
明間さんは秋葉区にお住まいなんですよね?
明間さん
そうです!もともと秋葉区出身で、大学卒業後は東京で就職して、3年後に新潟の会社に転職し、Uターンしました。今も秋葉区に住んでいます。
きら
ご出身の長岡造形大学では、どんな勉強をされていたんですか?
明間さん
私が入ったのは視覚デザイン系のコースで、グラフィックや写真などを学んでいました。でも元々は椅子とかカトラリーとか、プロダクト系に興味があったんです。
きら
なんだかグラフィックとは真逆な感じもしますが……。
明間さん
そうですよね。その当時、グラフィックとかプロダクトとか、ジャンルはあまり気にしていなくて。
「暮らしに関わるところに、いろんな強みを持ったデザイナーがいるんだな〜」と漠然とした興味を持っていました。
きら
なるほど!デザイン全般に興味があったんですね。
明間さん
そうそう、そうなんです。
私が大学に入学した頃が、パソコンを使ってデザインすることが一般的になってきた時期で。自分でパソコンを買っていじってみたら、すごくおもしろかったんです。だからこういうことを仕事にしたい、勉強してみたいなとは思っていました。
きら
在学中を振り返るといかがでしょう?
明間さん
興味があることは何でもやる!みたいな感じでしたね。おもしろいと思ったものを作ったり、知人の仕事を手伝ってみたりとか。
卒業研究でやったのもグラフィック系なんですけど、自分で写真を撮り、Flash(※)の技術を使った動きのあるWebサイトを、自分のポートフォリオとして作ったんです。それがその年の卒業研究で優秀賞のひとつに選ばれまして。
(※)Flash…サイト上にアニメーションを表示させる技術。2020年末をもってサポートを終了。
きら
優秀賞!すごいですね!
明間さん
そこから教授に声をかけていただき、就職先として東京の事務所を紹介してもらえたんです。
「じゃあ行きます!」って感じで、深く考えずに、心の動くままに返事をしました。
きら
意外とあっさり東京に行くことにしたんですね(笑)
明間さん
そうなんです(笑)
もともと一度は東京に出ようと思っていたので。ただ当時はデザイナーの就職口はそこまで多くなかった印象でしたし、私自身進路をしっかり考えていなかったので、もし教授に声をかけていただいていなければ就職には苦戦していたかもしれません。
きら
その会社ではどんなことをされていたんですか?
明間さん
会社は大手広告代理店の制作を請け負う事務所でした。
デザイナーとして入社し、グラフィック制作がメインの仕事で、媒体に合わせて様々なデータを作っていましたね。
とにかく激務でしたが、おもしろかったし鍛えられました。東京の誰もが知るようなアートディレクターの方と仕事をしたり、自分が元々好きだった写真家さんといっしょに広告の撮影をしたり。そういった経験も含め、とても楽しい仕事ができました。
きら
東京で3年間働いた後は、新潟にUターンされたんですよね。何かきっかけはあったんですか?
明間さん
一番大きかったのは、今の妻のことです。 学生時代からずっとお付き合いしていたんですよ。
私は就職で東京に行き、妻は十日町の着物メーカーに就職したので、3年間は遠距離で過ごしました。
そろそろ結婚も考えたいなと思った時期に、新潟に帰ろうかな、と。
きら
東京にいながら新潟の転職先を探すのは大変でしたか?
明間さん
はい、大変でした。当時はハローワークに行っても新潟のデザイナー求人の絶対数が少なくて、かなり苦戦しました。
最終的に、先輩が新潟にUターン就職したと聞いて電話してみたら、うちに来なよって言ってくださって。その会社で面接を受けて、内定をいただきました。
きら
新潟に来てからは4社ほど経験されているんですよね。
明間さん
そうですね。
1社目はシステム系のWeb制作会社で、Webデザイン・フロントエンドコーディング・ディレクション業務を経験しました。
2社目は、地元企業等のブランディングに関わるデザイン事務所でした。
3社目は東京に本社があるデザイン制作会社で、サービスデザイナーとして新潟と首都圏を中心に共創に関わるプロジェクトのデザインを行なっていました 。
きら
紙からWebまで、幅広いジャンルのデザインを経験されてきたんですね。
明間さん
私は紙媒体からデザインを始めましたが、Webも担当してきました。ここ十数年でデザインの領域ってかなり広がっていると思うんです。
紙からWeb、Webからアプリケーション。そしてアプリケーションからUXやサービスなど。世の中から求められるデザイン自体がどんどん進化しているので、そこに合わせてできる領域を広げてきたイメージです。
きら
時代の流れに合わせて、デザインの幅も柔軟に変化していったのですね。
明間さん
はい。ずっとデザインの仕事を続けたいと思っているので、少しずつ領域を広げた方がいいかな、と。
好奇心と危機感の両方が入り混じっているような気持ちです。
きら
今はサービスデザイナーとしてお仕事をされているんですよね。具体的にどんなことをするのですか?
明間さん
分かりやすく言うと、世の中のサービス提供者とユーザーとのコミュニケーションをデザインする仕事です。
良いものをつくるためには良い関係をつくる必要がありますし、今のような多様で変化の早い時代では、「そもそも良いものとはどういうものだろう」ということも考える必要があります。
そういうプロセスや仕組み、人の関係性をデザインしているんです。
今までは、発注する人と作る人との二者の関係がほとんどだったと思うんです。でもそこにユーザーも交えて、いっしょにワークショップしながら「この商品がどうなったらより良いか」みたいなことを話す場を作る。そういうプロセスや仕組み、人の関係性をデザインしているんです。
きら
デザインの範囲って、すごく広いんですね……!
明間さん
そうなんです。私が今まで広告やWebの仕事をしてきて思うのは、アウトプットがどれだけきれいでオシャレで分かりやすかったとしても、作った人が納得してなかったり、本来伝えたかったことと違うものだったりするとあまり意味がないということ。
ただお金をかけてものを作るというより、みんなで意味のあるものを作っていくことが必要なんじゃないかなと思っていて。その部分をデザインすることに、やりがいを感じているんです。
きら
新潟で暮らしながら東京のデザイン会社「株式会社MIMIGIRI」に勤務されていますが、フルリモートのお仕事を選択した理由はあるんでしょうか?
明間さん
前の会社に勤めている頃に副業を始めたのですが、その繋がりの中で、東京のデザイン会社にもフルリモート勤務できる組織があることを知りましたと聞いたんです。
前職からサービスデザインやUXデザインを勉強していたので、今自分がやっていることで全国に視野を広げたらどんな感じなのかな?と気になったんです。
きら
数年前まで、フルリモートの仕事ってあまりなかったですよね。
明間さん
コロナの影響もあって、日本中でフルリモートの求人が増えたんだと思います。それに、ちょうどデザイナーの人手不足やサービスデザインやUXの需要も増えてきたこともあって、デザイナーのリモート求人がたくさんありました。
新潟に住みながらでも色んな仕事ができるんだって、選択肢が広がった感じがしました。
きら
フルリモートで働いてみて、会社に出社していた頃と比べてやりにくい部分はありますか?
明間さん
自己管理ですかね……。
出社がなくて、基本的にずっと家にいるので。「決められた時間はちゃんと仕事するんだぞ、俺!」みたいな感じで、日々自分にムチを入れています(笑)
でも、自宅で子育てをしながら働けるのは、すごくいいところだと思います。
きら
娘さんがいらっしゃるんですよね。子育てをしながらのお仕事はどうですか?
明間さん
働いている姿を娘から見られる環境なので、それがある意味刺激になります。
例えば僕がいつも苦しそうだったとすると、なんとなく「仕事って大変なんだな」とイメージができてしまう気がして。
大変とは言いつつも「なんか楽しそうにやってるな」という姿を見せられたらいいなと思っています。
きら
それは素敵ですね!
明間さん
例えば「今こういうのを作ってるんだよ」って今作っているデザインラフを見せられたり、「今、沖縄の人とミーティングしてて、向こうは天気が大荒れなんだって」という話をしたり。
子どもの価値観が作られていく上で、楽しく仕事をしている自身の姿を見せられるといいな、と。「働くことも悪くなさそうだな」と思ってくれるとうれしいです。
きら
お仕事に対して、少しでもポジティブな感情を抱いてくれると良いですよね。
明間さん
妻もそういうところがあって、とても尊敬しているんです。
今、十日町の着物の会社にリモートで勤務していて、デジタルで着物のデザインをしているんですけど、仕事が好きなのが伝わってくるし、仕事以外でもいつも何か作っています。そういう姿を娘に見てもらえるといいなあと。
きら
普段はご夫婦お二人ともお家で仕事されているんですね。
何か大変な面はありますか?
明間さん
2人だからストレスが溜まるとかは特にないですね。 だいたい毎朝いっしょに散歩するんですけど、子育てや仕事のことも話せますし、僕もお互いの悩みも2人でシェアできるし。お互いの考えを話す時間が増えたのはとても良いことだと思います。
きら
素敵です……!理想の関係ですね。
きら
明間さんは、デザインを通して新潟に貢献したい、という思いもお持ちなのでしょうか?
明間さん
今、勤めているのが東京の会社なので、いまのところ、 新潟の仕事はほぼゼロに近いです。
転職した当初はそれでもいいかって思っていたんですけど、だんだん「せっかく新潟に住んでるんだから、地元の繋がりで何かできることないかな」と思うようになって。
私僕自身、起業したいとか自分で何か活動したいっていうタイプじゃないんです。
でも、新潟を良くしたいって思っている人に協力することはできると思っていて。
職業人的なデザイナーとして今までやってきたので、何かしら新潟に対してのビジョンや情熱がある人の助けとなる形で、デザイナーとして関わっていきたいという気持ちが生まれはじめています。
そういう意味では、最近そういったコミュニティにも入りながら、少しずつ地元に関われるようになってきたと思います。
きら
今は働き方や関わり方に多様性が生まれ、いろんなことができますもんね。
明間さん
そうですね。今の時代、5年後どうなっているかなんて全く想像がつかないですし。
働き方もそうですけど、常に選択肢が自分にちゃんとある状態というか、いつでも変化ができるような余白を持ち続けたいなと思っています。
きら
明間さんのようなクリエイターの方々にとって、地方での働き方や仕事の選択肢ってどうですか?
明間さん
フルリモートもそうですが、クリエイティブに関わる仕事の選択肢は、明らかに昔より増えていると思います。業種によっては自分で仕事を作りやすい時代ですし。 首都圏の会社で仕事をしながら地方に住むということも当たり前にできるようになってきました。
そういう意味では、新潟で、自分に合ったデザインの仕事を探したりつくったりする事もできるのではと思います。
きら
ここ数年で、世の中の価値観が大きく変わってきていますよね。
明間さん
本当にそのとおりで、選択肢はものすごく広がっていると思います。
少なくとも私 のキャリアで一番良かったなと思うのは“これまでの仕事以外にもチャレンジする”ってことです。そこで選択の幅が広がり、今に繋がっていると思います。
そんなに派手なことはしなくていいので、いろんな人と話したりコミュニティに入ってみたりとか。少しラフに考えてみると、ちょっとだけ見える世界が変わるのかなって。
きら
就職した会社だけにとらわれずに、いろいろやってみるのがいいよ!ってことですね。
明間さん
自分たちの親世代とは時代が変わってきているので、自分より若い人や同世代、先輩と話したりすると、意外とこういう道もあるんだ、って発見もあります。
固定概念にあまりとらわれず、今何が選択できるのかという部分に注目してみたらいいのかなと思います。
きら
本当にそうですね。
最後になりますが、地方でデザイナーとして働きたい人に伝えておきたいことはありますか?
明間さん
私は、新潟でデザイナーになったからといって、必ずしも「新潟を良くしよう」と思わなくていいと思っています。
新潟でデザイナーになって、新潟以外の仕事をしてもいいし、もちろん新潟を良くするために頑張ってもいい。
選択肢が広がった方が、職業としての裾野が広がると思うんです。
もちろん地元の仕事をして、地元を良くしたいと思っている人に憧れもありますしリスペクトしています。
それでも地方のデザイナー像に囚われる必要はないかなとも思っています。
20代の頃は、「デザイナーという職業は、仕事においても生活においても志が高く、仕事においても生活においても美的感覚が求められる、すごく特別な存在」って思っていたんです。
きら
ちょっと気負ってしまっていたりとか。
明間さん
そうなんです。
でも今では、デザイナーこそ自然体でよくて、生活に溶け込んだ仕事になるといいなと思いはじめています。
デザインの仕事が当たり前になるためにも、自分が好きな場所で、自分が生活において大事にしている価値観を、デザインというアウトプットにしてお金を稼ぎ、幸せに生きていくってことができないと、あんまりヘルシーじゃないなって。
きら
たしかにそうかもしれないですね。
デザイナーって、生活に近い感じがあまりしないと思っていましたが、明間さんのお話を聞くと、デザイナーだからって必ずしも東京に出なくても、地方の価値観を大切にしながら仕事をしていていいんだなと改めて思えました。
明間さん
地方に身を置いていると、自然と自分の身の回りの人に、自分ができることで貢献したいなと思う人もいると思うんです。そういうときは地元の仕事をしたらいいと思うし。地元の仕事をしなくても、趣味で周りの人と何かおもしろい活動をするのもアリだし。
あんまりデザイナーとはこういうものだ、という固定観念みたいなものは持たずに、選択肢を広く持って、地元でデザイナーを楽しんでほしいなと思いますし、そんな仲間が増えたらうれしいです。
自らの生活をより豊かにするために、新潟で暮らすことを選んだ「にいがたライフハッカーズ」。そんな彼らの生活を彩る新潟のモノ・コト・ヒトについて、とっておきの「ニイガタライフハック」をお聞きしました。
私のとっておきニイガタライフハックは、散歩です。
海や山、湖畔もあって自然豊かな新潟は、散歩にぴったりの場所がたくさん。
人が密集しない穴場スポットも多く、のびのびと羽を伸ばせるのが魅力です。
行ったことのない公園で子どもと遊んだり、妻と子育てについて話しながら散歩したり。いつも、家族との大切な時間をゆったりと過ごしています。
お気に入りは、自宅近くにある新潟県立植物園。昔から写真も好きなので、カメラを持って家族と散歩する時間が癒しです。
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